第129話 森の探索

 次の日俺達は破滅のトラッセンとともに森の中に入ることになった。魔物が出現するのはこの森しかないからだ。


「案内は俺達に任せてくれ」


「俺達に任せてくれというより、私に行けってことでしょ?」


「まぁ、そうとも言うな」


 カレンはスキル【射手】のため、スキル補正で遠く先まで見ることができる。そのため破滅のトラッセンではカレンが中距離戦闘と斥候を行なっている。


「じゃあ、私に付いてきてください」


 カレンはチラッとマルクスを見てからすぐに視線を森に戻した。おいおい、それは違う意味も含まっているのでは……。


 隊列は木の上にカレンが全体を見渡し、前方にリモンとカルロ、中央にラルフとリチア、後方に俺とマルクスの順で森を歩いている。

 

 森の中は静かで今まで行った森や妖精の池と変わりなかった。


「結構静かな森なんですね」


「少しいつもと様子は違いますが、特に危ないことはなさそうですね」


 遠くを見つめているカレンも以前の時と比較してもそこまで変わりはないようだ。


「普段はハニービーが飛び回っていることが多いんです。それがあまり飛んでいないのでどこか気になりますね。気を引き締めてください」


「ああ、カレンが言うなら気を引き締めた方がいいな」


「マルクスさん……」


 マルクスがカレンの意見に賛同すると、カレンは顔を赤く染めていた。パーティー内で恋愛が発展するとこんなのが毎日続くのだろう。


「はいはい、そういうのは他所でお願いします」


「後方から何か近づいてきます」


 カルロがいじっていると突然カレンが声を上げた。その声に各々武器を構えた。


「うぁ!?」


 そのまま飛んできたものは勢いよく俺の顔にくっついていた。


「ハニービー!?」


 顔にくっついていたのは昨日魔力を与えたハニービーだった。


 ハニービーはどこか震えていた。さらに後方から何か追いかけてくる生物がいた。


「みんなキラーマンティスです」


 蟷螂型の魔物キラーマンティスは近づくと鎌を振り上げて襲ってきた。


「うおりゃ!」


 マルクスとカルロが盾で防ぐと、そのままキラーマンティスは後方へふらついた。


「あとはまかせろ」


 リモンが剣を中段で構え、キラーマンティスに斬り込んだ。


 キラーマンティスの叫び声とともにそのまま力つけて倒れた。


「みんな大丈夫だった?」


「カレンナイス!」


 特に誰一人怪我することなく、ハニービーも落ち着きを取り戻していた。


 ハニービーは落ち着きを取り戻してからも、俺の頭の上に乗り毛繕いをしている。


「何かこいつケントに懐いてないか?」


 その姿は蜂というよりは犬や猫のようだった。


「ハニービーってこんな感じなんですか?」


「いや、俺が知ってるのはもう少し人間に警戒はしているぞ? まぁ、スキルで飼われているやつに関しては落ち着いているだけでこんなには懐いてないよな?」


 リモンはほかのメンバーに聞くと、三人とも頷いていた。


「でもハニービーが襲われてるって珍しいわね。基本的にこの子達って魔力を持っていないし、縄張りも違うから魔物に襲われないのよ」


 魔物は縄張り争い程度でしか、魔物同士で争いが起こることはなく、基本的にはお互いが無関心なことが多い。


 魔素が濃いところに魔物が集まるが、空間から魔素を吸収できないハニービーは基本的にはキラーマンティスに襲われることはないらしい。


「君なんで逃げてきたの?」


 俺はハニービーに話しかけるとハニービーは何かを伝えたいのか、森の奥を指差していた。


「あっちに何かあるの?」


 合っているのか8の字ダンスを踊っていた。


 ミツバチが8の字ダンスを踊るときは基本的に餌の場所を教える時に行うものだ。


「ハニービーも8の字ダンスってやるんですか?」


「8の字ダンス?」


 昔から住んでる四人はこの動きが何を示しているのかわからないらしい。


「蜂って餌の場所を仲間に教える時ってあのように飛ぶんですよ」


 なぜかこのハニービーは楽しそうに8の字ダンスを踊っていた。


「そうなんか。俺らは知らないからケントが行くなら付いて行くぞ。結局あとはラルフの目に頼るだけだしな」


 行く場所も特に決まっていないため、とりあえずハニービーが差した方に行くことにした。

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