第2話:アリウスの正体 ※グレイ視点※
※グレイ視点※
宿屋の部屋に戻ると俺とセレナは作戦会議を始めた。ダリウスは泊って行けと言ったが、冒険者の俺には貴族の邸宅って奴が性に合わないからな。安宿の堅いベッドと埃っぽいシーツの方が落ち着く。
「5歳でレベル25。その上ステータスは、こいつ何者なんだよって高さだ。天才の一言で片づけて良い話じゃねえな」
俺がアリウスの能力を知っているのは『鑑定』を使ったからだ。
ダリウスとレイアがパーティーを抜けてから、俺とセレナはずっと2人で冒険を続けている。だから万能型になることは必須で、2人とも一通りの魔法とスキルが使える。勿論得意不得意はあるがな。
「わざと子供らしく振舞っていたけど、精神的にもとても5歳の子供とは思えないわね。もしかして転生者……まあ、あり得ない話じゃないわね」
この世界に転生者は実在する。未知の知識や特別な力を持っていたりと、どう考えても転生者としか思えない奴が稀にいるんだ。
「もし転生者だとしても、ダリウスとレイアの子供には違いねえからな。そんなことよりもだ。アリウスは鍛えがいがある奴だと思うぜ。才能があるも確かだが、5歳でレベル25になるには相当鍛錬を積んだってことだからな」
ダリウスとレイアがスパルタで鍛えた訳じゃないって話だからな。アリウスが自主的に鍛錬したってことだ。
「才能がある上に努力家。そういう子は私も好きよ。技術と経験はまだまだみたいだけど、だからこそ鍛えがいがあるわね」
負けん気の強さも強くなるにはプラスだ。アリウスは俺が格上なのを承知の上で、本気で挑んできた。ダリウスとレイアの親馬鹿に付き合うのは馬鹿らしいと思っていたが、俺もセレナも今じゃ完全に乗り気だ。
「まあ、5歳のガキだって思わずに鍛えろってことだ。下手にガキ扱いすると潰しちまう可能性があるからな」
甘やかせば増長するし、過保護にすれば経験の機会を奪うことになる。年齢なんて関係なしにビシビシ鍛えてやらねえとな。
「そうね。グレイは意外と子供に甘いところがあるから気を付けないと」
「ああ、解っているって。だがアリウスの家庭教師をやる間は、俺たちも冒険者を休業するしかねえか」
片手間で家庭教師をやるつもりはねえ。引き受ける以上はこっちも真剣にやらねえとな。
「あら、そんなことないわよ。私とグレイのどちらかがアリウスに教えている間、もう1人がソロでダンジョンに行けば良いだけの話だわ。私たちは
「なるほど、確かにそうだな。そうすれば俺たちの腕もなまらねえしな」
「ええ。アリウスを実戦に連れて行くときは、さすがに2人で一緒に行った方が良いと思うけど。普段教えているときは問題ないわよ」
あとは俺たちが
まあ、あいつらだって俺たちに家庭教師を依頼した以上は、どういうことになるか解っているだろうがな。
早速ダリウスの家に再び押し掛けて、アリウス抜きで2人に話をする。
「……という訳で、俺たちはアリウスを一切ガキ扱いしないで徹底的に鍛えるつもりだが。問題ねえよな?」
「ああ、勿論だ。子供扱いしても本人のためにならないからな。親の贔屓目じゃなくて、アリウスが只の子供じゃないことは俺たちだって解っているさ」
ダリウスの言葉にレイアが頷く。なるほど、こいつらもアリウスが転生者だって可能性に気づいているってことか。まあ、自分たちの子供だから気づかねえ筈はねえな。
「ねえ。アリウスを鍛えるのは、あの子を冒険者にするってこと? 冒険者以外にも強さを求められる職業は幾つもあるけど、何れにしても戦いの道に進ませるのよね」
セレナが真剣な顔で問い掛ける。
「それは本人が決めることだ。まあ、アリウスは冒険者になることを望んでいるみたいだけどな」
「そうね。アリウスが望むなら反対する理由はないわ」
「だったら、もっとストレートに訊くけど。アリウスが人を殺すことも認めるって考えて良いのよね。2人なら解っていると思うけど、戦いの道に進むなら人を殺すことを避けて通れないわよ」
「ああ。
2人が深々と頭を下げる。とうに覚悟は決めてるってことだな。なら俺たちが躊躇する理由はねえな。
「解ったぜ。一切合切ガキだって容赦しねえで、アリウスを徹底的に鍛えてやるよ」
そうと決まれば、早速始めるとするか。
※ ※ ※ ※
グレイ・シュタット 28歳
レベル:???
HP:????
MP:????
セレナ・オスタリカ 26歳
レベル:???
HP:????
MP:????
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