第69話

 6ー6 お仕事ですか?


 わたしは、デスクにつくと上においていた新しく改築される予定の治療院の図面を眺めていた。

 今日の午後には、工業ギルドの建築部門から大工の親方が来ることになっていた。

 ライナス先生とわたしとその親方とでミーティングがあるのだ。

 それまでに必要なものを書き出しておかなくては。

 ここに住む利用者のみなさんの居室部分については、ライナス先生に任せているのでわたしが考えなくてはいけないのは、リハビリに使用される部屋などだ。

 まずは、運動療法や、物理療法、それに日常的な生活動作の訓練をする部屋。

 それに、できればプールとかも作りたい。

 それに、温泉とかもあれば理想的だ。

 そこら辺は、精霊さんの力も借りればなんとかなりそうだしな。

 わたしは、ちらっとルゥの方を見た。

 ルゥは、ライザの膝の上でうつらうつらしていた。

 そうしていると精霊とか信じられないな。

 ただの黒い子猫にしか見えないし。

 そろそろ昼食という頃になるとライナス先生が部屋のドアをノックして入ってきた。

 「すまない、トガー。エミリアさんの相手をしててなかなかこっちに来れなかった」

 「そうなんだ」

 わたしは、まったく何の問題もないという笑顔でライナス先生の方を見上げた。

 「で?今は、エミリアさんは、どちらに?」

 「ああ」

 ライナス先生は、ライザの座っているソファの隣に腰を下ろすとため息をついた。

 「食堂へ手伝いに行ってもらった」

 ここの利用者の多くは、食事介助を必要としている。

 今は、140人を35人づつ4組にわけて食事の介助を行っていた。

 宝くじのおかげで全員の車イスを購入できることにはなったのだが、工業ギルドの製作が追い付かない。

 とりあえず、今、納品されている40台の車イスを交代で使用しているわけだった。

 職員も14人しかいなかったものを50人まで増やしてもらっていた。

 それをいくつかの職務にわけて働いてもらっているのだが、その日のフロアリーダーを決めてその人にその日1日の職員の勤務を割り振ってもらっている。

 今までは職員がやっていた調理場での仕事は、専用の調理人を雇っていた。

 サラさんの知り合いの料理人であるフィルさんを紹介してもらって働いてもらっていた。

 メニューは、わたしが今は、決めさせてもらっている。

 なぜか、この世界では、障害者の食事は病人食だと思われていた。

 それは、違うし!

 彼らには、もっとたんぱく質が必要だったし、ぐちゃぐちゃの甘いおが屑みたいなものも必要なかった。

 

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