第4話...危機的状況

 死体が旅館にあると考えると、少し寝りずらい。

 小さな頃から俺はこんな時、雰囲気が暗い時にやっていることがある。

 ____怖い話。

 コレは幼少期、悠花にして何度も怒られたが、未来には良いだろう。



「知っているか?」

「な、何です?」

「俺がどうしてこの旅館を選んだのか」

「......」

「どうした?」

「い、いえ、悪寒が......」



 まさか、気付いか?ある訳が無い。



「で、どうしたんです?」

「理由だよ、理由」

「......幽霊?」

「そう、ここには座敷童子が出ると言われている。ま、そんだけ」



 俺は即座に部屋を出て、お通夜雰囲気の叔父さん親戚の中、隠れて日本酒を買いにいっていた。

 酒でもなければ辛かった。

 チョビョビと飲むが一番お気に入り何だが、一人で飲むのも辛いと思って未来を誘おうとした......でも、姿が幼いから断念した。



「やっぱり、良いか」



 一人だと酒も飲む気になれず、布団に入る。すると暗い部屋に誰かが入って来た。

 寝たフリをしていると布団に侵入、そのまま背中を叩かれる。



「痛っ」

「むむむー」

「いや〜まさか怖い話が苦手だとはなぁ」

「分かってたよね?」



 敬語は?まぁ、良いか。敬語で話し合う距離感でもないよな。



「何ノ事カナー?」



 微笑む。そう、俺は解っていた。

 死体を直視しない、俺のスマホの待ち受けを見た時、未来は眼を逸らした。

 全ては計画されていた!全ては計画通りよ。



「やっぱり、二人は仲良しですね」

「っ!」



 咄嗟に立ち上がり、布団で未来を包んで背後に移動させる。後で怒られそうだが、流石に今の状況は危険だ。

 願い少女の噂を聞き付けて来たか?ブラフでも、貼っとくのが上々。



「私の願いを、叶えてくれますか?」

「願い?何を言うかと思えば、俺達カップルが金持ちに見えるのかい?」

「願い少女なんですよね?此方の有意義な情報を差し上げます」



 此処で間を開ければ正体がバレる、なら即答か頭にハテナマークを描くのか選択肢、この世には、その選択肢を選ばない奴もいるが。



「貴方の願いを叶えましょう」

「おいおい、そろそろヤバいぞ」

「こんな小さな子供の願いなら、叶えられるよね?私か君が」

「そうだが......」

「じゃあ私のパパを、ヒーローにしてあげて」



 ......金、コレって結構願いを叶えられるものだと思ってた。

 ヒーローと書いて英雄、逆も然り。そんな中途半端で抽象的なものを叶えられる訳がない。

 願い少女の願いの効力は図り知れないが、ヒーロー何て底知れぬ夢だぞ?天井知らずの夢だ。



「未来、パス」

「えー......抽象的、神になりたいとかも、大丈夫かな」

「そうそう、叶えるんだなら先に情報」

「二人とも、銃もった人に追われてます。多分、半グレ。依頼者本人を見つけるか、半グレ集団を倒さないと、絶対多分両方死します」



 本当なら、先ずこの街から離れなければならない。

 もしもの予想、願いの大きさで未来の身体の身体機能が落ちるとしたら?コレは先ずない。断言出来る。

 矢張り定説のカウント数に応じて身体が衰え、死に至る。



 年齢が老化する訳じゃない、逆に歳を取りにくくなっている。内側だけ、内部が衰えている。

 細胞分裂の数を決めるロール、それを消費しているのかは分からない。内部はカウントがゼロになる前に、80代を超え、死ぬ。



「OK、"未来願って"どうぞ」



 ぶっちゃけ、俺の願いを叶える気が無くなってきたな。

 俺も此奴と一緒で、願いを叶える事に気を張っている気がする。終わったら、プツリと切れてしまいそうだ。



「願ったよ。今後どうする?」

「少し、鬼が多いが......緑色の少女はどうする?」

「着いて行って良いんですか?」

「情報知ってるからには、要警戒だろ」

「どうしたの?」

「今日は此処でゆったり、夜を過ごす。一番厄介なのは病人、それとその辺の奴らだ。生きることに、生かすことに全力だからな」

「そうだね」

「娘よ、運動は得意か?」

悠来はるき!バッチリ、体力もありますし、そこんとこは任せておいて下さい__」

「「ん?今、何て?」」



 俺の身体能力は学生時代、良い方だ?そうだっけ、忘れた。

 良い方だろ......それに、あの技術を身体が覚えていてくれれば、逃げる可能性が上がる。



「じゃあ......」

「桜井」

「桜井さん、このギター引いて見てよ」

「下手でも良いら見たいな」

「え?なら少しだけ」



 弾き語り、適当に頭に入って来た方法とメロディを奏でる。

 過去、何故だろう?思い出せない。凄く、詰まらなかった事だけを、覚えている。



「上手」

「プロみたいでしたよ!」

「そうか......」



 何だ?俺は、何で電車に乗っていたんだ?悠花を探す?そして、一番疑問なのが、俺は俺自身の心配をしてない!

 薄らいだ記憶を、思い出す必要がある。



「今日は、もう寝よう。朝は早い」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る