第2話 新しい生活
5階に上がったからと言って、自分の部屋がわかるわけでは無いと思った。
しかし、ドアには【莉奈の部屋】と札がかかっていた。
莉奈はビックリしたのと同時に、嬉しい感情が込み上げてきた。
自分の部屋など、今まで持ったことがなかったのだから。
そして、可愛い札も気に入っていた。
恐る恐る、ドアノブに手を伸ばして部屋を覗き込んだ。
ビックリするくらい広い部屋だった。
10畳くらいだろうか、しかも一面は収納だった。
反対側には机が置かれていて、ふかふかのベッドも窓際に備えられていた。
掛け布団も枕も、ピンクだった。
部屋の隅に、先程買ってきた服が紙袋に入って置かれていた。
莉奈は、収納棚を開いて。
下着・Tシャツ・ブラウス・パジャマ・ジーンズ・スカートなどを全部収納していた。
そして、新品の下着とブラウスとスカートを着て4階まで降りていった。
龍司の前に正座すると、お辞儀をして。
「お父さん、ありがとうございます。あんな立派な部屋まで用意してくださって。感謝します。」
龍司はまさかお父さんと呼ばれるとは思っていなく、少し喜んでいた。
「莉奈が、よろこんでくれればいいからな。今日は、どんなものが食べたいのかな。」
「そうですね。お父さんが食べたいものでいいですよ。好き嫌いは、ないですから。ゲテモノは、嫌ですけどね。」
「じゃ、今日は莉奈の出所祝で寿司でも取るか。」
若い衆が、テーブルを並べ始めていた。
莉奈も手伝おうとしたが、龍司に止められた。
「莉奈は、俺たちの子供なんだからな。堂々としてなさい。ところで、彩は、元気だったか。」
「はい、お母さんにも。あっちでは、色々とお世話になりました。あの中で、一番尊敬してましたので。」
「そうか、最初はイジメられなかったか。」
「初日の最初だけでしたよ。私は、あちらの事は知らなかったので。色々と注意されましたけど。」
「まぁ、あいつは勝ち気だからな。彩に命も助けらたから、頭は上がらないけどな。ところで、高校は決まったのか。」
「えっと、なんて高校でしたか忘れました。田岡さんに勧められて、高校から遅れてバスケ部でも入ろうと思っています。バスケの教本も3冊ほど、差し入れしてもらいましたので。運動の時に、色々なテクニックとかやってました。」
「受験は、もうすぐなんだろ。勉強もいいけど、身体作りもしないといけないな。運動部に、入るんだったら。」
「そうですね。朝晩、ランニングはしようと思っています。受験勉強も長時間やっても疲れるので、どこかの空き地でバスケでも練習しますよ。」
「そうだな。ビルの裏に空き地があるから、そこを使うといいよ。私有地だから、誰も来ないしな。」
「はい お父さん、ありがとうございます。」
莉奈は、龍司と今日の話しなどをしていた。
アカスリに連れて行ってもらい、異常にアカが出て恥ずかしかったこととか。
ムショでの色々な出来事とかも、話していた。
「莉奈、話しでは。滅法喧嘩が強いみたいだけど、上には上がいるからな。お前は極道じゃないんだから、自分から仕掛けたらダメだからな。相手に、殴らせてからやったほうがいいな。」
「はい。お母さんにも言われました。それと、絶対凶器は持たないようにと。」
「彩が言うとはな。あいつは、日本刀で腕切っちまったからな。」
「その話し聞きましたよ。ええと、私がお父さん達のところに養女になることを承諾した時に聞かされました。」
「まぁ、みんな出所したら。アカスリとかしてから、ここに顔を出すからな。美容院とかも、行ってきたんだろ。」
「はい、いっぱいお洋服も買ってくださってありがとうございます。新品の下着とか、久しぶりですもの。」
「まぁ、髪の毛を染めたいとか。ピアスとか、あるかもしれないけどな。入学するまでは、禁止だからね。印象が悪くなるだろ。」
「はい。そうですね。」
「莉奈は、喧嘩とかしたことはあるのかな。」
「全くないです。あちらで、1回だけ。殴られそうになったので、回し蹴りを1発しただけですから。そんな、みんなが思うほど強くないですよ。」
「本当かな。強く無いやつが、100キロ以上の巨体をふっとばすのかな。見てみたかったけどな。」
「って、お父さん。莉奈のこと、全部知ってるんじゃないですか。話しして、損しちゃったわよ。」
「まぁ、彩が田岡経由で知らせてきてたからな。殆ど、知ってるよ。しかし、DNAってのは、恐ろしいもんだな。」
「もう、あっちで両親とも1回面会して。身元引受人になるっていったけど、断りました。一度、捨てられたので。そんな思いは、したくなかったから。」
「田中の嫁も一緒だったんだろ。」
「涼子さんですかね。一緒でした。もし、入学できたら。お母さんと涼子さんが一緒に来てくれるって言ってました。」
莉奈達は、届いた寿司を食べながら話しをしていた。
「ところで、受験日はいつなんだ。」
「えっと、確か明日だと思います。ギリギリだって、田岡さんに言われましたので。」
「それじゃ、中学の制服はどうするんだ。みんな制服着て、受験するんだからな。1人だけ、私服では行けないだろう。」
「そうなんですね。すっかり忘れてました。もう、間に合わないですから、仕方ないですよ。」
「莉奈は、元の中学からムショの近くの学校に転校になってるからな。まぁ、今日は仕方ないから。受験勉強して、早く寝なさい。」
莉奈は、龍司に挨拶すると部屋に戻っていた。
ノートを広げ、色々とまとめたことや。
今まで、間違えたところを重点的に勉強していた。
一方龍司はといえば田岡夫妻を呼んで、莉奈の制服を買いに行かせていた。
莉奈も、ムショの生活に慣れてしまっているのか。
9時には、眠くなってきたが。
今後の事を計画し、11時まで起きていた。
朝は5時に起床すると、ショートパンツとTシャツに着替えていた。
エレベーターで1階まで降りると、そのまま走り始めていた。
元々運動はできていたので、1時間汗を流すくらいは逆に快適だった。
戻ると着替えを持って、5階の浴室でシャワーを浴びていた。
髪の毛などを乾かして、着替えると。
龍司の洗濯物と自分のを洗濯機に入れて、回していた。
一旦部屋に戻ると、受験の準備を始めていた。
用意してくれてあったバッグに、文房具やノートを入れて。
戻って、洗濯物を取り出し乾かしていた。
もう、6時半だった。
慌てて4階に降りると、龍司はもう座っていた。
「お父さん、おはようございます。とても、よく眠れました。」
「早くしないと受験に遅れるぞ。朝食を一緒に食べよう。」
龍司と若い衆と一緒に、朝食を食べ始めた。
美味しい。
ムショの飯とは段違いだった。
味噌汁も、漬物・干物・目玉焼き・小鉢・サラダもあった。
「お父さん、こんなに食べたら太っちゃうわよ。でも、美味しすぎます。」
「久しぶりだろ。白米なんて、食べるのはな。弁当も、用意してあるから。持って行きないね。」
「はい ありがとうございます。遠足みたいですね。」
田岡が部屋に入ってきて莉奈に、制服を渡した。
「すいません。そこまでは、気が付かなくて。昨日の夜、あっちの学校の近所の店を叩き起こして用意しました。先程まで、妻がサイズなどを調整してたので遅くなりました。」
「幸雄、ありがとうな。雪にも、よろしく伝えておいてくれよな。ところで、なんて学校なんだ。」
「私立桜花学園ですね。ここから、駅まで10分で。電車で40分かかりますけど。ですから、毎日7時には出ないと間に合わないですね。今日は、送っていきますので。帰りは、どうしますか。」
「えっと、自分で電車で帰ってきますよ。行きだけで構いません。」
「これが、受験票ですから。かばんの中にしっかりと入れておいてくださいね。」
田岡から、受験票を手渡されていた。
もう7時になるので莉奈は、慌てて貰った制服を持って5階に上がっていた。
そのまま制服に着替えると、なんかワクワクしてきていた。
バックに受験票を入れて、昨日買ってもらった財布を持ち。
まぁ、財布には5000円くらいしか入っていなかったが。
4階に降りると、若い衆に弁当を手渡され。
「それでは、みなさん行ってきます。」
みんなに頭を下げてエレベーターで1階に降りると、田岡の車に乗り込んでいた。
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