第237話 キメラ
その日は負傷者も多いことからもう一日待機してから帰ることになった。
破滅のトラッセンから前線の話を聞くとほぼ各班のリーダー達が圧倒していたと言っていた。
王族二人が怪我をしたのも部下を庇ってできた傷らしい。
「それでハワードさんがすごいんですよ」
「さっきからハワードさんの話しかしてないですね」
「私はハワードさんの弟子になりましたかね」
どうやらリチアはハワードの弟子になったらしい。
ハワードはいくつも使える魔法の中で基本の四種類の魔法を巧みに使う魔法使いらしい。
見た目はガタイが良いおっさんなのにな……。
「俺はお前を弟子にしたつもりはないぞー!」
遠くでカタリーナと話していたハワードはなぜか聞こえていたのかリチアの弟子入りを否定していた。
「ああやって言ってますが、実は飛び上がるほど嬉しいはずですよ」
「おい、お前何言ってるんだ!」
「ほらほら」
どうやらすでに良い関係を作っているらしい。
そんな何気ない日常に幸せを感じた。
無事に魔物の討伐も終わり、誰一人亡くなっていないことに俺は一安心した。
この日は子ども達や前線で戦っていた人達もゆっくり休むことができた。
♢
「あのキメラはさっきの魔力と関係ありそうだな」
「強制進化の首輪にあのような能力があるとは想定もしていなかったのじゃ」
魔物達が北へ逃げたのを追いかけた先は今まで見てきたどの戦場よりも残酷だった。
謎の物体に近づくとニヤリと笑い自ら捕食されていた。
元から捕食されるために生まれてきたかのように俺は感じた。
そこからは謎の物体が様々なスキルを使い、俺達Sランク冒険者二名と同等の力持つ王族の二人が相手してやっと討伐できたぐらいだ。
途中からは他の者達では邪魔になってしまうため、先に離脱して気にする者がいなくなったらやっと討伐できた。
それにしても俺の他の三人も改めて実力者だと実感した。
特にこの目の前にいる幼女は最上位の魔法を同時に発動した時は驚いた。
魔法都市の王族である俺が天変地異が起きたと思うほどだ。
「ハワード殿聞いておるのか?」
「あっ、すまない」
カタリーナは何か話していたようだ。
「魔力を使い過ぎて疲れているのじゃな」
「ああ、多分そうかもしれない」
確かにカタリーナが言っていることは間違いではない。
久しぶりに魔力が空になりそうになるまで魔法を使ったのだ。
「今日は子ども達に感謝じゃな。あやつらがいないとこの中にいる半数は助からなかったじゃろう」
「外れスキルが外れと言われなくなる時代が来たってことだな。ははは、将来が楽しみだ」
俺は改めて彼らの可能性を強く感じた。
俺の姪っ子であるあいつの助けになるだろうと……。
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