第3話

 視点はカロスに、戻る。

「なんだ?さっきの音は。金属と何かがぶつかるような音だった.....誰かが、戦っているのか?」

 カロスは、脚部を強化して全速力で走った。

 数秒がたち、音も大きくなってきた。辺りを見ると、木々が薙ぎ倒されいる。後少しだ。

「大丈夫ですか!」

 目の前では、一人の女とドラゴンの姿をしたエンサルが戦っていた。周囲の被害から、戦いの激しさが目で分かった。

「あ、あなたは.....四星王の一人、イプシル様!」

 『イプシル・エタヒーティタ』は、戦士の頂点に君臨する四星王の一人。剣を扱うのを得意としている。

「ちょうどよかった。私一人では、分が悪かったのでな。君の星技で、あいつの気を引くことは、できるかい?」

 イプシルは、エンサルを指差して言った。

「勿論です。私の星技は、引力を操ることができるので、宙に引き摺り出せます。見たところ、あのエンサルには翼がないので、空は飛べないでしょう」

 カロスの星技は、触れた相手の引力を操ることができる。これを使い、ドラゴンを浮かせるのだ。

「よし、それでいこう。私も全力を出す。少し、溜めが必要だから、それまで時間を稼いでくれ」

「わかりました」

 カロスはドラゴンの前に立つと、身体強化をして攻撃を避けた。ドラゴンの攻撃は、噛みつきや、尾を振り回すものだった。

「ありがとう、溜めは終わった」

 その声を聞くと同時に、ドラゴンに近づいて触れ、星技を発動した。

「アクセスセート!!」

 ドラゴンが少しずつ浮かび、宙吊りになる。何が起きているのかわからないのか、空中で足をドタバタさせていた。

「惨めだな。安心しろ、一瞬で終わらせてやる!」

 イプシルは、光り輝く剣を構えていた。そして、星技を放つ。

「スィファスキア!!」

 剣を振り下ろすと、光の剣戟がドラゴンめがけて飛んでいく。誰もが、捉えたと思った。しかし、次の瞬間。ドラゴンの背中から翼が生え、剣戟の軌道上を外れた。

「何?!」

 ドラゴンは剣戟を交わすと、イプシルめがけて突撃してきた。イプシルは、大技の反動で動けない。カロスも、離れた場所にいて間に合わない。イプシルは死を悟り、最後の抵抗に、剣先をドラゴンにむけた。

「ただでは死なんぞ。貴様も、道連れだ!」

 イプシルの勇気は素晴らしい。しかし、カロスはイプシルを失うことを、惜しんだ。またこのような脅威が迫る時、必ずイプシルが必要だと思ったからだ。

 しかし、その願いも虚しくドラゴンは今まさに、イプシルを飲み込もうとしていた。

 

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