第68話

 6ー5 執務室ですか?


 だがな。

 お目付け役って、なんだよ?

 エミリアさんは、若く見えるが確かにわたしよりは年上だ。

 といっても、まだ40歳ぐらいだとジェイムズさんがいっていたしな。

 わたしのお目付け役なんて無理じゃね?

 どっちかというと、わたしの方がエミリアさんのお目付け役なんじゃないですか?

 そこまで考えてからわたしは、はっと気がついた。

 そうか!

 ご主人様が本当に心配しているのは、このエミリアさんのことだ!

 王都ならともかく、この辺境の地でエミリアさんのような人が1人でふらふらしているとそれこそ悪い噂が立ちかねない。

 それで、わたしに白羽の矢が刺さったのだ。

 わたしは、うんうん、と頷いた。

 任せてください、ご主人様!

 このわたしがエミリアさんの評判を守って見せますから!

 がたん、と馬車が揺れると治療院の前に到着した。

 御者が扉を開けると、そこには、お出迎えにきてくれていたライナス先生が笑顔で立っていた。

 エミリアさんは、当然のようにライナス先生に片手を差し出した。

 ライナス先生は、笑顔をキープしつつ声をかけるとエミリアさんの手をとる。

 「おはようございます。リージアス子爵夫人」

 「おはようございます、ライナス先生」

 ライナス先生は、エミリアさんが髪を切った姿を見て一瞬だけぎょっとしていたが、すぐににっこりと微笑んだ。

 「髪を切られたんですね。エミリアさん、よくお似合いですよ」

 ライナス先生のリップサービスにエミリアさんはぽぅっと頬を染めた。

 「まあ、お上手だこと」

 何ですか?

 この二人は。

 わたしは、1人でさっさと馬車から降りるとライザを抱き下ろしてやった。

 そして、微笑みあっている2人を無視して執務室へと向かった。

 そう。

 執務室、だ。

 ここで仕事をするためのわたしの執務室だった。

 ライナス先生の部屋の隣の小部屋をわたしは、与えられていた。

 といっても与えられたのは、およそ10畳程度の広さの部屋だけだ。

 中の家具とかは、自分で用意しなくてはならなかった。

 わたしは、工業ギルドから使用しなくなったデスクとかを安くで譲り受けるとそれをギルド職員たちにはこびこんでもらった。

 そして、書類棚を1つと茶器のセットと小さなテーブルと、ソファセット、お湯を沸かすための魔道具を購入した。

 そうそう。

 助手であるライザのデスクも用意したしな。

 暇をみては、わたしかライナス先生がライザに基礎的な勉強を教えるようにしていた。

 子供から学びの機会を奪うことはできないからな!

 

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