第3話 暴走族に絡まれました

車の中で、田岡は。


「まぁ、心配しなくていいですよ。偏差値が50ちょっとの学校なので、余裕で受かりますからね。後は、面接をがんばってくださいね。ムショの事などは、言わなくていいですから。」


「はい、わかりました。今、凄いドキドキしていますよ。こんな制服着て、とても嬉しくて。用意してくださって、ありがとうございます。」


車だと、30分程で学校に着いた。真新しい学校で、殆ど出来たばかりと言っていいほど綺麗な学校だった。校舎には、桜の紋章が掲げられていた。指定された教室に入ると、番号を見ながら自分の席に着いていた。周りをキョロキョロと見回していた、なにもかもが新鮮だった。受験票と筆記用具だけ机の上に出して、教師が来るのを待っていた。まぁ身長も高く美形でスタイルも良いので、注目されてるのは確かだったが。それでも、座ると普通よりも低めの座高だった。


教師が来てテスト用紙が配られて、試験が開始されていた。午後1時までかかって、5教科のテストが終わり。午後は面接なのでその場で、弁当を開いていた。小さな弁当箱には、色とりどりのおかずが入っていて嬉しかった。弁当を食べ終わると、水筒が入ってなかったので自販機までお茶を買いに行った。小さなパックで80円もしたので、ビックリしていた。

それでもお茶を買いお釣りを取ろうとすると、物凄い勢いで突き飛ばされていた。大柄な男子が、自販機で買いに来たのだった。


「すいません。邪魔しちゃいました。」


莉奈は、立ち上がり財布に釣り銭を入れようとしていると。


「お前みたいな、でかい女が一番嫌いなんだよ。」


自販機の前で男に殴られたが、受験なので辛抱してお辞儀をしていた。少し腫れた顔を、トイレに行ってハンカチを濡らして冷やしていた。そのまま元の教室に戻ると、席についてジッとしていた。


「おい 知ってるかよ。あの女、暴走族のヘッドに絡まれたみたいだぜ。」


「入学する前から、目付けられたのかよ。可哀想にな。」


「入学できても、3年間は地獄だな。」


まぁ、みんなの話しを聞いていて。あれが、今度1年のボスなのかと思った。まぁ、静香ほどのパンチの威力もなかったのは実感していた。午後3時頃やっと、莉奈の面接の番になっていた。


「えっと、後藤莉奈さんだったよね。本校を志望した理由は。」


「中学でクラブ活動をやってなかったので、バスケットが強いこの学校に入りクラブに入ろうと思って受験しました。」


「高校から、初めて。ここのクラブでついていけるのかな。」


「体力とか運動神経には、少し自信があるので。頑張って、みんなに着いていこうと思っています。」


「ところで、後藤さん。左の頬が腫れてるけど。まさか、受験日に喧嘩したんじゃないよね。」


「喧嘩などは、致しませんよ。受験勉強して、やっと受験できたのですから。こんな大事な時に、喧嘩などしてチャンスを失いたくないですから。」


「じゃ、誰かに殴られたのかな。」


「いえ、よそ見していて。柱にぶつかってしまいました。あまりにも、綺麗な学校と校舎だったので。」


「まぁ、合格したらクラブ活動頑張りなさいね。ところで、偏差値はいくつだったのかな。

そうですね。数回模擬試験をやりまして、偏差値は、60~65くらいでした。」


「それなら、もっと別の選択もできたんじゃないのかな。」


「知人に勧められまして、私もパンフレットを見て。この学校が良いと、志望しました。」


「受験勉強は、どれくらいしたのかな。」


「週に50時間くらいです。塾とか家庭教師はいなかったので、1人で勉強してました。」


「まぁ、後藤さんは長身で目立つからね。いつも、みんなの見本になるようにしないとね。」


「はい 見本になるかわかりませんが、自分なりに精一杯頑張ろうと思います。」


「じゃ、後は合否の通知を学校で待っててくださいね。担任に連絡を入れますので。」


「はい、ありがとうございました。失礼します。」


莉奈は、立ち上がり、3人の面接官にお辞儀をすると。ドアを開けて、振り向いて。再びお辞儀をして、部屋から出ていった。


「どうだ、あの娘は。」


「まぁ、目立つから殴られたんでしょうね。それでも、よく耐えて名前とかも言わないなんて。どっかのヤクザみたいですなぁー 」


学校から、駅まで20分だった。この辺りの地理には、詳しくはなかった。帰る受験生に駅までの、道を聞いてたどり着いていた。切符売り場で家までの切符を買うと、改札に向かっていた。またあの暴走族と言われてた男が、5人くらいで座って話しをしていた。まぁ関係ないのでそのまま、通り過ぎていた。


「おい 生意気な女、無視して通り過ぎてんなよ。」


「あ どうもすいません。ごきげんよう。」


再び、莉奈は歩き出し。改札を抜けて、ホームに歩いていた。5人もついてきていて、違う車両に乗り込んでいた。同じ方向なのかと、莉奈は思っていた。30分して、駅につくと電車から降りて。 改札を抜けると、田岡が書いてくれた地図を見て家を目指していた。まぁ家には裏口から出入りしろと言われていたので、裏口に向かった。裏の私有地には、大きなバスケットコートがあった。莉奈は、ビックリして目を擦っていた。


「おい お前っちは、ここなんだな。お前、俺の女になれよ。かわいがってやるぜ。」


「いえ、結構ですので。失礼しますね。」


「ってかさぁ、家の中で犯してもいいんだぜ。」


莉奈は1階の裏口を開けると、ドアから入り鍵を中から閉めていた。


ドンドンドン ドンドンドン  ドンドンドン


「おい 開けろや やってやっからよー 」


大きな音で、若い衆が3人程裏口に来た。若い衆は、ドアを開けると。


「おい 兄ちゃんたち、何をやってくれるのかな。」


もう、暴走族と極道である。適うはずはなかった。男達5人はボコボコにされると、事務所に入れられていた。


「なんだ、お前らお嬢様をつけてここまできたのか。バカだな。ここが、青龍会って知ってんのか。そのお嬢様だぞ。お嬢さん、こいつらになにかされましたか。」


「いいえ、なにもされてませんよ。大丈夫ですから。」


「本当ですか。左の頬が腫れてますけど。指でも、詰めさせますか。」


「いえ、まだ中学生なので許してあげてください。すいませんね。お手数をおかけして。」


「お前ら、お嬢さんに適うわけねえだろ。俺たちだって、怖いんだからな。」


「もう、そんな私を過大評価しないでくださいよ。喧嘩など、したことないですから。」


「まぁ、お嬢さんの回し蹴りで吹っ飛びますけどね。100キロの巨漢をふっ飛ばしたんですから。お前らも、2度とお嬢さんに手を出すんじゃねえぞ。出したら、殺すからな。」


「はい わかりました。許してください。」


「みんなも帰ってね。もし、一緒に入学できたら仲良くしてくださいね。」


莉奈は彼らにお辞儀をして、事務所から去るのを見送っていた。そのまま4階に上がり、龍司に試験の事を報告していた。


「なんだ、入試から喧嘩してきたのか。しょうがねえなぁ。」


「しませんよ、お父さん。入試ですよ。喧嘩バレたら、入学できないですから。ただ、因縁つけられて、蹴られて殴られただけですから。」


「なんか、お前が悪い事したのか。」


「水筒持っていかなかったので、お茶を販売機で買ってたら。ふっ飛ばされましたね。謝ったら、逆に殴られましたけど。家まで、付けてきましたよ。」


「それで、どうしたんだ。」


「私は、鍵をかけて。そのまま、放っておきましたけど。若い衆が出てって、ボコボコにしてました。どっかの暴走族のリーダーみたいですね。俺の女になれって言ってきましたから、丁寧に断りましたけど。そうそう、お父さん。裏にあるコート使って良いんですね。ありがとうございます。」


「ああ あんなのは、大したことはねえよ。ちゃんんと練習しろよ。」


「はい、着替えてランニング行ってきますね。今朝も走りましたよ。」


莉奈はニコニコしながら階段で5階まで上がると、着替えていた。財布を持って、ランニングに出かけていた。近くの小さなスポーツ用品店に寄ると、屋外用のエナメル合皮のモンテルのボールを購入していた。白・赤・青のカラフルなボールだった。家に帰ると、色々なドリブルで練習をしていた。今出来るようになったのは、レッグスルーだった。まぁスピードも大事だが、緩急が相手を翻弄すると書かれていた。仮想相手に、フロントチェンジ・ロールターン・レッグスルーをして、ゴールしていた。練習でも、ゴールは半分ほどしか決まらなかった。


試合となれば、それも半減するのはわかっていた。

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後藤莉奈は中1でムショに入りました 安田 沙織 @reina0304

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