第三章 再会と復活と ー前編ー


 相変わらず人間達は狩猟採集生活を送っていた。

 昔、異界の上層部の一員だったぐれ者が人間を喰っている時、不意に風を切る音がして咄嗟とっさに前に跳んだ。

 振り返ると、かつて自分を討伐に来た討手うってた。

「~~~」

 れ者は異界の言葉で「光」を意味する言葉を呟いた。

 討手は意味が分からず眉をひそめた。

御主おぬしの事だ」

 どうやら前回相見あいまみえた時に朝日を利用したからそう呼んだようだ。

此処ここに長居しすぎたようだな」

 ぐれ者はそう言って地面に手を付いた。

 大地が揺れたかと思うとマグマと共に噴煙が高く噴き上った。

 ぐれ者は巻き込まれまいとの場を離れようとした。


 しかし討手はぐれ者の前に回り込むと思い切り殴り付けた。

 ぐれ者が地面に叩き付けられる。

 ぐれ者は討手の攻撃を防ごうと剣を創り出した。


 剣で討手を牽制けんせいしながら急いで立ち上がった。

 剣をけてぐれ者のふところに飛び込んだ討手が強烈な蹴りを放った。

 ぐれ者は大きくね飛ばされて地面にす。


 ぐれ者の手から離れた剣が転がる。

 そばまで灼熱の溶岩が迫っているのが分かった。

 身を焦がすような熱を感じる。

 飲み込まれたら核に戻るのは確実だ。


 ぐれ者は急いで立ち上がろうとした。

 しかし討手が再度ぐれ者を蹴り飛ばす。

 討手は素早く剣を拾うとぐれ者に力任せに突き立てた。

 剣が地中深くまで突き刺さりぐれ者は流れてくるマグマの前にはりつけにされた。

 溶岩は容赦なくぐれ者を飲み込んだ。

「ーーーーー!」

 ぐれ者は断末魔の叫びを上げながら核に戻った。

 核の一部がぐれ者自身の創り出した剣と反応した。

 溶岩が冷えて固まった頃、剣は一つの核となって地面の上に転がった。


 休み時間、六花が廊下を歩いていると、

「六花ちゃん、今日一緒に帰らない?」

 五馬が声を掛けてきた。

「うん!」

 六花は嬉しくて即答した。


 女の子の友達と一緒に帰るなんて初めて……。


 六花は放課後が待ち遠しくなった。


 放課後、六花が急いで廊下に出ると、丁度ちょうど五馬がってくる所だった。

「六花ちゃん、今日予定る? 無いなら寄り道しない?」

いよ、どこ行く?」

何処どこかに入ってお喋りしない?」

「うん!」


 お店で友達とお喋り!


 六花は五馬と連れだって学校を後にした。

 ファーストフード店に入ると五馬と向かい合って座った。

 雑談してる内に季武の話題にった。

「六花ちゃん、卜部君と付き合ってるんだってね」

「まさか! 知り合ったばかりだよ」

 六花は真っ赤になって首を振った。

何時いつ?」

「今学期からだから、つい最近」

「知り合ったばかりで毎日お昼一緒に食べてるのに付き合ってないの?」

「季武君、格好良かっこいいもん。私なんか釣り合わないよ」

 六花がうつむいた。

態々わざわざ二人きりにってるのに付き合ってないの?」

「知らない事、色々教えてもらってるの」

 二人きりになる理由の説明にはってないが他に答えようがない。

「ね、五馬ちゃんのお誕生日っていつ?」

 六花は話題を変えた。

「七月二十二日」

「あ、その日、土曜日だね」

 六花はスマホのスケジュール帳に五馬の誕生日を入力しながら言った。

「五馬ちゃんの都合が良かったら、その日、一緒にお祝いしない? 新宿駅の近くにケーキの美味しいお店があるんだって」

「本当!? 行ってみたい!」

「じゃあ、七月二十二日に一緒に行こう」

「うん」

 六花と五馬は待ち合わせの時間と場所を決めた。

 不意に六花のスマホが振動した。

 見ると季武からのメッセージで


〝そろそろ家に帰れ〟


 と書いてある。

 六花は思わず辺りを見回したが季武の姿は無かった。

如何どうしたの?」

 五馬が訊ねてきた。

「季武君からなんだけど、私が今、家にいないって知ってるみたいなの」

なんて書いてあるの?」

「もう家に帰れって」

 六花の言葉に五馬も怪訝けげんそうに周りを見た。

「遅いしそろそろ帰ろうか」

 五馬はそう言って鞄をつかんだ。

「うん」

 学校以外で友達とお喋りしたのは初めてで楽しかったからもう少し一緒にたかったが遅くまで引き止めたら迷惑だろう。


 しつこくして嫌われたくないし……。


また来ようね」

 五馬の言葉に、

「うん!」

 六花は嬉しくて勢いよく頷いた。

 二人は店を出ると家路にいた。


 弁当をい終えた貞光は、季武がスマホを操作しているのに気付いた。

 画面を覗き込むと「もう家に帰れ」と書いている。

 六花を見掛けたのかと思って気配を探ってみたが近くにはない。

 画面に六花の居場所は書いてない。

 と言うか、そもそも六花からはメッセージ自体来ていない。

なんで六花ちゃんが家にないって分かんだよ」

「スマホのGPSで」

「おっ……、ストーカーかよ!」

 ドン引きしている貞光を他所よそに、季武はもう一度GPSを見て六花が家に向かっている事を確認するとスマホをふところに入れた。


「――でね、五馬ちゃんのお誕生日、七月二十二日なんだって。それで二人でお祝いする事になったの」

 翌日の昼休み、季武は弁当を食べながら六花の話を聞いていた。

 六花がこんなにはしゃいでいるのは今世こんせでは初めて見た。


 頼光や頼光四天王が酒呑童子討伐で一躍いちやく有名になって以降イナにとって憧れの人は頼光と四天王だった。

 世間では常に頼光と四天王が英雄として人気者だった訳ではないが、イナは何時いつ何処どこかから聞き付けていて頼光と会うと感激していた。

 今回も頼光と対面した翌日は大喜びで色々話していたがそれでも此処ここまで浮かれてはいなかった。


 朝から五馬と言う友達の話をし続けているのを聞き、遅蒔おそまきながら六花が自分以外の誰かと話しているのを見たのは――頼光達を除けば――鈴木とか言うヤツだけだったと気付いた。

 教室でクラスメイトと喋っているのは見た事が無い。


 これだけ嬉しそうなのはおそらくずっと前から友達がなかったからだろうが、季武と違って人間と関わる気が無いからなかったのではなく理由は分からないが出来なかったのだ。

 六花――と言うかイナ――は人見知りではない。

 自分から他人に話し掛ける事が出来ない性格ではないから何か理由が有って今世こんせでは友達がなかったのだろうが今までの話の内容に思い当たるふしは無い。


 鈴木を始めとした民話研究会のメンバーは普通に接しているようだから六花が仲間外れにような何かを仕出しでかしたとも思えない。

 何よりイナは性格的に人に嫌われるような事はしない。


 それも気にるが……。


 もう一つ。

 六花が話している友達の事も何か引っ掛かる。

 だがそれなんなのか、いくら考えても分からなかった。


 昼休みが終わり、季武と一緒に屋上から戻ってきた六花は鞄を開いて目を見張った。

 中が黒く染まっていたのだ。

 匂いでぐにソースだと気付いた。

 前の方で固まっている石川達が六花を見ながらくすくす笑っている。

 六花は、そっと季武の様子をうかがった。

 季武は椅子に座ろうとしていた。

如何どうかしたのか?」

「なんでもない」

 六花は首を振ると弁当箱をソースまみれの鞄に入れて机の横に掛け直すと廊下に出た。


 季武が横にるのにソースで汚れた教科書やノートを出す訳にはいかない。

 登下校時以外は机に掛けっぱなしの鞄を持って廊下に出れば不審に思うだろうしそれいてこられたら気付かれないように教科書やノートを拭くのは無理だ。

 トイレの中までは入ってこないが何故なぜ鞄を持っていくのかと聞かれたら答えられない。

 仮に詮索してこなかったとしても不審に思われて嫌がらせがバレてしまうかもしれない。


 ノートとペンは購買で買ってきて教科書は……。

 五馬ちゃんに貸してもらおう。


 季武に見せてもらったりしたら更に女子の怒りを買うのは目に見えている。

 隣の教室をのぞいたが五馬はなかった。


 購買から戻ってきてもだ姿が見えなかった。

 授業が始まるまでには戻ってくるだろうと戸口で待っていると鈴木が六花に気付いて話し掛けてきた。

「如月さん、どうしたの?」

「五馬ちゃんに教科書借りに来たの」

「それなら僕が貸すよ」

 そう言って鈴木が教科書を貸してくれた。


 六花が教科書を持って教室に戻ってきたのを季武が見咎みとがめた。

「教科書、借りたのか? 忘れたなら俺が見せたのに」

「えっと……」

 季武に見せてもらうと嫌がらせをされるから、とは言えず口籠くちごもった。

「誰から借りたんだ?」

「鈴木君」

 六花の答えを聞いた季武は一瞬不愉快そうな表情を浮かべた後、黙って前を向いてしまった。


 怒ったのかな?

 季武君、鈴木君とは知り合いじゃないはずだから嫌いな訳じゃないよね?


 季武の不機嫌そうな様子に六花は気持ちが沈んだ。


 放課後、季武は何も言わずに帰ってしまった。


 やっぱり私のこと怒ってるんだよね……。


 到頭とうとう嫌われてしまったのかと思うと悲しくなった。

 ただでさえみんなからけられてるのに季武にまで嫌われたらクラスメイトで口をいてくれる人は一人もなくなってしまう。


 まぁ元からだし……。


 そう思おうとしても気分が落ち込んだ。

 六花は溜息をくと一人で民話研究会に向かった。


 図書準備室で五馬が、

「六花ちゃん、一緒に帰らない?」

 と誘ってくれた。

 六花は咄嗟に承諾し掛けて、

「あ、買い物に行かないといけないの」

 と答えた。

「一緒に行ったらダメ?」

いよ! 新しいランチクロス買うだけだから」

「じゃ、決まり」

 五馬のの言葉に六花は救われた気がした。

 季武に気付かれないようにソースまみれの鞄の中に弁当箱を入れてしまったのでランチクロスがダメにってるはずだ。

 明日のために新しい物を買わなければならない。


 でも季武君、明日もお弁当食べてくれるかな……。


 六花と五馬は並んで校門から出た。

「中学ってなんで食堂が無いんだろ」

 店に向かってる途中、五馬がぼやいた。

「お金が掛かるからじゃない?」

「お弁当だってお金が掛かるでしょ。コンビニでお弁当買うのも食堂で食べるのも変わらないよ」

「え、五馬ちゃん、コンビニでお弁当買ってるの?」

「うん。お弁当買ってきて弁当箱に入れ替えるの面倒だよね」

「あ、それじゃ、私が作ってあげようか? 二人分も三人分も手間は同じだし」


 母が食費が掛かり過ぎると反対するかもしれないのが心配だったが其処そこはお小遣いを減らすか貯金してあるお年玉を渡すかすれば許してもらえるだろう。

 ただそうなると体操服を買うのは無理だから体育を休み続けられる口実を考える必要が有る。


「二人分って……しかして、卜部君にもお弁当作ってあげてるの? だから一緒にお弁当食べてるの? 付き合ってないんだよね?」

「うん、季武君もコンビニでお弁当やパン買ってるって言うから……」

「なら、お料理教えてくれる? したら、わたし、自分で作るから」

いよ。って言っても私もお母さんに教えてもらってるから、五馬ちゃんにも教えてくれるように頼んでみる」

「有難う」

 五馬の笑顔に、彼女は何時いつまで仲良くしてくれるだろうかと考えると悲しみが込み上げてきそうにった。

 それを押さえて無理に笑みを浮かべたとき背後でドサッと言う音がして振り返った。

 ランドセルを背負しょった子供が倒れていた。

 ころんだのだ。

 六花は急いで駆け寄った。

 膝をいて手を伸ばし掛けた時、何か嫌な感じがした。

 思わず顔を上げて辺りを見回したが鬼はない。

如何どうしたの?」

 五馬が背後から声を掛けてきた。

「なんでもない」

 六花はそう答えて小学生に手を差し伸べた。

 男の子は首を振って自力で立ったが一瞬よろけた。

 六花が急いで肩に手を置いて支えた瞬間、背筋を悪寒が走った。

 それを疑問に思う前に男の子のひざ怪我ケガが目に止まった。

「膝、血が出てるよ。痛いでしょ」

 六花の言葉に男の子は再度首を振った。

「家に帰ったらちゃんと手当てしてね」

 六花がそう言うと男の子は頷いて走り去った。


 季武は金時の気配を探しながら歩いていた。

 金時のクラスメイトが昼休みにSNSで人間の腕と足だけ発見されたと言うニュースを見て騒いでいたのだ。


 金時は学校を早退して腕と足が保管されている所へ行った。

 一目ひとめぐれ者のい残しと分かったので他の三人に連絡した。

 既に早退していた金時はのまま鬼の捜索を開始した。


 現場は都内の団地内だ。

 喰い残したならぐに他の人間を襲う可能性は低い。

 柔らかい胴の部分以外は喰いたくなかったとしても、物足りなければ別の人間を襲って他にも手足が残ってるはずだ。

 緊急性は低いと判断し他の三人は学校でネットをチェックしながら放課後に合流する事になった。


 季武はスマホのGPSで金時の位置を表示して其処そこへ向かっていた。

 団地内の広い公園を通っている時、ふと知っている誰かの気配を感じた。

 異界の者と人間が交ざったような感じだが、異界の者と人の間に生まれた子供は人間だ。

 仮に雑種が出来るとしても季武の知り合いにはない。


 見える範囲には誰もない。

 離れた場所からは大勢の人間の気配を感じるが。

 季武は内心で首をかしげながらものまま通り過ぎた。

 ぐれ者に襲われてるのでなければ如何どうでもい。


たか?」

 季武の問いに金時が「だ」と答えようとしたとき綱と貞光もってきて合流した。


 突如とつじょ、絶叫が響いた。

 四人は同時に駆け出した。


 二体の鬼が人を喰っていた。

 片方が上半身を、もう片方が腰から下を喰っている。


 綱が髭切で斬り掛かった。

 季武も腰に差していた刀を抜くと綱が相手にしている鬼の背後に回り込んだ。

 鬼が横に跳んでける。


 金時がもう一体の鬼に駆け寄った。

 貞光がの鬼の背後に回る。

 金時がまさかりを横にいだ。

 咄嗟に後ろに下がった鬼を貞光の大太刀が斬りいた。

 鬼が絶叫を上げて消えた。


 綱が再度斬り掛かった。

 鬼が持っていた人間の足を綱に投げ付けた。

 綱が髭切で足を払う。

 の隙に鬼は綱の斜め前を駆け抜けて逃げ出した。

 綱が走り出す前に季武の矢が三本立て続けに鬼の背に突き刺さった。

 った鬼が咆哮ほうこうを上げて消えた。


 季武は地面に落ちている足に目を向けた。太股はほとんど残ってなかった。

「ニュースのヤツは胴だけで頭と手足は喰ってなかったよな」

 季武の考えを察した金時が言った。

「別のがるって事だな」

 季武はスマホを取り出すと地図を表示した。

「今るのが此処ここで昨日の事件現場が此処ここ。綱、貞光、何処どっちから来た?」


 季武の問いに二人が此処ここへ来るまでのルートを指で示した。

 綱は西から来た。

 貞光は南からだ。

 季武も貞光とほぼ同じルートを通った。


「お前は今日の辺を回った?」

「確か、こんな感じだったな」

 金時は今日辿たどった道筋を指で示した。

 主に東方面を回っている。

「誰も北からは来てないな」

 四人は北へ向かった。


 其々それぞれ距離を取って北上していると、

たぞ!」

 スマホから貞光の声が聞こえてきた。

「穴を見付けた!」

 金時の声もした。

「貞光、場所は」

 綱の問いに貞光が答えると季武は其方そちらへ向かって走り出した。


 季武が着いた時、丁度ちょうど綱が鬼を斬り倒した所だった。

「終わったか?」

 わずかに遅れて金時も到着した。

「穴は新しかったし、他の気配も無いから帰ろうぜ」

 金時の言葉に四人は自分達のマンションへ向かって歩き始めた。

「季武、六花ちゃん、何時いつから来てくれるんだ?」

なんでお前達にまで六花の料理を食わせてらないといけないんだ」

「六花ちゃんと喧嘩でもしたのか?」

六花イナちゃんは怒らねぇだろ」

「季武も六花イナちゃんには怒んないじゃん」

「何が有ったんだよ」

なんで何か有ったと思うんだ」

 季武がぶっきらぼうに答えた。

「今までイナちゃんが作った食事、俺達が食うの嫌がった事ないじゃん」

「実はもう彼氏がたとか」

六花イナちゃんは彼氏たら他の男の弁当なんか作んねぇだろ」

「分かんないじゃん。イナちゃん、基本的に『可哀想』で行動するタイプだし」

「そう言や面倒トラブルに巻き込まれるのって大体のパターンだったな」

あれで毎回季武と会うまで無事って何気なにげすげぇよな」

 綱達が好き勝手言うのにうんざりした季武が、

「六花が他の男から教科書借りたんだ」

 と答えた。

本当ホントに彼氏がたのか!?」

「そんな訳ないだろ! 借りただけだ!」

それで嫉妬かよ、見っともねぇな」

「同じ立場でもそれ言えるのか?」

 季武が貞光を睨み付けた。

「教科書くれぇで文句なんか言わねぇよ」

「文句なんか言ってないぞ」


 異界の者は生き物では有るが異なる次元の存在だから人間界の生き物とは根本的に違う。

 討伐員は人間界こちらで人間達と一緒に長く暮らしている為、同じ人間と長期間付き合っている内に友情や恋愛感情と似たものをいだく事は良く有るがあまり入れ込まない。

 特に人間界こちらに長くて多くの人間の死を見てきた者ほど思い入れは薄くる。

 季武のように一人の人間にこれだけ執着するのは珍しいのだ。


「でも不機嫌なとこ見せたんだろ」

「今頃、落ち込んでるぞ」

「ちゃんとフォローしとけよ」

「食事頼むの忘れんな」

「目当てはそれか!」

 そんな話をしている内にマンションにいた。


 翌朝、六花が登校すると季武が既に席に着いていた。

 六花がおずおずと挨拶をすると、

「今日の放課後、頼光様が来るんだ。一緒に来ないか?」

 と季武が誘ってきた。


 良かった、口いてくれた。


「頼光様が来るのって特別な用事じゃないの? 私がたら迷惑にならない?」

 六花は安心して胸を撫で下ろしながら訊ねた。

「いや、定期連絡だ。今回は特に報告する事は無いからお前を呼んでやれって」

「……初めて会った時、必ず会いたがるって言ってたけど……」

「酒呑童子を倒して名をげた後は完全にアイドルだった。それまでは俺の上司ってだけだったんだが」


 アイドル……。

 そう言えば、いつも邪馬台国の場所聞いてるんだっけ……。

 私ってホントにミーハーなんだ……。


 そう思うとちょっと……いや、かなり恥ずかしい。

 とは言え伝説の英雄だからアイドルなのは確かだ。

 会えるなら会いたい。

 何より折角せっかく季武が誘ってくれたのに断って心証しんしょうを悪くしたくない。

「頼光様は? 私が行っても怒らない?」

「許可は取った」

「それなら……」


 この様子なら今日もお弁当食べてくれそう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る