第132話 我は寂しくないんだからね

 ハニービーは女王蜂に付いて行ってるその間は話しをしながら待っていた。


「それにしても妖精って物知りだな」


「そうですよね。魔法使いのリチアさんも知らないことを知ってるのでやっぱり魔力に関しては妖精に……」


 胸ポケットにいるコロポを見るとまだ彼はいじけていた。


「ははは、コロポがいじけてるか。こいつも妖精だもんな」


 ひっそりと生活しているコロポは俺に知識を与えることはない。


 ただ、時折出てくるときに魔道具や呪いシリーズなど発言からして知識はありそうだった。


 しばらく待っているとハニービーは首輪を持って帰ってきた。女王蜂はそこから少し離れて間隔をあけて飛んでいた。


「首輪あったー?」


 遠くから確認するとハニービーは頷いていた。


「あれは確かに強制進化の首輪で間違いないよ」


 ラルフもスキルを発動させて確認したが、強制進化の首輪に間違いないらしい。


「おかえり」


 ハニービーを撫でると嬉しそうに首輪を俺に渡してきた。それをすぐに異次元医療鞄に入れると、女王蜂は感じていた魔力が急に消えたことに驚いていた。


「お主何をしたんだ?」


「えっ? ここに入っているよ?」


 俺は再び異次元医療鞄から首輪を取り出した。


「ここで出すんではなーい!」


 女王蜂は物凄い勢いで、遠くへ飛んで行ってしまった。


「はやく片付けてくれ」


 遠くから叫ぶ女王蜂に慌てて異次元医療鞄に片付けた。


「はぁはぁ。いじめかい? 我をいじめて楽しいのかい?」


 女王蜂はお尻の針を向けて俺に怒っている。本当にこの首輪の魔力を受け付けないのだろうか。人間の魔力の集まりであれば俺達は人間の魔力の集まりでもある。


「おい、我を無視するのか?」


 考え事をしていると女王蜂は俺の目の前にお尻に向けてきた。流石にこれは危なすぎる。


「うおぉぉ!? ごめん! このまま預かっていくから許して!」


 謝ると嬉しそうに女王蜂も針を戻した。どこか妖精特有なのかコロポと似ていた。


「今回は許してやろう。さぁ、はやく帰るんだ」


「あー、中々口が悪い妖精だったな」


「人間と関わりたくなかったんだろうな」


 俺達は追い出されるようにハニー王国から帰ろうとした。破滅のトラッセンを他のみんながハニー王国を出たあと俺は振り返った。


「ハニーの女王さん迷惑かけてすみませんでした」


「ふん、誰もお主に迷惑をかけてないから謝るんではない」


「あはは、そうですよね。じゃあハニービーもまたね!」


 俺はハニー王国から出ようとすると、ハニービーは俺の頭の上に戻ってきた。


「一緒に来るの?」


 質問に答えるかのようにハニービーは大きく頭を振っていた。


「じゃあハニービーも連れて行きますね」


 一歩踏み出そうとすると、今度は女王蜂に止められた。


「お主少し待つのだ」


「何かありましたか?」


「我もしょうがないから友達になってやろうじゃないか」


 急な話に俺は混乱していた。


「えっ? 友達?」

 

「そんなに我と友達になりたくないのか? ハニービーやコロポックルと友達になってなんで我はダメなんだ……」


 女王蜂はぷるぷると体が震えている。やはり女性蜂はどこかコロポと似ていた。


「友達になります! ぜひ、なってください」


「本当か? 我と友達になってくれるんか?」


「ええ、よろしくお願いします」


 あまりにも可哀想に見えたためすぐに女王蜂と友達になることにした。


「我との交流の証にこれをやろう」


 女王蜂がハニカム構造になっている近くの部屋から液体を持って来た。


「魔力蜜ですか?」


「これは王国魔力蜜なのだよ。何か入れ物はあるか?」


 王国魔力蜜とは魔力蜜より濃度が高く、魔力量も多いらしい。いわゆるロイヤルゼリーに近い物なんだろう。


 俺は異次元医療鞄から樽を取り出した。


「これしかないです」


「仕方ないやつだな」


 女王蜂は何度か往復すると、樽に溢れそうなぐらい王国魔力蜜を入れてくれた。


「こんなに良いんですか?」


「また何かあったら……なくても来てくれていいんだからね?」


 女王蜂は威厳があるように見せて、実は甘えたのツンデレ属性を持っていた。


「わかりました! こいつが道も知ってると思うのでまた来ますね」


「待っておるからな」


 ハニー王国から出ると気づいた時には木の根元に立っていた。


「大丈夫だったか?」


 出た瞬間マルクスが俺の肩を掴んだ。


「大丈夫です。お待たせしてすみません」


「中で何かあったんか?」


「あっ、ハニーの女王……」


 女王蜂とのことを言おうと思ったが咄嗟に顔が浮かび言うのをやめた。


 わざわざ一人になったタイミングで声をかけてきた彼女の意思を尊重することにした。


「ハニーの女王がどうしたんだ?」


「お土産に魔力蜜を貰ったんです。また帰りも美味しいご飯作りますね」


「おー、さすがケントくん! これで帰りも楽しみだね」


 リチアは相変わらず俺の料理に魅了されているようだ。


「じゃあ、トラッセン街に戻りましょうか」


「ああ、そうだな。これで依頼は達成だ!」


「うぉっしゃー!」


「お疲れ様でした」


 俺達は偵察だけの依頼を回収まで済ませて完全に魔物の暴走を止めることができた。

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