放課後、僕は驚愕に顔を染める。

「一体なにやったんですか!?」

「なにって君はわたしの言う通りに喋ったのさ、君が行った事だよ」

「でも、でも、委員長が、あんな顔、真っ赤にして、でも、明日、僕、で、デートに!?」

「ハハハハハハッ! 本当に君は面白い、本当に契約して良かった。心の底からそう思うよ」

 悪魔さんは豪快に笑う、彼女の作った「口説き文句」は効果覿面だった。あの堅物委員長を陥落せしめた。そのせいで僕は一気にクラスの注目人物になった。

「僕これからどうすれば……」

「安心したまえ、君には悪魔さんが憑いているよ?」

「……」

 それが不安なのだが。最後に地獄に落とされたりしないだろうか。

「君の考えを当ててやろう。最後に地獄に落とされないか? と心配しているね」

「本当は心が読めるんでしょ」

「おや? かまをかけたつもりが当たりだったようだ」

 どこまでも飄々としている悪魔さんに僕は一周回って呆れかえる。この人、もとい悪魔には勝てそうにない。

「心配いらないよ、私は契約を遵守する悪魔さんだからね、神のクソヤロウになんか君の魂は渡さないさ」

「いや、開放してくださいよ」

「いやだ」

 まるで子供の駄々だ。

「元はと言えば君が契約の書に不用意に触れるからいけないんだよ?」

「あんなのただの古い本だと思うじゃないですか」

「まあただの古い本なんだが」

「えっ」

「おっと口が滑った聞かなかった事にしてくれたまへ」

「いやいやいや、根本から覆るような話でしたよ!?」

「君は細かい事気にするねぇ、あの蔵に訪れた時点で君の運命なんぞ決まっていたようなものだったんだよ」

「なんぞって」

 僕は肩を落とし項垂れる。

 悪魔さんは慌てて。

「ああ、ごめんごめん、君の価値を下げたわけじゃないんだ。ただ私にとって人間の運命は些末事というか」

「フォローになってませんよ」

「あはは……そうだな……じゃあ君に価値ある知恵を与えてあげよう、ちょっとした呪文だ」

「……」

 悪魔から教えられる呪文、それは本物の魔術という事ではないだろうか?

「今からすぐに『じゃんけんぽん!』と唱えなさい」

「は?」

「いいから早く!」

「じゃ、じゃんけんぽん!」

 すると。

 僕のちょっと前に出た拳がピースサインとぶつかった。

 例の堅物委員長が目の前に居た。

「ほら、良い事あっただろう?」

 僕は運命を操作でもされているのだろうか。

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