じゃんけんに負けた委員長は何故か明日のデートでは自分がプランを決めると言って去って行った。

「ほらね、君はわたしに任せておけば万事解決なのさ」

「今のなにが解決したんですか?」

「君がデートプランに頭を悩ませる手間を省いてあげたのさ」

「ただの嫌なヤツじゃないですか」

「そうかい? あの子は嬉しそうだったけど」

 そもそもあんな辻じゃんけんが何故、成立したのかが謎で仕方がない。

「さぁ、家に帰ろう、私はシュークリームを所望するー」

「はいはい……」

 僕は家に帰って誰もいない家に「ただいまー」と声をかける。両親は出張中で僕は一人っ子、この広い一軒家は今や僕と悪魔さんの家になっていた。

「君は律義だよね、誰もいない家にただいまなんて」

「習慣なんで」

「ふむ、ルーティーンってやつかな」

「そんなもんです」

「まあ、ルーティーンの話は後でしよう、今はシュークリームだシュークリーム!」

「今、手を洗いますから先にリビングに……って僕から離れられないんでしたっけ」

「正確には君が私から離れられないんだ。これがあるからね」

 そう言って脈打つ心臓を取り出す悪魔さん。何度見ても怖気が走る。あれが今、僕の胸の内に無いと思うとゾッとする。

「いつ返してくれるんですか、その心臓」

「え? 一生返さないよ?」

 僕は手を洗い終えると、リビングを抜けてキッチン奥の冷蔵庫に向かう。

「ここにシュークリームがあります」

「うんうん♪」

「心臓と交換しましょうと言ったら?」

「いい――ってダメダメ! なんて事を言い出すんだい君は!? 自分の命をシュークリームごときと天秤にかけようなんて!」

「ちっ」

「末恐ろしい子だな……いいからさっさとシュークリームを出したまへ。そうしないとこれを握りつぶすよ?」

「握りつぶしたらシュークリーム取り出せませんよ」

「だーかーらー! シュークリームで命をギャンブルに賭けるのはやめたまへ! 無駄な抵抗だよそれは!」

「はぁ……」

 仕方なくシュークリームを取り出し悪魔さんに渡す。彼女はそれを受け取ると美味しそうに頬張る。

「んまー、これだよこれ、生きてるって感じがする!」

「こっちは生きた心地がしませんけどね」

「あはは、そのギャグうける」

「喰らえ!」

「ぎゃふん!?」

 僕は唐突にテレビのリモコンを悪魔さんに投げつけた。てっきり避けると思ったのだが、シュークリームに夢中だったようで、おでこにクリーンヒットした。

「痛いじゃないか!」

「……ごめんなさい」

「もう、あんまりお痛をしたらダメだよ……腫れてないかな……」

 鏡を覗き込む悪魔さん。

 はぁ、明日の委員長とのデートどうしよう。

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