オススメ! 目を貸す少女と魔法使いと伝承オタクの亡霊事件簿

目を貸す少女と魔法使いと伝承オタクの亡霊事件簿

作者 真名鶴 様


https://kakuyomu.jp/works/16817139556564037980



「評価の方法・基準」

ストーリー

A

5

登場人物

A

5

文章

A

5

何か一言


評価基準

ストーリーに関する事

A 下記項目のうち二つ以上に該当したものがあったとき。

引き込まれた。ワクワクした。面白かった。読み返したいと思った。予想をいい意味で裏切られた。起承転結がはっきりしており、物語にメリハリがあった。好き。引き込まれる冒頭だった。このラスト好き。この展開は好き。上手な伏線の回収だった。

B下記項目の内一つに該当したとき

最後まで読めた。ストーリーの方向性がはっきりしていた。題材、キャラクター、設定が物語に生きていた。



キャラクターに関する事

A

魅力的なキャラクターだった。セリフのみで誰のセリフかが分かった。掛け合いが魅力的だった。キャラクターの行動に強い共感や憧れを持った。魅力的なセリフがあった。セリフ回しがカッコイイ。このキャラクター好き。推せる。

誰が何を言っているのかが分かった。キャラクターの容姿や動きをイメージできた。キャラクターの心情を理解できた。



文章

A

文体が魅力的である。文章のリズムがイイ。読みやすい。個性が感じられる。過不足なく描写ができている。風景・情景・心理の三つの描写を的確に使い分けている。世界観に浸れる地の文である。この文章好き。

ストーリーと文体が一致している。誰が何をしたかが分かる。主人公の目標、目的が分かる。


 さて、どうしたものか。読み返せば読み返すほど全てが伏線に見えてくるほど完成度が高いです。



注意

ここから先はネタバレを含みます。

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ストーリーについて。

 ここで告白します。3周目を読み始めた時、私は自殺だと思い込んで読んでいました。結末を知っているのに。晴季達が他殺の線で紐解こうとしているのに。それほどまでにプロローグでのミスリードと叙述トリックが秀逸なのです。改めてプロローグを読み返すとどこにも人が落ちたという地の文はありません。それでも脳内に浮かぶ映像では人が落ちているのです。それに3周する間ずっと引っ張られていました。何故か自分から人柱になったと思い込んでいたのです。本当に謎です。人の記憶というのは当てにならないものです。

 

 さて、ずっと気になっていたところを。

スミヨシの能楽語り

 何故、能楽や民間伝承に照らし合わせて推理していくのか。読み解けば理由も意味もスミヨシだからのパワーワードで分かります。晴季もいつもの事だからと流していますが、ほんの少しでいいので理由が欲しいのです。いっその事ブラフでもいいので! 亡霊がいて魔法使いがいる世界観において能楽はどこまで怨霊慰撫の力を持っているのか。それとも怨霊を分類し類型化したものを伝承するためのものなのか。はたまた、普通の能楽なのか。どこか作中でポロッと書かれていると読者の解像度が上がります。

 いや、そもそも照らし合わせていない? スミヨシからしたら、なんか能楽に似てるなぁ。程度の認識だったりします? これも引っ張られてます。


 引っ張られていないと信じたうえで何故、語るのかが、最初にあってもいいかなと思いました。目的もなく新たな知見を得るのは中々に負荷が大きかったと記憶しているもので。

 記憶違いなら申し訳ないのですが、前はもっとスミヨシの伝承の語りがハードだったように思います。なんか情報量が減りマイルドになった感じがします。

 

 晴季の助言で車を昼間に戻した事にスミヨシが気づく所でもっとカタルシスが欲しいなと思いました。

 読んでいて謎の一つが解けたにも関わらず、サラリと読み進めてしまったので勿体無いなと。

 さらりと読み進めてしまった理由を考えてみます。色々な要素が複雑に絡み合った船橋ですが、原因の一つがそこかなと考えます。主題となる謎がぼやけてしまっています。学校の授業を思い出していただくと分かりやすいかもしれません。先生が出す問題や指示が曖昧だと我々生徒は何をしていいか分からなくなる事があります。それに近い事が起こっているように感じました。


 船橋の主題となる謎は何か

 ・自殺か他殺か

 ・蛇は誰だ

 ・亡霊、雑霊はどこにいった

 ・人か鬼か。

 ・動機はなんだ

 ・何故死因は後頭部の打撲なのか溺死ではないのか

 途中から追加される謎

 ・何故恋人に憑いているのか

 ・誰が遺書に細工したのか

 ・細工の動機は何か。

 ・鞄の中身は何か。


 ミステリなので残念なことに探偵役が自殺に疑問を持った瞬間、メタ的な思考ではありますが、他殺と答えが出てしまいます。最初の時点で他殺となっているため主題としては少し足りないです。

 いや、違う。違うぞ。私は自殺と疑わなかったぞ?! 3周もしたのに! ミスリードされたまま読み進めたので謎を謎と気付かなかっただけだ。

 もしかすると私はずっと何故スミヨシは能楽から考察するのかを考えていたのかもしれない。ということにしておきます。

 複雑に絡み合った謎も間違い無く、亡霊事件簿の魅力の一つです。だからこそ、一つ一つの謎がぼやけて読者に推理させる力が弱まるのが勿体無いなと思います。

 さて、秀逸な叙述トリックですが、ここはもっと生かしてもいいと思います。具体的には他殺の線が浮かび上がるのをもう少し後に持ってこれないかなと。

 2話で実は自殺ではないと叙述トリックの種明かしをするよりも、まず読者と共にトリックに引っかかり物語を進めていた方が、読者はより、のめり込んで登場人物と共感しながら考察や謎解きができるかなと思います。スミヨシが他殺の線に気づかないというのもまた、スミヨシへの解釈違いが生まれてあばばしてしまうのですが……。それでも天鼓でスミヨシと同じ疑問を持ち、スミヨシと一緒にたくさん考えたのが凄く楽しかったのです。なので、船橋からできないかなという読者の我儘です。



 サッカーボールがぶつかる回想シーンと朝食のシーンの繋がりが弱いと感じました。1回目に読んだ時に僅かに引っかかりを覚えました。ただ、2回目以降に読んだときは引っかからなかったので、大きな引っかかりではないと思います。


 1話ごとの終わりが緩やかなフェードアウトのようで余韻があって綺麗でした。


キャラクターについて

 まだまだ、秘められた情報(スミヨシの過去とか)があるのでここで述べるのはやめておきます。


文章について

 何を食べたらこんなにも素敵な文章を書けるようになるのでしょうか。



 物語がさらに面白くなる事を願って、つらつら書かせていただきました。私が上で書いたことは書きたい物語にそぐわない可能性があります。その時はバッサリ要らない意見は切り捨ててください。意見の取捨選択の権利は作者様にしかありませんので。


 企画への参加と素敵な物語をありがとうございました。

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