第68話:SSS級


 結局、シュタインヘルトが騒ぎを起こしたのは学院正門前の一悶着だけで。その後は特に大きな動きはない。


 俺を探して聞き込みをしているけど。あいつは情報収集が得意という訳じゃないからな。SSS級冒険者のアリウスとアリウス・ジルベルトが同一人物という情報には辿りつけないだろう。


 だけど、こっちも疑問が残ったままだ。どうしてシュタインヘルトが魔王のところにいたのか。


 『転位魔法テレポート』と『飛行魔法フライ』が嫌いな筈なのに、どうやって王都に来たのか。


 そしてあいつが俺の居場所を知っていた理由だな。


 魔王のところにいた件は、正確なことを知るにはシュタインヘルト本人か魔王に訊くしかない。魔王の側近に探りを入れる手もあるけど、俺に魔族の知り合いはいないからな。


 移動手段については、消去法で答えは出る。シュタインヘルトの移動系魔法嫌いは筋金入りだからな。俺のところに来るために我慢して使ったとは思えない。


 つまり他の移動手段を使ったということだけど。世界の裏側から短時間で移動したとなると、使える手段は限られる。

 1番可能性が高いのは、魔王の手を借りた・・・・・・・・ってところだな。


 そして最後のシュタインヘルトが俺の居場所を知っていた理由だ。あいつは俺が王都にいるのは間違いない・・・・・って言っていた。つまり確実な情報源があるってことだよな。


 誰かが俺の情報を流しているのか。アリサ辺りなら条件次第で俺の情報を売りそうだけど。シュタインヘルトはSSS級冒険者のアリウスの正体がアリウス・ジルベルトだって知っていた訳じゃないからな。


 つまり情報は曖昧だけど、シュタインヘルトはSSS級冒険者のアリウスが王都にいることだけは知っていたってことだ。あいつは嘘をつくような奴じゃないけど。誰かに踊らされている可能性はある。


 だったらその誰か・・・・の目的は何なんだよ?


 色々考えてみたけど。結局のところはシュタインヘルト本人と話をするのが手っ取り早し、確実だからな。俺はあいつと接触するタイミングを計ることにした。


 まあ、そんなに難しいことじゃない。ダリウスとエリクは俺がSSS級冒険者だとバレて貴族を辞めることを気にしているからな。できるだけ・・・・・バレないように、シュタインヘルトが王都を出るまで待つことにした。


 シュタインヘルトはさらに2日ほど聞き込み調査をして。俺を探し出すのを諦めたのか、王都を出て行く。

 王都を出て街道を少し歩くと、人気のない荒野の方に向かった。


 いや、あからさまに誘っているだろう。

 だけどシュタインヘルトは腹芸ができるような奴じゃない。俺は誘いに乗ることにした。


「よう、シュタインヘルト。久しぶりだな」


 『認識阻害アンチパーセプション』と『透明化インビジブル』を解除して、奴の前に立つと。


「シュタインヘルトさん・・だ。子供のおまえに呼び捨てにされる覚えはない」


 ああ。シュタインヘルトは、こういう・・・・奴だったな。

 だけど下らないやり取りをするつもりはないから、ここは引いておくか。


「シュタインヘルトさん。あんたが俺を探しているって聞いたんだけど。俺に何の用だよ?」


「グレイの奴が、アリウスの方が自分よりも強いかも知れないなどと抜かしたからな。それが事実なら、おまえの方が俺よりも強いことになるが。そんなことはあり得ないからな――」


 シュタインヘルトは収納庫ストレージから、抜き身の得物を取り出す。

 刃の部分だけで2m近くある長物の刀。シュタインヘルトの愛刀『神殺しディバインスレイヤー』。

 シュタインヘルトが1人で『魔物の暴走スタンピード』を止めたときに、『魔物の暴走』の元凶である魔神から奪ったと言われている刀だ。


「アリウス、俺と勝負しろ! おまえなど俺の足元にも及ばないことを証明してやる」


 いや、いきなり刀を抜くとか。グレイの方が年上なのに、おまえは呼び捨てにするのかとか。突っ込みどころ満載だけど、面倒だから突っ込まないからな。


「勝負をしても良いけど。その前に聞きたいことがあるんだよ。あんたが魔王のところにいた理由と、どうやって俺の居場所を知ったのか。

 あと『転位魔法』と『飛行魔法』が嫌いなあんたが、王都まで来た方法を教えてくれよ」


 シュタインヘルトは眉を顰める。


「俺が魔王のところにいたことを、どうしておまえが知っているんだ? 犬のように俺のことを嗅ぎまわっていたのか?」


 いや、相手の情報を集めるのは基本だし。調べたのはお互い様だろう。

 だけどシュタインヘルトは挑発しているんじゃなくて、本気でそう思っているんだよな。

 

「なあ、あんたが俺の居場所を知っていたのも、魔王と関係があるのか?」


「おまえに答えてやる義理はない。どうしても知りたいなら、俺を倒したら教えてやる。もっとも、おまえが俺を倒すなど不可能だがな」


 イチイチ言うことがウザいけど。上手く誘導・・できたな。


「シュタインヘルトさん、言質は取ったからな。俺があんたを倒したら、俺の質問に全部正直に答えろよ」


「ああ、良いだろう。万が一にも、おまえが俺を倒せたらの話だがな」


 これだけ念を押しておけば大丈夫だろう。シュタインヘルトは自分が言ったことを守らないような奴じゃないからな。


「じゃあ、始めるか」


 俺が収納庫から2本の剣を取り出すと。シュタインヘルトは全身に膨大な魔力を纏う。完全に戦闘モードだな。


 先に動いたのはシュタインヘルトだ。一瞬で距離を詰めて『神殺し』を一閃する。

 シュタインヘルトがSSS級冒険者なのは伊達じゃない。これだけ長物の刀を使いこなして、斬撃は音速を余裕で超える。


 だけど俺も黙って切られてやるつもりはないからな。魔力を放つ剣で、超音速の斬撃を受け止める。

 互いの魔力がぶつかる衝撃波。これがSSS級冒険者同士の戦いって奴だな。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 15歳

レベル:????

HP:?????

MP:?????

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