第150話 料理の外れスキル
エイマーは次の日早速商業ギルドへ行き、生誕祭のみ行う食事処の申請をした。生誕祭の期間は三日間あり、その全てである三日間営業する予定だ。
そして、俺は今日もラルフとともに孤児院に来ていた。
「ラルフはうちで食べたご飯で気に入ってる物ってある?」
「んー、オラが好きなのはハンバーグとカレーが好きかな」
ハンバーグはオークの肉を代用して作り、カレーはとろみが出ないため、スープカレーのようなものにパンを付けて食べるナンカレーもどきを家では出していた。
オークの肉が味としては豚肉と牛肉の間のため牛と豚の合い挽きに似ている。
そもそも動物よりは売れにくいため材料費がかかりにくい。
「ラルフって結構子どもぽいものが好きなんだね」
「そうか? そうなるとオラよりマルクスさんの方が好きそうだけどね」
マルクスはラルフよりもケント飯を好んでいるため、宿屋に泊まっている今も時折ケントに作ってくれと頼むぐらいだった。
その度に憩いの宿屋のキッチンを借りている。
「たしかにそうかもね。そもそも冒険者達に受けがいいのは何でだろうな?」
「あー、オラも思った。破滅のトラッセンの人達も、未だにケントをパーティーに誘ってくるもんな」
リチアのケント勧誘は定期的にあり、その度に何か甘いものを渡して帰らせている。
むしろ最近は甘いもの目当てに勧誘しに来てる感は否めないが……。
「なら食べ物はハンバーグとカレーを中心にやって、甘いものをどうするかだね」
「せっかく魔力蜜があるんだから、魔力蜜を使ったやつがいいんじゃない?」
「なら魔力蜜を練りこんだクッキーとパンケーキとかかな?」
魔力蜜をブームにすれば国民全体の魔力増大も期待できる。
「あの二つなら間違いないね」
「じゃあ材料を買ってきて食べてもらおうか」
生誕祭で提供する食事は大まかにハンバーグとカレー、デザートをクッキーとパンケーキにした。
クッキーは作り置きが出来るため、この時まではそんなに忙しくなることはないだろうと想定していた。
♢
俺は材料を王都内で購入し、スキル【シェフ】【パティシエ】【料理人】持ちの十二人を食堂の厨房に集めた。
それにしても砂糖は高価のため思ったよりも値が張ってしまった。
「これでみんな集まったかな?」
子ども達は何のために集まったのかは教えてないが、俺の後ろにある材料を見てざわざわとしていた。
外れスキルの子達には勉強を教えているが、この子達には何もしていなかった。
単純にやっと自分達も遊んでもらえると思っているのだろう。
「みんな静かに! 今度行われる生誕祭でみんなのスキルを活用して食事処をやろうと思います」
俺の話を聞き喜ぶ子もいれば、首を傾ける子もいた。食事処は流石にわかるよな……?
「ケント兄さんいいですか?」
手を挙げたのは俺より一つ下の年で、来年から王都にある食堂で修行をする少年だった。
「俺のスキルは料理人だが、他の子達は外れスキルですよね?」
少年の一言でスキル【シェフ】と【パティシエ】の子達はさっきまでの楽しみにしていたが、足元をみて落ち込んでいた。
「えーっと、名前は……ロンくんだったかな?」
彼はウルとラルが依頼に出かけるようになってから、立派に孤児院をまとめるお兄ちゃん的な存在だ。
「まずは【シェフ】と【パティシエ】は外れスキルじゃないぞ。シェフに関してはスキルは発動してるでしょ?」
俺の話にスキル【シェフ】の三人は驚いていた。
きっと以前ラルフが書いた紙をエイマーは子ども達に伝えてなかったのだろう。
子ども達の反応を見て俺は彼らにも知る権利があると思いスキルを伝えることにした。
「シェフは主に料理人をまとめるリーダーみたいなもので、パティシエは主にデザートを作る人達のことを言うんだ。だからここにいるみんなは外れスキルでもないし、料理人としての仲間だからな」
子ども達の中では喜ぶ子や泣いている子もいる。そんな様子をロンは眺めていた。
「それでロンくんに頼みがある」
「なんですか?」
「生誕祭では君を中心で回して欲しい。エイマーさんの話ではここで料理係としてみんなの食事を作っていたんだよね?」
基本的にはエイマー達スタッフとスキル【料理人】持ちのロン達が中心として食事の準備をしていた。
「そうです」
「まだ調理がわからない子達もいるから任せてもいいかな? 作るものに関しては提案があるからそのメニューを教えるね」
「わかりました。よろしくお願いします」
俺がロンにメニューを教えて、ロンが中心となって孤児院の子ども達に調理方法を教えることになった。
──────────
【あとがき】
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