第39話
3ー10 到着しました。
「トガー」
「ん・・・」
わたしは、ライザに揺り起こされて目を覚ました。
いつの間にか、わたしたちを乗せた荷車は見知らぬ場所で停車していた。
そこは古い神殿のような柱が何本もたった大きな建物の前にある広場のようなところだった。
「ここが治療院?」
わたしは、一気に憂鬱な気分になるのを感じていた。
なんか。
建物から不穏なオーラが出ているような気がする。
この陽光の下でも冷たい空気が漂っているような感じがしてわたしは、イヤな予感に襲われていた。
「ここが目的の場所だよ、トガー。クロイツの街の治療院だ」
わたしたちは、ロブさんにも手伝ってもらってご主人様の車椅子を地上へとおろした。
ロブさんは、今日はご主人様の従者として雇われていたのでわたしは、ご主人様のことはロブさんとライザに任せて治療院へと向かうことにする。
「しばらくかかるんなら、街に行ってみますか?ライザ様も喜ばれますよ、伯爵様」
「余計なことはするな」
ご主人様が不機嫌そうな声で命じるのにロブさんは、笑顔で頷くと車椅子を押して建物の敷地から出ていった。
「この辺は、街の中央からは離れているけどけっこういいところですよ」
わたしは、去っていく3人を見送ると治療院の扉を叩いた。
だが、誰も出てくる様子もない。
わたしは、もう一度ドアをノックした。
しばらくして大柄な赤毛の女の人が出てきた。
「なんのご用です?」
女は、すごく迷惑そうな顔をしてわたしを見下ろした。
わたしは、できるだけにこやかな表情を浮かべる。
「トガーと言いますが、ライナス先生はおられますか?」
「ライナス先生ですか?」
女は、ますますイヤそうな表情を浮かべるとわたしに告げた。
「ちょっと確認してきますからお待ちください、トガーさん」
女が扉をどん、と閉めたのでわたしは、心が折れそうになっていた。
やっぱ、来るんじゃなかったかな?
もしかしたらライナス先生は、ほんの軽いリップサービスかなんかのつもりだったのかもしれないな。
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