⑦
昨日以来、悪魔さんの様子がおかしい。
「今日の天気は晴れだね」
「いや思いっきり曇天ですけど、降水確率90%ですけど」
「君は優しくない!」
「あっちょっと勝手にどっか行かないでください! つられて僕も引っ張られるんですから!」
心臓を掴まれている僕は悪魔さんが遠くに行こうとするとそれに引っ張られるのだ。
僕達は離れられない。
「……心臓返そうか」
「いいですよ、別に今更」
「だーかーらー! そういう態度が分からないって言ってるんだ!」
「えぇ……僕はそういう悪魔さんの意図が分かりませんよ」
「むぅ……」
悪魔さんはふよふよ浮きながら辺りを漂う。
こうして書くと風船か何かのようだ。
「なんか今失礼な事を……はぁ」
「本当にどうしたんですか、悪魔さん、エクレア食べます?」
「食べる」
「えぇ……」
いつもシュークリーム以外受け付けないのに。
エクレアを齧る悪魔さん。
「まずい……」
「まずいって事はないでしょ……」
「シュークリーム……」
「ありますよ」
「ありがと……」
今日も休日である。
がらんとした一軒家に二人。
「あの、気まずいんですけど」
「君のせいだー!」
「理不尽な……」
「君は私の事、好きなのかい! 嫌いなのかい!」
「え? 嫌いな訳ないじゃないですか」
「へ? でも、告白じゃないって」
「告白なら然るべき時にします。あの時は別に告白じゃなかっただけです」
「じゃ、じゃあ!」
「まだ言いません」
「いーじーわーるー!!」
頬を膨らませる悪魔さんは可愛くて、僕はつい頬を緩ませる。
「そうか、でもそうか、君は私の事が……」
どうなのだろう、初めてあの蔵で会った時は驚きと共に一目惚れだった。
悪魔さんは僕の事をどう思っているのだろう。
聞くのが少し怖かった。
だから告白はきちんとした時にしようと決めた。
「僕達ってどういう関係なんでしょう」
「どういうって悪魔と人間だよ」
「それ以上にはなれませんか?」
「そそそ、それ以上?! 君は本当にわたしをどうしたいんだい!?」
僕は悪魔さんの目を見つめる。
「悪魔さん、どうしたら、心臓を受け取ってくれますか?」
「ふぇ?」
「僕は悪魔さんに自分の心臓を受け取って欲しいんです」
「それはえっと、契約を」
「契約?」
「う、うん、君とわたしの間にかわされた契約は不完全なものだ。
「じゃあ、しましょう。契約」
悪魔さんは顔を真っ赤にして羊皮紙を取り出した。
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