⑥
固まる悪魔さん。
「わたしは君以外には見えないんだよ? 君が急病で倒れても助けも呼べないよ?」
「そんなこと求めてません」
「で、でも、そもそもわたしは君の心臓を握っていて」
「それでいいです」
悪魔さんは慌てふためく。
「君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?」
「はい、分かってます。今日、委員長と話してみて分かったんです」
「なにを?」
「話し相手は一人で十分で、僕の話し相手は悪魔さんだけで満ち足りているんだって」
僕はそれだけ言うと。
「じゃ、僕、お風呂入るんで、覗かないでくださいよ」
「う、うん……」
たまにこうして釘を刺しておかないとふざけて覗きに来るのだ。
「どうしようどうしよう、あれって告白だろうか、いやいや早計だ。でもでも実質『君だけで良い』と言っているようなもので、でもでもお風呂には来るなって言うし、あーもー分からない! このわたしに分からない事があっていいのか!? 良くない! こうなったら確かめないと!!」
お風呂場にて。
「なんかよく身体はどこから洗いますか、とか質問あるよな……あれってどんな意味が」
「僕くん!!」
ドーン! とドアをすり抜けて来た悪魔さん。
「うわぁ!? ば、馬鹿!? 何してるんです!?」
「分からないんだ! さっきのは告白かい!? 私を好きだと言いたいのかい!?」
「は、はぁ!? いや違いますけど!?」
「え、違うの……?」
「は、はい……」
「……そう」
すぅ~っとドアの向こうに消えていく悪魔さん。
僕は思い切り溜め息を吐く。
「なんだったんだ……?」
リビングにて。
「そうか……告白じゃないのか……どういう事だろう……この気持ち……わたしは悪魔なのに……」
「お風呂出ましたよーって悪魔さん!?」
「うん?」
「なんで逆さまに浮いてるんですか……?」
「ああ……なんでもないよ、シュークリーム食べたいな……」
「あっ、はい、今、出しますね」
「うん……ありがとう……」
シュークリームを手渡すと逆さまの悪魔さんはクリームを床にこぼした。
「あっ……」
「……新しいのまだありますけど」
「いい……まだ皮は残ってる」
もそもそとシュークリームの皮を頬張る悪魔さん。
「あの、なんか言いたい事あるなら聞きますけど」
「言いたい事なんかないよ……ほっといてくれたまへ……」
宙に浮いている悪魔さんはどこまでも彷徨っていた。
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