第111話 休みの日

「はぁー、何もない日っていいね」


 俺は部屋の中でゴロゴロとしていた。マルクスとラルフは既に依頼を受けに冒険者ギルドへ行き、俺は今日一日休みの日を作った。


「最近バタバタしておったからの」


「ずっと孤児院のことやら王都内の依頼ばかりこなしてたからね」


 コロポも俺と一緒にベッドでゴロゴロしている。それにしても今日もおじさんの顔をしている。


 基本的に王都内の依頼とたまにメリルのとこに行き、ウルとラルにはバレないように介護ができているか覗きに行っていた。


「そういえばボスも寂しそうじゃったぞ?」


「あー、最近遊んでないしね。あっ、そうだ!」


「どうしたのじゃ?」


「コロポ、この辺に魔素が濃い森ってある?」


 コロポに聞くと首を横に振っていた。


「そうかー。魔力を高めながらボスと遊ぼうと思ったのにな……」


 暇だからボスと遊びながら魔力の器を広げようと思ったのだ。


「魔素が濃い森はないが池だったらあるぞ?」


「池?」


「ああ、妖精達が好んでいるところなんじゃが森の奥にあるぞ?」


 コロポの話では王都より東にある森に池がありそこには妖精が住んでいるらしい。


 そんな近場に妖精がいてもいいのかと思ったが、妖精は魔素が濃い森や水辺に住んでいることが多い。ただ基本的には魔法で姿を隠しているらしい。


「じゃあその近くまでボスを連れて遊びに行こうか」


 俺は身支度をすると庭にいるボスに声をかけ王都の東にある森に向かうことにした。






 俺達は一時間程度王都から歩くと森が見えてきていた。


「おかしいのじゃ」


 突然胸元のポケットにいたコロポが話しかけてきた。


「コロポどうしたの?」


「この森の魔素が濃くなっているのじゃ。そもそも池の周りに魔素があったのに森にまで魔素が広がってきておるのじゃ」


 普段は池にしかない魔素が何かしらの影響で森まで広がっていた。


「コロポ魔法をかけてもらってもいいかな?」


「どうするつもりじゃ?」


「少し中の様子を見てギルドに伝えよう」


 俺は森の異常に何かしらの原因があると思い、コロポに魔法をかけるよう頼んだ。


「危険じゃ! ただでさえ森がこんな異常な状態なんだ」


「大丈夫! ゴブリンの時も上手くいってただろう?」


「……わかった。じゃがわしも行くぞ」


 止めてもきかないと判断したのかコロポ自身も俺に付いてきてくれることになった。


「ありがとう! ボスはここに人が来たらなるべく威嚇して人が入って来ないようにしてくれ」


 ボスの首元には使役している動物としてスカーフが巻いてある。


 その動物が森の前で威嚇していれば、何かあって威嚇しているのだとわかってもらえると俺は思った。


「ガウ!」


 ボスは俺の意図を理解したのか吠えて返事をした。


「じゃあよろしく頼む」


 俺はボスの顔をくちゃくちゃになるほど撫でると森の中に入った。やはり異世界スローライフにはモフモフは大事だ。





「思ったよりも静かだね」


 森の中は静かで妙に動物の足音や鳥の鳴き声が一つも聞こえなかった。


「動物が一匹もいないのじゃ」


「これってやっぱり魔素が原因なのか?」


「多分そうじゃ。動物も魔素は苦手じゃからな」


 基本的に魔素が多いところには魔物がおり動物も魔素から離れて生活をしている。


「人間よ! ここから立ち去るのじゃ!」


 突然上空から俺達を止める声がしてきた。


「コロポ何か言ったか?」


「いやあれはわしじゃないぞ」


「直ちに止まらなければ攻撃する」


 俺は声がする方を見上げるとそこには火・水・土・風属性の魔法でできた球が浮いていた。


「俺はこの森の様子がおかしいと思って来ただけだ。攻撃する意思はない」


 俺は両手を挙げて伝えるが球が消えることはなかった。


「ならなぜ姿を消している。そんな奴は信用できないぞ」


「コロポ魔法を解除してくれ」


「それじゃあ危ないぞ」


「大丈夫! 攻撃の意思がないと伝えるだけだし」


「何かあったらすぐに逃げるんじゃぞ」


 コロポは俺に掛けていた魔法を解除すると姿が一瞬で現れた。


「どうだ、これで大丈夫だろ」


「お前……仲間達に何をしたんだ」


「えっ?」


 上空にあった魔法の球はさらに大きくなっていた。


「その魔法は妖精達にしか使えないはずじゃ! あたいらの仲間を捕まえて何をするつもりじゃ」


「いや、俺は何もするつもりないんだが……」


「嘘をつくものは死んじまえ」


 どこか声の主は怒っており魔法の球を投げつけようとしていた。


「やめるのじゃ! あれはわしの魔法じゃ」


 何かを感じたコロポは胸ポケットから飛び出すと俺の前で手を広げて叫んだ。


 小さなおっさんが必死に俺を守ろうとしているのだ。


「コロポックルじゃと!?」


 声の主はコロポの姿を見ると魔法の球を消した。


「こやつはわしの主人じゃ」


「なぜコロポックルが人間と一緒にいるんじゃ」


「ケントはわしの友達じゃ」


 コロポはケントの方へ振り返ると笑っていた。ただ、小さなおじさんに微笑まれてもあまり可愛くはない。


 ここが幼女か綺麗な妖精ならキュンの一つや二つはあるがコロポはおじさんなのだ。


 もう一度言うがおじさんだ……。


「わしらは姿を見せた。今度はそっちの番じゃろ?」


 コロポがの声に反応して魔法が消滅すると上空からは四人の小さな少女が降りてきた。


 声の主は見た目がバラバラの妖精だった。

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