第47話:良い奴だよな
みんなとの待ち合わせしているのは、学院の正門前だ。
だけど学院の敷地は広いからな。寮から正門まで2km以上あるんだよ。
シリウスとアリシアを抱えて走っていくと、ミリアとソフィアが先に来ていた。
「ちょっと、アリウス。なんで走って来るのよ?」
「それよりも、この子たちは……」
ソフィアはシリウスとアリシアに見覚えがあるみたいだな。まあ、うちの弟と妹は俺よりも社交界に顔を出してるからな。
「弟のシリウスと妹のアリシアだ。俺に会うために家を抜け出して来たみたいで、寮の部屋の前にいたんだよ。いきなりで悪いんだけど、これから遊びに行くのに弟と妹を一緒に連れて行って構わないかな?」
自分たちが場違いだ思ったのか。アリシアとシリウスが申し訳なさそうな顔をするけど。
「全然問題ないわよ。へえ……アリウスの弟と妹か。良く似てるわね」
「そうですよ。シリウスとアリシアなら大歓迎です」
ミリアとソフィアは当然という感じで承諾する。まあ、2人ならそう言うと思ったけどな。
2人の反応にシリウスとアリシアも安心したみたいだけど、ソフィアは公爵令嬢だからな。
「ソフィア様。ジルベルト侯爵の次男、シリウスです。ソフィア様とは先月クロフォード公爵が開かれた晩餐会でお会いして以来です」
「同じくジルベルト侯爵の長女、アリシアです。このような場所でお目に掛かれて光栄です」
背伸びして挨拶する2人を、ソフィアは微笑ましそうに見る。
「シリウス、アリシア。私も2人に会えて嬉しいです。ですが、今日はお友だちとして遊びに行くのですから。堅苦しいことは抜きにしませんか?」
ソフィアの優しい笑みに、シリウスとアリシアは子供ながらに見惚れる。
「はい。解りました」
「私もそうさせて頂きます」
「うーん……まだ堅いわね」
ここでミリアが割って入る。少し腰をかがめて、2人の顔を覗き込むように視線を合わせる。
「ねえ、シリウス、アリシア。私は貴方たちのお兄さんの友だちのミリアよ。貴方たちとも今から友だちだから、お互いもっと気楽に行くわよ」
「え……友だち?」
「そうそう。私とアリシアはもう友だちだから、気なんて遣ったらダメだからね。ほら、シリウスも!」
「はい……じゃなくて、うん?」
「それでよろしい! さあ、せっかく遊びに行くんだから思いっきり楽しむわよ!」
ミリアは相手の懐に飛び込むのが上手いよな。シリウスとアリシアが一瞬で懐いたな。
「ソフィア、ミリア、ありがとう。俺が勝手に連れて来たのに、弟と妹に優しくしてくれて嬉しいよ」
「ア、アリウスにお礼を言われるようなことではありませんよ」
「そ、そうよ。私は2人と友だちになりたいって思っただけだからね」
ソフィアとミリアの顔が赤くなる。まあ、素直に礼を言われると照れるからな。
「みんな、待たせたな」
「私が着替えに手間取ってしまったの。みんな、ごめんなさい」
遅れて到着したジークとサーシャにも、シリウスとアリシアを連れて来た事情を説明する。
「俺もアリウスの弟と妹が一緒で構わないぜ」
「そうですよ。人数が多い方が楽しいですから」
俺とジークとサーシャはそこまで深い付き合いじゃないけど、気安く応じてくれた。こいつらも良い奴だよな。
だけど、さすがに第2王子のジークの前だと、シリウスとアリシアは緊張しているみたいだな。ジークには粗野でクールなイメージもあるしな。
「シリウス、アリシア。貴方たち、好き嫌いはない? 後でみんなで食事に行くから、苦手なものがあったら先に言ってね」
2人の緊張を解すためか、ミリアが話し掛ける。
「僕は大丈夫。好き嫌いはないよ」
「私は……ピーマンが嫌い。あとシリウスも本当はニンジンが嫌いよ」
「アリシアは正直でよろしい! シリウスは無理しちゃ駄目だからね」
「はい……嘘ついてごめんなさい」
「シリウスは嘘をついても頑張るつもりだったのよね? だったら褒めてあげるわよ。ジーク殿下はトマトが苦手なのよね。いつも難しい顔をしながら頑張って食べてるけど」
「おい、ミリア。なんで俺の話を……事実だけどな」
素直に認めるジークにシリウスとアリシアが驚いている。俺たちにとってはいつものことだけど、普段のジークは悪ぶっているからな。
それにジークにも苦手な食べ物があると知って親近感が沸いたんだろうな。2人はもう緊張していない。こういうの、さすがはミリアって感じだよな。
「それでは、そろそろ出発しましょうか」
ソフィアがみんなを促す。
「今日は市場を散策してから食事をして、劇場に行く予定ですが。シリウスとアリシアもそれで構わないかしら?」
「うん。私、凄く楽しみだわ!」
「僕も! ソフィアさ……ん、よろしくお願いします!」
「シリウス。こちらこそ、よろしくお願いするわね」
ソフィアが優しい笑みで応える。シリウスが『様』と言おうとして言い直したことに気づいたんだな。
「シリウス、アリシア。みんなと一緒なんだから勝手にどこかに行くなよ」
「アリウス兄様、解っているわよ」
「そうだよ。僕はもう子供じゃないんだから」
2人は文句を言うけど、まだ9歳の子供だからな。まあ、俺の『
「アリウスがお兄さんしてる」
「ええ。新鮮な感じですね」
いや、俺も一応兄だからな。全然兄らしいことをしてないけど。
だけどみんなのおかげで、弟と妹と一緒に遊びに行けるんだからな。今日くらいは構ってやるか。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 15歳
レベル:????
HP:?????
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