第5話 初めての魔物狩り
「――相変わらずここの御飯は最高ね!」
師匠は御飯を精一杯に頬張ってから言った。
「そうですね、森では変な葉っぱと魔物の肉を大雑把に焼いてるだけですから」
「そろそろアルカが料理スキルを手に入れてくれると普段から美味しい御飯が食べられるんだけどなあ」
なんて言っている。
師匠は錬金に関しては誰もが認める天才なのだが、料理は壊滅的に下手くそなのだ。
そのため料理は僕が担当しているのだが、師匠よりマシというだけで僕も料理センスはない。
たまの外出で食べるこういった料理は僕らにとって癒しとなる。
「それで、これからの予定の話なんだけどね」
師匠はそう言って話し始めた。
「今日はとりあえずこの辺に居る魔物を倒してもらうんだけど、私は行けなくなっちゃったわ」
「なるほど、わかりました」
「ごめんねー。ちょっと時間がかかるかもしれないから、転移スクロールをいくつか渡しておくわね」
そう言って師匠は10本ほど巻物を僕に渡す。
転移のスクロール……予め魔力が込められているため、僕でも発動させることができる転移アイテム。
それだけに作るのがめんどくさく、結構高価な代物だ。市場で買えば一本で僕の今日の収入を超えるほどに。
それを10本も渡すということは本当に時間がかかりそうなんだろう。王様からの命令なのかな?
「ありがとうございます」
「ブレスレットで連絡は取れるからそんな寂しそうな顏しないで」
「してませんが」
師匠はそんな冗談を言うが、これでも多分心配してくれてるんだろう。
「――フェルミ、こんなところに居ましたか。もう出発しますよ、早く来てください」
食事をしながら師匠と雑談を楽しんでいると、背の高い銀髪のローブ姿の男が現れた。
師匠の知り合いらしい。
「えーもう? せっかちだなあ」
「貴女がどうしても欠かせない用事があると言うから皆で待っていたんですよ。それがまさか、こんなところで暢気に食事を摂っているとは思いませんでしたが」
「どうしても欠かせない大事な話をしてたのよ。……じゃあ行ってくるわねアルカ」
「はい。頑張ってください師匠」
師匠は出てきていた料理を凄まじい速度で平らげると、銀髪の男と一緒に店を出て行った。
ちなみにここの食事代はさっき貰っている。
僕もずっと食べていても仕方ないので、残った料理を早々に食べ終えて勘定を済ませる。
◇
――おお、居た居た。
街道を逸れた草原を歩いていると、ちょうど魔物が見えた。
ホーンラビット。王都周辺に生息するツノが生えた兎の魔物で、危険度はFランク。子供でも倒せるくらいの強さなので僕でも大丈夫だろう。
「
土属性の初級魔法をホーンラビットに向けて放つ。
そこそこ距離が離れていたのでホーンラビットは気づいておらず、僕の魔法は見事に命中した。
『経験値を6獲得しました』
初めての戦いは実に呆気なく終わった。
『経験値を6獲得しました』
『経験値を6獲得しました』
『経験値を4獲得しました』
『経験値を5獲得しました』
・
・
・
『経験値を7獲得しました』
『経験値が一定に達しました。レベルが1から2へと上がりました』
しばらく目についた魔物を倒していると、ようやくレベルが上がった。
「やった! 人生初レベルアップ!」
『自己鑑定』を使い、ステータスを確認してみる。
アルカ
LV:2(+10)
HP:130/130(+10)
MP:247/390(+50)
SP:120/120(+10)
希少スキル:錬金LV3(+2)
一般スキル:薬調合LV6・魔力操作LV5・採取LV4・炎魔法LV2・水魔法LV2・土魔法LV3(+1)
魔力を中心に各ステータスが上昇していた。HPやSPが上がるのなんて初めて見た。
HPは生命力、MPは魔力量、SPは気力量を表すステータスなんだけど、他にも意味がある。
HPの最大値はスタミナや状態異常耐性に影響し、MPの最大値は魔法攻撃力や魔法防御力に影響し、SPの最大値は物理攻撃力と物理防御力、速度に影響する。
僕の場合、長年の成果でMPがそこそこ高いので同レベルの中では結構魔法が強い人になってるわけ。
まあ、同じMPでも魔法攻撃力が高くなりやすい人も居れば、魔法防御力が高くなりやすい人も居たりで結構個人差あるらしいけど。
『経験値を5獲得しました』
魔物狩りはまだまだ終わらない。
倒した後の死体は丸ごと魔法鞄に入れている。
『経験値を6獲得しました』
『経験値を6獲得しました』
『経験値を6獲得しました』
うーん、どれも魔法一発で終わるから物足りないなあ。
戦っている時間よりも、死体を拾い上げて魔法鞄に収納する時間の方が長いまである。
「一度冒険者ギルドに行って周辺の魔物の情報でも聞いてみますか」
僕は一旦狩りを切り上げることにした。
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