第36話
3ー6 助手
わたしは、ライザの汚れたぱっつんぱっつんの服を脱がせると桶に入れてお湯の温度を確かめてから頭からお湯をかけた。
そして、部屋に置かれていたわたし用の石鹸でライザをごしごしと洗っていった。
ライザは、大人しく桶の中にうずくまってされるがままになっていた。
汚れが落ちるとライザは、灰色の猫なんかではなくなった。
銀色の美しい子猫。
わたしは、ライザの体を拭くと洋服を渡した。
「服ぐらい着れるでしょ?」
ライザは頷くと、渡された服を身につけた。
薄いピンクのワンピースに白いレースのエプロンをつけると本物の伯爵令嬢みたいになった。
わたしは、仕上げにライザを椅子に座らせると大きな白いベッドカバーを首もとに巻き付けた。
櫛でライザの長く伸びた髪を整え、目を覆い隠している前髪を眉毛の上で切り揃える。
そして、美しい銀髪をお下げにしてやる。
わたしは、見違えたライザに訊ねた。
「あんた、図書室の場所を知ってる?」
「知ってるわ」
ライザが答えるとわたしは、ライザに命じた。
「あんたは、これからわたしの助手になるんだからね。手始めに図書室からなんか自分の読める本を持ってきてくれる?」
「はい!」
ライザは、わたしの部屋から駆け出そうとして足を止めるとわたしのことを振り向いた。
「何?」
わたしがきくと彼女は、わたしに聞き返した。
「トガーは、いなくならないよね?」
「まあ、いまのところはな」
わたしは、ライザに命じる。
「はやく、本を取ってくる!」
「は、はいっ!」
ライザは急いで駆け出した。
わたしは、定時のご主人様のお世話のために隣の部屋へと行き、手早く用を済ませてご主人様に伝える。
「そうだ。報告があるんですが」
「なんだ?」
「実は、助手ができまして」
「助手?」
疑わしそうにわたしを見上げているご主人様を見てわたしは苦笑した。
ああ、やっぱ親子だな。
わたしは、ご主人様に説明をした。
「いえ、わたしも厨房の仕事もすることになったので、いつもご主人様につきっきりではいられないんで。今日は、これから夕食まで助手が本を読んでくれますからね」
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