第74話:余計なこと


 そして水曜日。俺はテスト休み明けの学院に登校する。今日は学院で初めての試験の結果が発表される日だ。


 先に言っておくけど。俺は自慢するつもりなんてないからな。


「この結果……アリウスには解っていたってこと?」


 ミリアにジト目をされる。廊下に張り出されているのは、上位50人の成績だ。

 1位は俺とエリク。3位はソフィアで、ミリアは5位だ。


 だけど本当に成績なんてどうでも良いんだよ。いや、それは言い過ぎか。試験の成績が悪くて学院を卒業できなかったら、さすがにダリウスに申し訳ないからな。


「俺はケアレスミスをするのが嫌いだからな。とりあえず、時間一杯見直ししたけど。ミリアだって5位だから問題ないだろう」


「ても、あれだけ余裕とか言ったのに。722点て……恥ずかしいじゃない!」


 いや、苦手と言っていた剣術の実技を入れても、ミリアの成績は8科目平均で90点を超えているからな。俺が言うと嫌味に聞こえるかも知れないけど、十分良い成績だろう。


「アリウス、ミリア、おはようございます。2人とも素晴らしい成績ですね」


 日課である掃除から戻って来たソフィアが笑顔で言う。成績表は朝から貼り出されているから、もう確認済みってことだな。


「おはよう、ソフィア。ソフィアこそ、良い成績よね」


 ソフィアに悪気がないことは解っているから。ミリアは複雑な顔をする。

 それを見たソフィアが、きょとんとした顔で首を傾げる。

 こんなことを言うとソフィアは怒るかもしれないけど。可愛いらしい反応だよな。


 ちなみにマルスは10位で、ジークは25位。サーシャは42位だ。バーンは当然のように名前が書かれていない。

 まあ、バーンみたいに卒業も怪しかったら別だけど。順位はどうでも良いだろう。


「「「アリウス様は成績も凄いんですね……素敵ですわ!」」」


 いつの間にか、貴族女子たちに囲まれている。いや、女子が集まって来たことには気づいていたけど。


 男子たちの嫉妬の視線もウザい。嫉妬するくらいなら、試験をもっと頑張れば良いのにと思うけど。余計なお世話だよな。


「全科目100点ね。私とエリク以外には不可能だと思っていたけど。さすがはダリウス宰相の息子ってところかしら」


 突然、凛とした声が響く。

 生徒たちが注目する中、現れたのは豪奢な金髪と、海のように深い青い瞳。ソフィアとはタイプが違う、凛々しい感じの綺麗系美少女だ。


 制服を着ているから、学院の生徒だろうけど。1年生って雰囲気じゃないな。

 ウエストと足は細いのに、出るところは出ているモデルのようなスタイル。だけど男に媚びるような感じは一切しない。まさに女王様という感じで堂々としている。


 それにしても、誰かに良く似ているよな。ソフィアは誰か知っているみたいだけど。めずらしく反応に迷っている。


「ねえ、あれって……エリス殿下よね?」


「でも、どうして王都にいらっしゃるのかしら?」


 貴族女子たちの囁き。思いきり聞こえているけどな。まあ、あの女子は俺の予想通りの奴ってことだ。


「姉上は、いつグランブレイド帝国から戻られたのですか? 教えてくれれば、迎えに行きましたよ」


「「「エリク殿下!」」」


 エリクがいつもの爽やかな笑みを浮かべて登場。女子たちが黄色い声を上げる。だけど何故かエリクの目は笑っていなかった。


「王都に戻ったのは昨日のことよ。だけどエリクに教える必要はないわよね?」


 エリクを挑発する奴を、初めて見たな。まあ、実の姉なら納得できる。こいつが王家の長女。あの・・エリス・スタリオンか。


 ロナウディア王国の王家に、2人の天才がいるというのは有名な話で。1人が第1王子エリク、もう1人が1歳年上の第1王女エリスだ。


 だけどエリスは貴族嫌いでも有名で、一切社交界に顔を出さなかった。だから第1王女なのに顔を知っている奴は意外と少ない。


 そして今はバーンの交換留学生として、グランブレイド帝国に留学中。そのまま婚約者の帝国皇太子と結婚するって噂だけど。


「ドミニク殿下から陛下に緊急の『伝言メッセージ』が届いているよ。姉上が行方不明になったと」


 ちなみにドミニクはグランブレイド帝国の皇太子の名前だ。


「だったら丁度良いわ。エリク、ドミニク殿下に伝えておいて。私はもう2度と帝国には戻らないって」


 事情は解らないけど。こういう話を学院で堂々とするのはどうかと思うよ。

 まあ、さすがはエリクの姉ってところか。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 15歳

レベル:2,315

HP:24,278

MP:36,998

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