第60話
5ー8 開場!
「い、院長、大変です!」
警備を担当していた職員があわてて駆け込んできた。
「門の外が!」
「どうした?」
ライナス先生が訊ねるとその職員は、言いづらそうに答えた。
「門の外に人だかりができています!」
マジですか?
開場は、抽選会の1時間前の予定だったのに、もう門の外には、人々が集まってきていたらしい。
わたしは、ジェイムズさんと連絡をとって会場で出店する人々からOKをもらうとライナス先生に伝えた。
「予定よりだいぶ早いけどもう開場してもいいんじゃないの」
門が開かれると、人々がなだれ込んでくる。
クロイツの街中の住人たちが集まっているんじゃないかというような会場の混雑ぶりにライナス先生は、呆然としていた。
「この連中がみんな宝くじを買ったのか?」
「もちろんね!」
わたしは、木の板に並べたおにぎりを抱えてわたしたちの店へと運びながらにんまりと笑った。
どこの世界でも人の欲望は同じこと。
みんな、面白いことを求めているのだ!
「ライナス先生は、金持ちボンボンだからわからないかもだけど、いつの世でも庶民は、金持ちになりたいと思ってるもんなんだよ!」
「マジか?」
ライナス先生は、おにぎりを運ぶわたしの手伝いをしようとしてくれたが、わたしは、それを丁重にお断りした。
なにしろ今日は、ライナス先生には、重大なお仕事が待っているのだからな。
この『第一回夏の大きな宝箱くじ』の当選番号を抽選するという大役だ。
ジェイムズさんたちが管理している巨大な宝箱の中に入れられた木製の札の中から10枚の板を槍をぶっさして選んでもらうことになっている。
もちろん、ライナス先生には、目隠しをしてもらうし、公正さには注意している。
「まあ、それまで主役は、ゆっくりしててくださいねぇ!」
わたしは、そういうとおにぎりののった板を持って中庭へと向かった。
広い中庭は、すでに人でいっぱいだった。
各ギルドの出店の前には、すでに行列ができていた。
わたしは、工業ギルドの隣のテントの前におかれた台の上におにぎりののせられた板を置くと店で客の対応をしてくれていたアエラさんに訊ねた。
「商品は、足りそうかな?」
「はい!大丈夫だとは思います。でも、もう、このクッキーの方は残り少なくなってきたのでできれば補充をお願いしたいのですがっ!」
「OKよ!」
わたしは、工業ギルドにから貸し出してもらった腕輪型の通信用の魔道具に向かって告げた。
「サラさん!至急、クッキーの追加をお願いします!」
『了解です!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます