さらさら
ぱちぱちと、線香花火が燃える。
「みんなでする線香花火、ノスタルジックじゃない?」
「どこが?」
「天司君ってつれない」
ふん、と口を尖らせた拍子に守屋さんの線香花火は落ちた。
「あーっ」
「そらみろ大声出すから」
「いまのはテンちゃんが悪いよ」
守屋さんはまだ名残惜しそうに、消えた線香花火の先をぷらぷら揺らしている。ぐわぐわぐわ。沈黙の間を埋めるようにカエルが鳴いた。
「……悪かった」
テンちゃんは残った線香花火を差し出す。テンちゃん……。
「束ごと!?」
「せめてバラしてあげよう?」
一気に責められたテンちゃんは決まり悪そうに、「それ全部やるから」と早口で言って耳の後ろを掻く。テンちゃんの癖。私は知っている。
「天司君て不器用だよねえ。そう言われない?」
「……」
「図星だあ」
ひとしきりからから笑って守屋さんは静かに次の花火を点けた。ぱちぱちぱち。火花が遠くまで散っていく。
「でも意外」
「なにが」
「高校の頃の天司君、いっつも怖い顔してたから。誰も近寄るな、って言ってるみたいだった」
テンちゃんが言葉に詰まるのがありありとわかった。
「ま、いまも無愛想ですけど? でももっと早く話してみればよかった」
「何だ、それ」
「えらく不器用で、すっごい無愛想。だけどやさしい人ね、って言ってるの」
ふっ、と。テンちゃんの線香花火が落ちることなく消える。テンちゃんはそれをただじっ、と見つめながら、「俺を買い被りすぎだ」と低い声で呟いた。
テンちゃん。私は、そうは思わないよ?
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