第2話 チャーハンと唐揚げ

 今日は休みだ。


 ベッドから身体を起こして大きくのびをする。


『もう十一時を過ぎてるじゃん。まあ遅くまでゲームしてたしなぁ。あっ!』


 ヤバイと思って携帯を確認したら、案の定、璃里りりから三回も着信が入っていた。


「今日のお昼ご飯は何にするの?」


「いきなりそれはないだろっ? おはよう。とか言えないのかよっ!」


「だってぇ、りょう君がなに食べるか決めてからじゃないと、わたしは用意できないんだからね~っ!」


「あぁ、まあ、そうなんだけどさ~。今起きたばかりだし、ちょっと待ってくれよ」


 おれは、水を飲みながら冷蔵庫の中身を確認する。


『たまご、魚肉ソーセージしかない』


 冷凍庫を開ける。


『冷凍しといたご飯、唐揚げ、ネギとたまねぎのみじん切りか』


「買い物行くのも面倒くさいから、昼はチャーハンと唐揚げにしようかな」


「オッケー。じゃあ、わたしは買い物行ってくる! またあとで連絡するねっ」


 プーップーッ


 電話切るの早すぎだろっ!


 おれは少しゆっくりしてから、材料を解凍して、ほぼ混ぜ合わせただけのチャーハンを作った。包丁を使うのも面倒だから、ソーセージは手でちぎった。もちろん、唐揚げは電子レンジだけ。


『チャーハンはどんなのにするだろうな~。たぶん、りりのことだから、チャーシューマシマシとかありえそうだな~』


……


 さあ、昼食の時間だ。


「お、おい、それなんだよっ!」


「なにって、チャーハンだよ。しらすとカニかまの海鮮チャーハン」


『めちゃくちゃ色鮮やかで美味しそう』


「黄色いのはわかるけど、その緑色のは何?」


「あ~緑色のはレタスとネギだよ」


「りりに似合わず、健康的そうなチャーハンだな」


「どういう意味よっ! しらすが安かったし、ネギとレタスは残ってたやつだしね」


「あれ、唐揚げは?」


「唐揚げはこれよ」


 別の皿に二分の一枚の鶏肉が揚げられて何やらタレがかかってる。


「それ唐揚げなのか?」


「油淋鶏よ」


「ユー、リン、チー?」


「唐揚げよりも油使わないし、片付けも楽なんだよね~」


「そ、そうなんだ」


「うんっ! じゃあ~、一緒に~」


「「いただきますっ!」」


二人ともスプーンを手にもつ。

いつもどおり璃里の食べているところをまず見る。


「お、いい感じにパサパサしてる。ゴマ油の香りが食欲誘う感じ~」


『ハフッ』


「しらすの塩っけと、レタスのシャキシャキがいいっ。隠し味にだしの素は正解だったみたいね、味に重なりが生まれてるっ」


「ホントに美味しそうに食べるよな」


「だってぇ、美味しいんだもんっ!」


『ハフッ』


「あ、ネギのところも食感と味がまとまってるね。カニかまもいい役割してるなぁ」


「りり見てたら、お腹すいてきたよ、おれも食べよう」


『うげっ、これはただのまぜ飯だな。塩コショウの味しかしねぇ。そうか、だしの素とゴマ油か。今度試してみようかな』


「りょう君のは、ソーセージとたまごとネギ?」


 璃里が興味津々だ。


「お、おう、あとたまねぎもいれたぞ」


「すごいじゃん、シャキシャキ感と甘味出るからいいよねっ!」


『そうなんだ? 食感と甘味か』


「だろ!」


「うんうん、美味しそうだねっ! でも私も裏技あるんだよ~っ! ちょっと待っててね」


 そういって何かを取りに行った。


 お椀を持って戻った璃里は、チャーハンにドロドロした白っぽい液体をかけた。


「ほらぁ、見て見てっ、餡かけチャーハンだよっ」


『ハフッ』


「鶏ガラとたまごの白みが和風チャーハンを一気に中華風に変えたぁ」

 ほっぺたに手を当てている。


「そんな味変とか卑怯だろ~っ」


『めちゃくちゃ旨そう』


「別に戦いじゃないんだからねっ。そんなに食べたいなら、今度りょう君のとこ行ったとき、作ってあげるよっ」


『なんか、りりが食べてるときって可愛く感じるんだよな~』


「おぅ、ありがとう」


「さあ、中華風に変わったところでユーリンチーいただきますっ」

 璃里はスプーンから箸に持ちかえる。


『サクッ』


「鶏肉がパリパリジューシーで、そこにネギだれの酸味と生姜が、口の中をすっきり爽やかにさせるぅっ!う~ん、これは相性いいねっ」


『なんだよ、あれ。味が全く想像できない』


「りょう君のはどこの唐揚げ?」


「○○食品の冷凍だよ」


「あ~あそこのやつは、隠し味に生姜とニンニク入ってて美味しいよね」


『そうだったんだ』


「そうなんだよっ。これ美味しいよな?」


「うんうん、美味しいよ~」


……


「今日も美味しかったね~」


「「ごちそうさまでしたっ!」」

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