第5話 "才能"稼ぎ

 俺は冒険者ギルドで登録を済ませると、すぐに依頼掲示板にあった狼の討伐を引き受けた。別に俺は金が目当てで依頼を受けたんじゃあない。ギフト稼ぎだ。

 まだ人外から掠奪した時の結果ははっきりとは分かっていないが、覚醒した今ならその結果が分かる。

 どんな結果が出るかはこれからのお楽しみってやつだな。


 国から外へ出れば、そこはもう危険地帯。護衛を雇わなければ、仲間を連れていなければ、どこで襲われようが助けは来ない。

 人知れず、襲われて食われるだけ。


 と、外は能の無い奴らには恐怖の場所でしか無い。だが今の俺なら余裕だ。


 という事で俺はノマドとカルディアとで、国の外へ出た。

 そして国から少し離れればすぐにそのお目当ての魔物は現れる。


「ガルルル……」


「お前ら、よーく見てろ。これが俺のギフトだ。こんな犬っころなんざ俺の敵じゃあねえ。オラァ! 掛かってこいよクソ犬!」


「グルルル……ガァァァ!!」


 俺の挑発に掛かったのか、狼は俺に間髪入れずに飛び掛かってきた。

 ここで俺は、冒険者ギルドで手に入れた【剛体】を発動し、自身の身体を強固な鉄のように強化すれば、狼は俺の首元に噛み付くも、牙が俺の皮膚にさえ突き刺さらなかった。

 そこで俺は狼の頭を鷲掴み、身体から引っ剥がすと、そのまま地面に叩きつける。


「ギャウンッ!」


「さぁ、テメェのを貰うぜ……」


 そうしてすぐに狼の頭から力を吸収すれば、狼は魂が抜けたように絶命する。

 するとすぐに俺の身体に異変が起きる。

 頭がかち割れそうな痛みと同時に、俺の歯から、八重歯とは言い難い程の『牙』が生えた。要は特性『狼の牙』だな。

 勿論オンオフ切り替え可能だ。


「うわ……その牙マジかよ」


「あぁ……これで色んなもんを噛みちぎれるようになるぜ。後は、この狼の皮を剥げば金になるが……俺はまだまだ行くぜ。

 お前らもついてこい。次はてめぇらの協力が必要だ」


「なるほど、それが親父を殺す鍵になるわけか」


「あぁ、その通りだぁ。親父に会う頃にはもう人間じゃあ無くなってるかも知れねぇがな」


「分かった。じゃあ皮は俺が代わりに剥いでおこう。先に進もう」


「おうよ」


 このまま皮を持ち帰って依頼達成しても良いが、この辺り、周辺にいる全ての魔物の力を貰っても良いだろ。

 特に俺の場合は戦闘術なんざ学ぶ必要も、極める必要もねぇからな。下位階級と呼ばれる魔物を制覇したら即座に中位に挑戦しても良い。

 生態系も荒らしに荒らし回ってやるぜ。


 俺は次にゴブリンの野営地を見つける。

 ゴブリンも下位階級の魔物に分類される。まぁ、強いていえば中の下位だな。

 下位階級の魔物は戦闘技術はあるが、知能が動物的本能に従うだけで、攻撃的な反面策とかは一切ない。


 しかしゴブリンはその階級で唯一知能がある魔物と言える。馬鹿だけどな。

 でも今目の前にあるとおり、拠点を作ったり、肉を調理する知能はある。

 また戦闘時もそうだ。策と言えるほどでは無いが、様々なゴブリンごとの得意分野に部隊を編成する知能がある。


 だから、大抵の冒険者はゴブリンの部隊なんかに出くわしたら、高確率で全滅するらしい。まぁ、俺には関係ないがな。


「さて、あの野営地をぶっ壊すぞ。貰えるもんはぜんぶ貰え」


「それだけでいいのか? それなら俺ら以外でも出来るが……」


「まずはいう通りにしろ。てめえらが俺に逆らった所で何もできねぇだろ」


「……分かったよ」


 どうやら今は野営地には一匹もゴブリンはいない。なら今のうちに全部強奪しておく。

 俺とノマドとカルディアで野営地の物資や食料を全て奪った。

 そうして暫くすると、なんだか唖然とした表情のゴブリンが野営地に一匹帰ってきた。


「ギ……? ゲ!? ギャギャギャ!!」


「取り押さえろ」


「オーケー」


 俺は即座にゴブリンの方を振り向き突進。その勢いのまま飛び膝蹴りをゴブリンの顔面にかます。

 そして倒れた所をすぐにノマドとカルディアで両腕を地面に押しつけて起きないようにする。

 この程度でゴブリンは気絶なんてしない。略奪者として生きる分、生命力はその分備わっているからな。だから二人で取り押さえる必要があった。


「ギャーギャアアアァァ!!」


「クソッこいつ暴れんな!」


「もう十分だ。あらよっと」


 俺は取り押さえられているゴブリンの顔面に向かって思いっきりジャンプして踏み付ける。流石に拘束されている間の踏みつけ攻撃は、ゴブリンの頭を陥没させた。


「ボギャアッ!? ウゲ? グゲ……」


「さて、お前も頂くぜぇ……」


 俺はゴブリンの力を吸収した。……が、特に体の変化は感じられなかった。馬鹿だからか?と、思ったが……俺の視界に変化があった。

 手に入れた特性は『道具作成術Ⅰ』。周囲の砂や小石から作成可能な道具が完成図で視界に映し出されている。

 ゴブリンはいつもこんな世界を見ていたから、道具作成が出来ていたのだろうか。本当にこれがゴブリンの特性なのか?

 まるでテストの答え合わせを常に見ているような気分になるんだが……。馬鹿だから馬鹿なりの特性を生み出したって訳か。なんか複雑だな。


 それはそれとして、初めて盗んだものにⅠなんざ数字がつくようになったな? 何だこりゃ?


「よし、ゴブリンは始末した。ちっと今でもゴブリンに囲まれたら対処のしようがねえ。俺が集団に勝てる条件はあくまでも襲撃時だ。さっさと残りのもん奪って、ずらかるぞ」


「これで終わりか?」


「ひとまずはな。俺はこれでもまだ人間だ。疲れは感じるんだよ」


 こうして俺は、一度休憩がてら国へ、冒険者ギルドへ戻った。

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恥晒しで貴族追放された俺は、『掠奪』で見る物全部奪って報復する。 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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