第173話 新しい仲間
数日後、俺達は商業ギルドにお金を払い、家の鍵と交換してもらった。
その時もギルドマスターはいつもよりニヤニヤしており、あまりの気持ち悪さにアリミアがラルフの後ろに隠れるほどだった。
ちなみラルフは妹がいたため面倒見が良く、アリミアはすぐにラルフに懐いていた。
最近は俺よりラルフといることが多くて寂しいぐらいだ。
そういえばアリミアはラルフのことを以前から知っていたような素振りを感じた。
「じゃあ、これから冒険者ギルドで会いましょう」
「そうだな! こっちこそ今までありがとう」
俺とラルフはマルクスと握手をして別れを告げた。
なぜかマルクスさんは別れなのにニヤニヤとしていた。
マルクスもロニー達と予定を合わせ、カレンと住む場所を決めたそうだ。
宿屋のお金は数日分先払いしていたため、泊まっていない分はお金は返してもらうことになった。
♢
俺達は新しい家の前に立っている。そこにはシルの姿もあった。
シルとは異世界食堂の屋敷にいたシルキーのことだ。
色々便利なことから、某スマホ機能の名前を取り契約後の名前を正しくはsiruと呼んでいる。
シルを家に呼んだのは今日全ての家具が届くことになっており、シルの力を使って運んでもらおうとしていた。
契約をしていないときは異世界食堂から出ることができなかったが、契約すると俺に取り憑くらしい。
うん……内心契約もしたくなかったし聞いた瞬間鳥肌が止まらなかった。
「これから新しい生活だね」
「私もお兄ちゃん達と一緒に住めて楽しみ」
「そういえばスライムの名前は決めたの?」
「んー、ポヨーンかプヨ吉にしようかと思うけどどっちがいい?」
「……」
ラルフは黙ってしまった。我ながら良い名前だと思っていたがこの反応からしてネーミングセンスがないと思われたのだろう。
「まぁ、スライムが喜んでくれるなら良いんじゃないのかな?」
ビー助の時は本人が喜んでいたから特に感じなかったが……。
「貴方達そろそろ荷物が来るから、自分の部屋を掃除しておいてね」
部屋の数は1階にトイレ、浴室、台所、居間と二部屋あり、2階には四部屋あった。そのうち一つずつはお客さんが来た時ように空けていた。
また、浴室がある家のため前住んでいた人はお金持ちの人だったのだろうか。
ただあまり治安が良くない孤児院や冒険者ギルドの近くに家を建てたのかは気になった。
「オラとケントが隣同士か」
「まぁ、アリミアは女の子だから少し離したんだろうね」
アリミアは廊下を挟んだ向こう側の部屋を使い、一番広い部屋は客人用にしていた。
「みんな家具が来たわよ」
アニーに呼ばれ行くと運送業者が来ていた。
しかし、俺が思っているような前世のような引っ越し業者の人はおらず、一人だけ若い男の人が立っていた。
「各場所に置きに行きますので、この用紙に書いてある商品毎に場所を指示してください」
前世と違うのはこの世界にはスキルがあり家具はスキルで収納されている。
それならシルキーを使役しなくてもよかった……。
そう思った瞬間に背筋がどこか涼しくなった。
俺は運送業者に家具の置くところを伝えた。
「えーっ、このベットと机は……」
「それはこっちです」
俺が買ったのはベットと机と椅子のセットのみだった。あとは勉強用に作った資料を保管する棚ぐらいだ。
「では、ここに置いてください」
次に男の人はラルフの部屋に行った。
「シル細かい調整は頼んでもいい?」
「いいわよ」
思ったよりも運送業者の置き方は適当だった。
シルの浮遊させる力を使い、家具を持ち上げて細かい修正とベットにシーツを引けば俺の部屋は完成だ。
「次はラルフの部屋を手伝ってきてもらっていいかな?」
「部屋の掃除と準備は任せて」
シルはスルスルとラルフの部屋に向かって行った。
「じゃあ、次はスライムの名前か……」
俺はスライムがいるトイレに行くと待っていたのか扉の前で待機していた。
「あれ、なんかこの前より大きくないか?」
スライムは以前よりも大きさが増していた。
「ケントは知らないようじゃな。こいつはスライムだけどその中でも上位種じゃぞ? その証拠に頭に王冠が乗っておるじゃろ?」
たしかにコロポが言う通りスライムの頭の上には小さな王冠が乗っていた。
「スライムは基本的に王冠が乗っているんじゃないのか?」
「そんなわけないのじゃ。基本的にスライムは一定の数にならないと進化しないのじゃ」
ここ数日スライムは仲間を集めて自身に取り込んでいたため、以前より体が大きくなっているらしい。
「じゃあ、君に名前をつけるんだけどポヨーンかプヨ吉どっちがいい?」
俺の言葉を聞いたスライムからはちょろちょろと水が流れていた。
あまり嬉しくないようだ。結構良い名前だと思ったんだけどな……。
「なら、キンポヨはどう?」
若干どこかのアイドルグループみたいな名前と似ている気がするが、単純に王冠が付いているポヨポヨした魔物って意味で単純につけていた。
しかしスライムは嬉しいのか、さっきまで少しだけ出していた水は勢いよく噴射されていた。
「じゃあ君は今日からキンポヨね! これからよろしく」
俺は新しい仲間を手に入れた。
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