第3話 これからの計画
ノマド、カルディア、俺の3人で国の地下牢を出て、すぐに町の人気の無い路地裏に集まる。
地下牢の看守はギフトを奪ったから、囚人が逃げたことも、何も気づかず思い出さずに終わるだろう。
ただ最も目立つのはカルディアとノマドの囚人服だ。
汚く汚れた布切れに、足枷を嵌められていた足首のあざは、少し考えれば直ぐに囚人だったことがバレちまう。
だからまずはこいつらの装備を新調する必要があるのだが、まずは自己紹介と行こう。
「さて、無事に逃げられたな。という訳で今、自己紹介をしておこう。
なんの計画も理由も分からない人間についていくなんて不安しかねえだろうからな。
何も知らねえくせに反発されちゃ困るんでね。
んじゃあ……俺は"元"アーロゲント公爵家のデュークってんだ。ちぃと訳ありで追放された身だ。
俺の最終目的は親父を殺すこと。ただ親父はめちゃくちゃ強えからな。そのためにこれから力をつけんだよ」
「親父を殺す? 面白えこと考えてんな。でも、その親殺しの計画に俺らはどこで必要なんだ?」
「てめぇらは俺が強くなるための駒だ。どこで必要かは着いてくりゃ分かるよ」
親父の剣聖は伊達じゃない強さを持っている。だからこの駒を上手く利用して、ギフトを兎に角奪いまくる。それだけだ。
とりあえず俺は魔物でも人間でも掠奪出来れば問題無い。
16歳の時のギフト開花時は、まだ覚醒に至っていなかった為、いくら掠奪しても体質まで変化することは無かった。
だが、俺はもう22歳だ。まだ試してはいないが、人間では無い固有の特徴を持つ動物をギフトで掠奪すれば何かが変わる筈だ。
「じゃあお前らも一応自己紹介しろ。雑魚は雑魚でも素性も分からねえ奴を連れ出したくは無えからな」
「じゃあ俺から。俺はノマド・アームズ。元々、闘士になろうとファイトクラブとかに行って思い思いに人をぶん殴っていたんだが、ある日『怪力』に目覚めてから全てが変わってしまった。
ファイトクラブで初めて人を殺してしまったんだ。軽くいつものようにぶん殴ったら、相手の頭が粉々に吹き飛んだ。
すぐに試合は中止され、武器や薬をやっていないかなど調査されたが。結果、単にギフトの力が招いたことだと判明すれば、俺はファイトクラブを出禁にされたんだ。
まぁ、怪力なんてもの手に入れれば夢だった闘士なったのも同然だがな。俺はそこで道を間違えたんだ。
ファイトクラブで殺した人間の様がいつまで経っても忘れられなかった。嫌な記憶ではなく、何故か胸が高鳴るせいで。
そこで俺は圧倒的な力に溺れ、強そうな人間がいたら片っ端に殴り殺していたって訳だ」
それはまた災難な。ギフトって必ずしも良いものでも無いんだよなぁ。
まさかそのせいで道を踏み外すパターンは初耳だが。
「妥当な判断だな。圧倒的な力を振りかざさすに生きていくなんて勿体無い。
安心しろ。これから俺の側にいれば、もっと殺せるぞ」
「うし、じゃあ次は俺だな! 俺はカルディア・ケッツァー。……。ただの殺戮者だ。なにが目的で殺し回ってたんだろうなぁ。済まねえが記憶が曖昧だ」
ギフトを奪えば精神力が弱い人間は、ギフト開花から覚醒までの記憶を全て消す。
ノマドは奪った時点で無気力には陥ることは無かったから何も無かったが、カルディアは記憶が消えているようだ。
それも一切靄なんてものは無く。それまでの記憶がきっちりと切り取られているようだ。
「よぉし分かった。お前らは犯罪者だが、これから更なる犯罪へと手を染めることになる。最後は公爵家の親父と弟の殺害にな。覚悟なんて既に出来てんだろ。なら早速始めるか!」
弟の殺害は追加事項だ。今考えた。親父だけじゃ物足りねえ。俺を生意気に負かしたアイツも放っては置けない。殺すべきだ。
さて、始めるのは良いがやはり町に溶け込むには、服が必要だ。奴隷って扱いも悪くはねえが、どうも性に合わない。
主人に仕えるだけで、何も自分の意見を言おうとしない、拒み続けるゴミクソ野郎なんざ俺の下僕には要らない。
せめて、俺の命令に人間的思考で従い、時には逆らってくれないと、俺が面白くない。
絶対服従なんて、要は命令しないと思い通りに動かねえってこったろ?
ふざけるな。俺はこいつらを教育するつもりはない。
だから服を買うべきだ。一般人に溶け込ませるんだ。
「さて、その前に一つやらなければならないことがある。服を買うぞ。一般人のな。
お前らがその服で外に出てもらっちゃあ、一発で囚人だとバレる。
という訳でお前らはここで待ってろ。金ならいくらでもある。家は追放されたが、手持ちが無い訳じゃあ無い。
……。待ってろとは言ったが、逃げるなんて真似したら、苦痛という苦痛を味わせながら殺す。じゃ」
「あいよー」
まずは服の購入、ついでに装備も買っておくか。簡単に死なれるのは普通に困る。新しく下僕を調達しにくる頃には、俺は既に追放者として知られ、地下牢に無断に入るなんてことは決してできないだろうからな。クソ面倒だ。
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