第62話
5ー10 当たった!
ギルド長が楽器を演奏し始めると観客たちは、しん、と静まった。
それは、深い心地のいい音だった。
ギルド長は、わたしが教え込んだ名曲の数々を奏でた。
それは、もともといた世界の子供用アニメのテーマソングだった。
顔があんパンでできているというなんともシュールな主人公が登場するそのアニメのこのテーマソングがわたしは好きだった。
『愛と勇気を携えて』
わたしは、勢いにまかせて謡だした。
『君はどこまでだって行ける』
『この世界に生まれてきた、生きる意味を知って』
わたしは、思いを込めて唄う。
『さあ!進もう!光の彼方までも』
観客が暖かい拍手を送ってくれたのでわたしは、ペコリンとお辞儀をした。
そして。
いよいよメインイベントだ!
わたしは、すぅっと息を吸った。
「では、本日の主役であるこの治療院の院長ライナス・フェン・オーキッドの登場です!」
観客のみなさんがいっせいにわぁっと声援を送る中、およそゆきの礼服に身を包んだいつもの1、5倍増しのイケメンぶりのライナス先生が現れる。
ジェイムズさんの指示により屋敷の使用人のみなさんが大きな宝箱を模した木箱を運んでくると観客がやばいぐらい沸いた。
わたしは、ギルド長が荘厳な曲を奏でる中、ライナス先生に目隠しをして木箱の前へと立たせた。
そして、ジェイムズさんが用意してくれた槍をライナス先生に手渡した。
「それでは、みなさん!お待ちかねの抽選の時間です!」
一瞬、しんと水を打ったように場内が静まり返る。
ライナス先生が槍でまず一枚目の板を突いた。
それを槍の先端からはずすとわたしは、番号を読み上げる。
「いの組の38番!」
「ぃやったあっ!」
若い冒険者風の男がガッツポーズをするのが舞台から見えた。
「当たった!!」
続いてライナス先生が二枚目を突き刺す。
「はの組の70番!」
わたしは、次々とライナス先生が差し出す板を読み上げていった。
「それでは、いよいよ最後の当たりくじです!」
場内が耳が痛くなりそうなぐらい静まった。
わたしは、ゆっくりと札を読んだ。
「との組の97番!」
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