③
じゃんけんに負けた委員長は何故か明日のデートでは自分がプランを決めると言って去って行った。
「ほらね、君はわたしに任せておけば万事解決なのさ」
「今のなにが解決したんですか?」
「君がデートプランに頭を悩ませる手間を省いてあげたのさ」
「ただの嫌なヤツじゃないですか」
「そうかい? あの子は嬉しそうだったけど」
そもそもあんな辻じゃんけんが何故、成立したのかが謎で仕方がない。
「さぁ、家に帰ろう、私はシュークリームを所望するー」
「はいはい……」
僕は家に帰って誰もいない家に「ただいまー」と声をかける。両親は出張中で僕は一人っ子、この広い一軒家は今や僕と悪魔さんの家になっていた。
「君は律義だよね、誰もいない家にただいまなんて」
「習慣なんで」
「ふむ、ルーティーンってやつかな」
「そんなもんです」
「まあ、ルーティーンの話は後でしよう、今はシュークリームだシュークリーム!」
「今、手を洗いますから先にリビングに……って僕から離れられないんでしたっけ」
「正確には君が私から離れられないんだ。これがあるからね」
そう言って脈打つ心臓を取り出す悪魔さん。何度見ても怖気が走る。あれが今、僕の胸の内に無いと思うとゾッとする。
「いつ返してくれるんですか、その心臓」
「え? 一生返さないよ?」
僕は手を洗い終えると、リビングを抜けてキッチン奥の冷蔵庫に向かう。
「ここにシュークリームがあります」
「うんうん♪」
「心臓と交換しましょうと言ったら?」
「いい――ってダメダメ! なんて事を言い出すんだい君は!? 自分の命をシュークリームごときと天秤にかけようなんて!」
「ちっ」
「末恐ろしい子だな……いいからさっさとシュークリームを出したまへ。そうしないとこれを握りつぶすよ?」
「握りつぶしたらシュークリーム取り出せませんよ」
「だーかーらー! シュークリームで命をギャンブルに賭けるのはやめたまへ! 無駄な抵抗だよそれは!」
「はぁ……」
仕方なくシュークリームを取り出し悪魔さんに渡す。彼女はそれを受け取ると美味しそうに頬張る。
「んまー、これだよこれ、生きてるって感じがする!」
「こっちは生きた心地がしませんけどね」
「あはは、そのギャグうける」
「喰らえ!」
「ぎゃふん!?」
僕は唐突にテレビのリモコンを悪魔さんに投げつけた。てっきり避けると思ったのだが、シュークリームに夢中だったようで、おでこにクリーンヒットした。
「痛いじゃないか!」
「……ごめんなさい」
「もう、あんまりお痛をしたらダメだよ……腫れてないかな……」
鏡を覗き込む悪魔さん。
はぁ、明日の委員長とのデートどうしよう。
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