閑話1 タニザ・サイドから

「よっしゃ、今日はタニザと同じ組だ! これは勝ったも同然だな!」


 テットは無邪気に喜んでいる。


「そう喜ぶな。今日はいつもとは違う。向こうにリヒトが入っているからな……レルカとの連携がどれくらいうまくいくかは未知数だけど、今日は一筋縄ではいかないというのは確かだ。テットも油断するなよ」


 タニザはまっすぐ敵陣を観察しながら、テットにそう忠告した。


(俺もそろそろ一旗上げたいんだよな……)


 タニザは自分の実力に自信を持っている。魔界統一初等学校生魔法選手権を制した彼は、事実実力があるのだ。


 さらに、今年は『四天王選手権』ーー魔王に次ぐ魔界の地位に入る四人を決める大会が開かれることになっている。これは年齢制限もないため、タニザでも出られる。タニザはここで自分の力を試したいと考えていた。


(リヒトとレルカを誘ってもいいだろうな……練習相手は多い方がいい。おそらく、将来は魔王を争う相手になるだろうからな……)


 リヒトは自分が魔王を争える才能を持っていると自負している。だが、彼は気を緩めるつもりはなかった。追われる立場はつらいものである。今日の模擬戦でも、レルカはタニザをどうにかして倒そうと、いろいろと作戦を練ってきているに違いない。


(……とにかく、今日も勝つ)


 タニザがそこまで考えたとき、サンシャ先生の掛け声がして、試合が開始された。タニザは眼前の敵に向かって勢いよく走り出した。

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