第112話 妖精
「妖精だ……」
上空からヒラヒラと降りてくる妖精に俺は感動した。
小さな見た目に半透明な羽が二枚生えた少女達だ。
「初めてわしを見た時と反応が違う気がするのじゃが……」
「ん? きっと気のせいだよ」
何か感じ始めていたコロポに俺はすぐに話を流した。
「あたいらの住処からすぐに立ち去るのじゃ」
そんな中赤色の妖精が近づき、怒りを露わにしていた。
「そんなに怒ってはだめよ」
それを青色の妖精が宥めた後、緑色の妖精が赤色の妖精と遊び始めた。妖精同士が遊んでいるところを見るだけでパワースポットよりすごい何かを感じる。
「ご迷惑をお掛けしました」
「いえいえ、それにしても姿を見せて良かったのですか?」
「本当は人間には見せたくなかったのですが、コロポックルと一緒にいるとわかったので姿を見せることにしました」
コロポが胸元から出てきたため、妖精達は危なくないと判断したらしい。なら早くからコロポを胸元から取り出せばよかったな。
魔法が上空に浮いて脅されるのは結構恐怖感が強い。
「それであの者は何故あんなに怒っているのじゃ?」
「私達の住処である池に人間が来てから、魔素が強くなって魔物達が寄ってくるようになったのよ」
「どういうことじゃ?」
コロポは青色の妖精に詳しく話を聞いた。
五日ほど前に妖精の住処である池に一人の男が訪れた。
その男はポケットから何かを取り出すと、池の中に放り投げて去って行った。
妖精達はあまり気にしてはいなかったが、以前より池の魔素は強くなり魔物達が集まって来ているような気がしていた。
ある程度の魔法は使えるため、みんなで協力して魔物を追い払っていたが、次第に数が増えてきたため妖精達は住処を変えて森の中を彷徨っていた。
そんな時にケントの姿を見つけてこれ以上池を壊されないように赤色の妖精の提案で声をかけてきたらしい。
「アクセサリーってどんな感じか覚えている?」
ふと気になって聞くと、どうやら大きめの物だったらしいが何かまでは分からないと……。
「魔物って結構いるんですか?」
「今はスライムを中心に低級の魔物がたくさん溢れているわ。なぜかみんな池に向かっているのよ」
「コロポの魔法でスライムにバレずに池に近づくことってできるかな?」
「また何かする気じゃな? 危ないぞ?」
「コロポが居るから大丈夫だよ! ね?」
「むむむ……そんなに頼られているなら仕方ないのじゃ。きっとバレずに近くまでは可能じゃがどうするつもりなんじゃ?」
なんやかんやで俺に頼られて嬉しそうだ。
俺はコロポの魔法で姿を隠して少しだけ家に近づくことにした。
♢
コロポの魔法で姿を隠し、池が見える範囲まで近づいた。
「魔物ってどこにいるの?」
「あそこにいます」
妖精が指差した方は池だった。
「魔物って――」
池を見ていると水面にプカプカとクラゲのように浮いているスライムがいくつかいた。
「あれがスライムか……?」
俺は初めて異世界の定番であるスライムを見た。
ドロっとした得体の知れないものではなく、某ゲームのような目がついて中心には石が浮いていた。
「スライムは魔法で攻撃するか、直接コアを叩かない限りは倒せないのじゃ」
中心に浮いていた石はコアと言ってスライムの心臓のようなものらしい。
基本的には魔法で弱らせてコアを露出させるか、鋭利なものでコアを直接破壊することでスライムは倒すことができる。
以前はスライム達も穏やかで妖精に対して攻撃をすることはなかったが、魔素が増えてからは何かに取り憑かれたように攻撃的になり池の中心に向かっている。
ただ、自分達の体が液体に近いからなのか池に入るとクラゲみたいに浮いているのだ。
「今から試したいことがあるんだけど、風属性魔法を使える子っている?」
「はいはい! 僕が使えるよー」
妖精達に聞くと緑色の妖精が楽しそうに手を挙げていた。
まさかのボクっ娘だ。
それにしても妖精達は色によって性格もバラバラだった。
赤色は強気で少し攻撃的な印象、青色は穏やかでお姉さん的な存在、緑色は元気なボクっ娘、黄色は無口でボーッとしている。
「わしを見つめてどうしたのじゃ?」
「うん……何もないよ」
なぜコロポだけこんな性格なんだろうか。おじさん枠も探せばたくさんいるのだろうか。
俺は気を取り直しコロポと妖精達に作戦を伝えた。
「じゃあいくぞ!」
コロポの魔法で姿を隠したまま池に近づいた。
池の近くまで来るとスライムの数は多く隙間無く池に浮いていた。
池だと思っていたところもほぼスライムだったのだ。
「この前より数が増えているわ……」
妖精達が池から離れた時よりも数が増えているらしい。
「じゃあ、緑の妖精さんお願いするね」
「わっかりましたー!」
緑色の妖精は元気よく返事をすると風属性魔法を発動させた。
妖精の魔法は思ったよりも強力でスライム達は次々と池から飛ばされ、気づいた頃にはスライムは池から放り出されていた。
「流石、緑の妖精さん!」
「へへへ、どんなもんだい!」
緑の妖精は笑顔で胸を張っていた。やっぱりおっさんの笑顔より少女の笑顔の方が可愛いかった。
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