第5話

────もうじきパーティが始まるので、さすがに中庭には誰もいなかった。


 適当なベンチに二人で腰掛けて、俺はまずオフィーリアに謝罪をした。


「……ごめん。迷惑をかけて」


 ズッと鼻水をすすりながらで格好なんてつかないけれど。折角こんな綺麗な格好をしたオフィーリアが、俺のせいでパーティに参加できていない状況が申し訳なさ過ぎる。

 でも彼女は優しかった。


「良いのよ別に。こんな姿のあなたを放っておけないもの。……本当に、何があったの? 大丈夫?」


 オフィーリアの声音は、真剣に俺のことを心配していた。

 まあ当然と言えば当然だ。

 今まで俺は、彼女に意地悪で嫌味なことばかり言って、泣いている姿なんて見せたこともないのだから。


「……大丈夫だ。君に心配されるほど俺は弱くないから」


 ああごめん。

 こんな時まで俺は、そんな言い方しかできないみたいだ。



「オリバー」



 オフィーリアの声がさっきより少し低くなった。

 怒らせてしまったか?


 彼女の方を見ると、突然むぎゅっと両頬をつねられた。そして彼女は俺の頬を左右にぐいーっと引っ張りだした。


「まったくもう。こんな時まで意地悪言うのねこの口は!」

「……ひゃい?」


 

 頬を引っ張られたまま声を出したら、変な返事になってしまった。

 だがオフィーリアはそんなことは気にも止めずに、ぐいーぐいーっと何度も俺の頬を引っ張っては戻してを繰り返しながら話を続けてきた。


「あのねえ。あなたが弱いと思って心配するわけないでしょう? あなたが変で、いつもと違うから、心配してるのよ?」

「……?」

「あなたから意地悪言われるのなんて、何年前からだと思っているの? すでに耐性はばっちりついているし、今となってはあなたが言いたいことも分かるようになってきているわ。……さっきのはきっと、心配させてごめんとか、弱くてごめんとか、そういうことを言いたかったんでしょう? それなのにあなたときたら。あんな言い方じゃ、私以外の女の子は傷ついちゃうんだから」

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