第59話
5ー7 抽選会
月日は光陰矢の如し。
どたばたしているうちにあっという間に宝くじの抽選の日がやってきた。
その日は、 朝から忙しかった。
わたしとサラさんは、治療院の調理場を借りて早朝まだ暗いうちから忙しくたち働いていた。
宝くじの抽選会場に出す出店で売る焼き菓子とおにぎり、おにぎりとセットで売るお茶を用意していたのだ。
ほかの競合者たちもここの厨房を使いたがっていたが、そこは、それ。
わたしとライナス先生の仲なのでここの厨房はわたしたちが使えることになった。
わたしたちは、ここの大きなオーブンで何回もクッキーを焼いた。
辺りはすっかり甘い香りに包まれていた。
厨房の横にある職員用の食堂では、アエラさんとルル、それにライザがクッキーを紙袋に入れてリボンをかけていた。
「これ、何個つくるんですかぁ?トガー様」
ルルが言うのでわたしは答えた。
「少し多めに用意しといて、余ったら屋敷のみんなに配ればいいじゃん」
今回、冒険者ギルドや、工業ギルド、商業ギルド、農業ギルドもこの会場で出店を出すことになっている。
実は、わたしは、彼らとの打ち合わせのときにいろいろと相談されていた。
今まで彼らは、こんな催し物に参加したことはなかったのだ。
わたしは、それぞれのギルドの特徴を活かした品を売るようにとアドバイスした。
そして、冒険者ギルドは、魔法で冷やした果物の砂糖かけや、氷菓子を。
商業ギルドは、薄く焼いたパンに肉や野菜を挟んだクレープを。
農業ギルドは、新鮮な野菜の販売と美味しい青汁。
工業ギルドは、わたしの考案したたこ焼き器を使ってのたこ焼き販売。
といった感じになった。
もちろんこの他にも希望するものは、誰でも屋台を出せるし。
この娯楽の少ないフェブリウス領においては、前例のないことらしくみな、忙しくも楽しんで参加してくれていた。
「まったく、みんな、何を考えているんだか」
厨房を覗きにきたライナス先生は、いつもよりもずっと堅苦しい貴族の礼服姿でぶつぶつ言っていた。
「ここをなんだと思っているんだ?」
「まあ、いいじゃん。これもすべてここの運営資金を稼ぐためだし」
今日のイベントには、誰でも参加できたが1つだけ条件があった。
誰であれ、売り上げの3割は、治療院へと寄付することになっていた。
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