④
デート当日の朝。
僕は身支度を早めに済ませると出発時間までそわそわしながら待つ事になる。
「緊張しているのかい? 可愛いねぇ。そんな君にデートの歴史について語ってあげよう」
「それ役に立つんですか?」
「それは君次第だね」
「で? デートの歴史ってなんです?」
「時は古代ローマまで遡る」
「長くなりそうですね」
「古代ローマの人は手紙に出会う予定の日付を記していたとか」
「……まさかそれだけですか?」
「うん」
「えぇ……」
デートに行く時間になり家を出る。僕はついてくる悪魔さんに一抹の不安を感じながら歩を進めた。
待ち合わせ場所、渋谷、モヤイ像前。
「渋谷か、普通ならハチ公前を指定すると思んだけどね」
「……」
「おやどうしたんだいスマホなんて取り出して」
「あー……もしもし?」
「ん?」
「もう話していいですよ悪魔さん」
「ああ、そういう事か、ふふふっ独り言にならないように電話のフリをしているんだね。面白い発想だ」
「そういう事です。で? 俺はこれからどうしたら?」
「そんなもの決まっている、委員長のデートプランに乗ってやるだけでいい。最後に『楽しかった』とだけ言えばいい」
それだけでいいのだろうか、疑問に思う。果たしてこの悪魔さんの言いなりでいいのだろうか。待ち合わせ時間の三十分前に来てしまったのでまだ委員長が来るまで時間がある。
「そのプランとやらの中身も分かってないのに」
「知りたいのかい? それなら教えてあげよう。まずはウインドウショッピング、次にオシャレなカフェでお茶、最後に映画を見て終わりだ」
「……」
普通だ、と思った。まあプランを考えたのは委員長であってこの悪魔さんではないのだから当たり前か。
「今、君はとても失礼な事を考えたね?」
「いいえ」
「そうかい、そうかい、そんなにわたしが信用ならないと言うのなら、もう一つ助言をしてあげよう。君はこれから相槌を打つ時は絶対に『なるほど』とは言わない事だ」
「どうして?」
「答えまで求めるのは人間の悪い癖だ。だがわたしは寛大な悪魔さんなので教えてあげよう。彼女は、委員長は『なるほど』が嫌いなんだ」
何故そんな事が分かるのかとまでは聴かない事にした。
「まあ、人によっては適当に聞こえるかもしれませんね」
「そうそう賢い子は好きだよ」
「なんでも好きなんですね」
「君だから好きなんだよ」
流石に照れた。
待ち合わせ時間よりちょっと早めに来た委員長が顔が赤い事を心配した。
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