第3話 初めての錬金
工房へと向かう道中。師匠の後ろをついて行きながら僕は自分のステータスを確認する。
さっきは動揺して忘れていたが、自分のステータスならスキルが無くても『自己鑑定』と言われる方法で確認可能だ。
それによると、僕の現在のステータスはこんな感じ。
アルカ
LV:1
HP:120/120
MP:340/340
SP:110/110
希少スキル:錬金LV1
一般スキル:薬調合LV6・魔力操作LV5・採取LV4・炎魔法LV2・水魔法LV2・土魔法LV2
レベルは
そのため僕のレベルは未だに1のままなんだ。
HPとかのレベル1の平均は各100くらいらしい。
僕も元々そんなもんだったが、減っては回復してを繰り返すことによって徐々にだが最大値が上昇していく性質があるので、ずっと師匠の助手として働いていた僕はそこそこMPが上がっていた。
錬金スキルもそうだが、薬調合や魔法スキルなんかもMPを消費するんだよね。
「さて、それじゃあ回復ポーションを作ってみましょうか」
工房につくと、師匠は【アイテムボックス】から素材を取り出してそう言った。
回復ポーションは一般スキルである【薬調合】でも作成できる簡単なアイテムだ。
ただ、【錬金】であれば【薬調合】に比べて時間がかからないのと、成果物の効果が増す性質がある。
時間と効果を見て、僕の今の実力を把握しようということだろう。
僕はレシピの通りに、試験管の中に薬草10個とF級魔石を1つ入れる。
薬草は森の中に大量に自生している草で外に出れば好きなだけ採取することができる。
F級魔石はF級の
僕らは数ヶ月に一度、作成したポーションを国や冒険者ギルドに卸に行くので、そのタイミングでこういった素材は購入している。
僕は素材の入った試験管に向けて【錬金】を発動する。
僕の中のMPが減っていく感覚がある。
魔石が溶け出し、薬草を呑み込んでいく。
試験管を揺らし、魔石と薬草を混ぜる。
溶けだした魔石に触れた薬草は溶けていき、始める前は固体だったそれらは、いつの間にか緑の液体へとなっていた。
その液体をポーション用の瓶に詰める。
「ふう、できたよ師匠」
そして僕は、完成した回復ポーションを師匠に見せる。
これは僕の初めての錬金成果物。
回復ポーション自体はこれまで【薬調合】によって数えきれないほど作ってきたが、【薬調合】と【錬金】とでは工程もまるで違うので新鮮な気持ちだ。
MPの消費量も多いようで、【薬調合】ではポーション一つあたり10MPほどの消費だったが、【錬金】だと20MP減っているようだ。
「……通常の奴に比べて回復量+5%ね。まあ初めての錬金だったらこんなもんじゃない? イレギュラーな取得手段だったけど、効果自体は普通みたいで安心したわ」
◇
錬金スキルを手に入れてから、一週間が経過した。
この一週間、師匠のスパルタトレーニングによって僕は疲労困憊である。
師匠から出された課題は『土を金に変える』というもの。
それ自体は別に不可能なことではない。むしろ、【錬金】の持つ『変質』の力の代表例と言えるだろう。
土を石に変え、石を鉄に変え、鉄を銀に変え、銀を金に変える。
錬金スキルをひたすら使用し続ければこの順序で変質していくので難度自体は非常に簡単だと言ってもいい。
ただ、MP消費量が馬鹿だ。
この一週間、僕は『MP回復速度上昇ポーション』と『MP回復ポーション』と『疲労回復ポーション』を馬鹿みたいに使用している。
それらのポーションは師匠持ちだ。
そこまでしてるのに、まだバケツ一杯分の土を鉄から銀に変質させている最中だ。
土から石は数時間で終わったので簡単だったんだが、石から鉄、鉄から銀にするのはかかるMPも時間も、指数関数的に伸びていっている。
銀から金にすることなど考えたくもないほどに。
しかし、その成果もあってMPの最大値は340から348に、錬金スキルのレベルは2に上がっていた。
「ただいまー」
「おかえり師匠。何かいいもの見つかった?」
出かけていた師匠が帰ってきたので休憩がてら出迎える。
僕らの居る森は魔力の豊富な土地なので、錬金術において価値の高い素材が結構手に入る。
師匠は度々結界の外に出て、僕が取れないような物を持って帰ってくるんだ。
その中には
「んー? まあまあね。
そう言いながら【アイテムボックス】から大量のモンスター素材を取り出す師匠。
「僕もそろそろ
「んー、そうね。アルカももう成人だし、そろそろいいのかしら。
今度ポーションを売りに行く時にでも、適当な
だから、勝手に結界の外に出て戦ったらダメよ? 今のアルカだと多分死ぬから」
師匠はそう言って僕のお願いを了承してくれた。
ちなみに結界の外に出たら死ぬ、というのはただの脅しではなく事実だ。
この森は魔力の豊富な、所謂『魔境』に分類される場所だ。
師匠の結界のおかげでレベル1の僕でも普通に生活が出来ているが、普通は一流の冒険者ですら滞在することが困難な場所なのだ。
それは師匠が持ち帰ってきたモンスター素材の等級を見るだけでもわかる。
僕は次の外出に思いを馳せながら、金作りの課題を再開した。
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