第71話

 6ー8 精霊さんの奇跡ですか?


 後、チーズのことだが、これもこの世界にはなかったものだ。

 というか、発酵食品というものがあまりないようだった。

 わたしは、幸いにも発酵食品には詳しかった。

 家の近所に有名な醤油工場があったし、祖母は、手作りで味噌なんかを作っていたし、しかも学生時代は、牧場でアルバイトしていたし。

 というわけで、わたしは、まず手始めにチーズを作ってみた。

 この辺りでもミルクをとるために飼っているヤギによく似た家畜がいた。

 わたしは、その家畜をロブさんから何頭か譲ってもらって伯爵屋敷の庭の隅っこの家畜小屋で飼うことにした。

 そうして手に入った新鮮なミルクでわたしは、チーズやらバターやらを作ってみた。

 ちょっと、精霊さんにお願いしたところもあるがなかなか美味しいチーズやバターができた。

 しかも大量に。

 これは、もしかして精霊さんの力なのか?

 しかし、そこは、こんなものだとごまかし通すことにした。

 というわけで。

 今日のお昼は、ベーグルに新鮮な葉野菜とチーズをたっぷり挟んだベーグルサンドだった。

 ライザが小皿にそれぞれの分を取り分けると熱いお茶をそそいだカップを手渡してくれた。

 ちなみにお茶の入れ方は、わたしが教えたのではない。

 ライザがジェイムズさんに自ら教えをこうて覚えたものだ。

 「少しでもトガーに美味しいお茶をいれてあげたくて」

 とか言うのだよ!

 本当にかわいいな、おい!

 そうして、わたしたちは、ライザの用意してくれた昼食を食べた。

 うん。

 美味しい!

 なんだか、奇跡的な味がするな!

 わたしがちらりとルゥを見るとルゥのやつは、にやりと笑った。

 「これは、おいしいな」

 ライナス先生もパクついていた。

 だが。

 その日のわたしたちの昼食は、決して和やかなだけのものではなかった。

 それは、なぜなのか?

 考えると余計に腹がたってくる。

 それは、すべてライナス先生が悪いのだ。

 ちょっとエミリアさんのような美魔女に言い寄られただけでいい気になって。

 というか、なんでわたしがこんなことで腹をたてなきゃいけないわけ?

 別に、ライナス先生がエミリアさんによろめいたからって関係ないんじゃね?

 

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