第236話 魔力の特徴

 その後も治療に追われてやっと負傷者の治療を終えた。


 基本的には魔力不安定症の人を中心に担当し、軽い怪我は魔法師団所属の治療部隊が担当してくれた。


 初めて目の前で医療スキルではない"光属性魔法"というものを見たが、傷が逆再生するように治っていくのをみて改めて根本的に別のスキルなんだと実感した。


 ただ、魔力の消費量が多いのが欠点のようで骨折や内臓損傷に関しては一人に対して数回しか使用できないようだ。


 いい営業先だと思い魔法師団に魔力蜜を配り、魔力が回復するのを実際に体験してもらった。


 マルヴェインとセヴィオンも利用している異世界食堂を宣伝すると少しは知っている人もいた。


 これで同時にトラッセン街の経済も少しずつ潤うのだろう。


「これって同じやつに見えるか?」


「私も今回のははっきり見えます」


「オラは色濃く見えるぐらいかな?」


 俺達が今見ているのはセヴィオンから出てきた魔力の塊だ。


 他の物とは異なり俺達がはっきり見えるほど魔力が大きくなっている。


 違いは単純に魔力を多く持った人から吸収したかどうかだろう。


 現にセヴィオンはこの国の中で上位に当たるほどの魔力を持っている。


 そんな中休憩している俺達の元へハワードとカタリーナがやってきた。


「今回は助かったの……なぜそれを持っておるのじゃ?」


 カタリーナが見ていたのは俺が持っている瓶だった。


「カタリーナさんとハワードさんはこれが見えるんですか?」


 二人は頷いていたが、どうやらカタリーナの反応からしてこの正体を知っているらしい。


「これってなんですか?」


「何ってそれこそが魔力じゃぞ?」


 カタリーナは瓶の中に入っているものを魔力だと言っていた。


 それならなぜこいつは元からある魔力を食い尽くそうとしているのだろうか。


「実はこいつが魔力不安定症の原因なんです」


「どういうことだ?」


「この魔力が元からある魔力を食い尽くそうとすることで発症するんだ」


 二人は考え込むとある答えに行き着いた。


「魔力の器が異なるからか?」


「たぶんそうなのじゃ」


「どういうことですか?」


 俺には全く検討がつかなかった。


 そもそも魔力について知っている知識は魔素を吸収して魔力になることと、体で蓄えると少しずつ魔力の器が変化して魔力量が増える。


「簡単なことじゃ。全く異なる相反する魔力が体の中で存在していたらどうじゃ?」


「魔力が喧嘩する?」


 単純に魔力の共存が難しいと思ったのだ。


「そうだな。じゃあ、魔力の器と魔力が反する場合はどうなる?」


 ああ、そういうことか!


 魔力の器は決まった魔力しか蓄えることができないため、違う魔力が体に入ることで発症するのだ。


 魔力不安定症で最終的に命を落としてしまうのは、元々あった魔力を全て食い尽くし、魔力の器も食べてしまうのだろう。


 この世界で魔力を持っていない人は存在しないからな。


「これがちゃんと証明されたらお前達有名人になれるな」


「冒険者から学者が出てくる日が来るとは恐ろしい時代じゃ」


 そう言ってハワードとカタリーナは笑いながらテントを去って行った。

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