第63話

 5ー11 止まったら死んでしまう!


 抽選が終わっても人々は、会場から去ることはなかった。

 なにしろみんな、娯楽に飢えてるからな!

 わたしがうちの出している出店に戻るとアエラさんとルルは、てんやわんや状態だった。

 「ああっ!トガー様っ!」

 「どうしたの?2人とも」

 わたしが訊ねると2人は、訴えた。

 「クッキーが売れて売れて!ほんと、大変なんですぅ!」

 わたしは、すぐにエプロンをつけると2人の手伝いに入った。

 この世界には、おいしいものなんてあまりない。

 だから、というわけでもないのだろうけどわたしのレシピで作ったサラさん作のクッキーは飛ぶように売れていった。

 結局。

 その日1日でクッキーは、500袋を完売した。

 そして、ちょっとした軽食のつもりで用意していたおにぎりとお茶も5000セットを完売していた。

 この売り上げから材料費をひいてもかなりの利益が期待できる。

 わたしは、ほくほくだった。

 「今日の売り上げが金貨8枚と銀貨25枚。それに宝くじの収益が白金貨10枚分」

 わたしは、収支をまとめた書類を指し示してライナス先生に渡した。

 「これで当分の運営資金は十分あるでしょ?ライナス先生」

 「ああ」

 ライナス先生が微笑んだ。

 「十分すぎるほどに、な」

 わたしは、ふふんと笑った。

 「わたしがちょっと本気を出せばこんなもんよ!」

 「さすがは、トガーだな!」

 ご主人様が横から口を挟んでにやりと笑った。

 「お前は、有言実行だからな」

 いやいやいや!

 そんなに誉めないで!

 わたしは、照れ笑いを浮かべる。

 「とにかくこれで、ここにも全員分の車イスが購入できるな!」

 「そうだな」

 ライナス先生がにっと笑った。

 「それで?次は、どうする気だ?トガー」

 「そうだな」

 わたしは、少し考えてから口を開いた。

 「これからこの施設は、リハビリの専門施設に変えていく。手始めに工業ギルドに依頼して使用可能そうな人には義手と義足を作成して使ってもらうことにする。そのための訓練をしてもらう場所を用意するつもりだ」

 立ち止まってなんていられない!

 だって、わたしは、回遊魚だからな!

 止まったら死んでしまうんだよっ!!

 

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