第4話 秘策②
三つ目。
「私いつも夜更かししちゃうんだよね…。だから今日も寝坊しちゃって…。」
これは寺舞さんもわかっているかもだけど一応伝えてみよう。
もしかしたら…。
なんて淡い期待はこの後見事に打ち崩される。
「先輩と夜更かししてお話したいです!今夜電話してもいいですか…?」とお願いする寺舞さん。
また予想外の反応に戸惑いながら「え、えっと。う、うん…。いいけど…。」と返事をすると「わーい!楽しみにしてますね!」と大喜びしていて。
「あ、で、でも寝坊して私みたいにダメな子になっちゃうよ…?」と言っても「わたし朝は強いので大丈夫です!それに毎朝先輩にモーニングコールして起こしちゃいます!これで寝坊しなくなりますね!」と笑顔の寺舞さん。
「は、はい…。よろしくお願いします…。」なんて返事しか出来ない私。
これで三つ目も失敗に終わり。
残るは最後の四つ目となった。
「実は私焦りすぎちゃうと頭の中が真っ白になって考えがまとまらなくなっちゃうんだ…。」と話す。
正確には恋愛関係の時なんだけど。
私がよくイメージトレーニングをしているのもこのせいで。
昔、ある大失敗をしてから行うようにしている。
そのおかげである程度は対応できるようにはなってるんだけど。
だけど、今回の告白はさすがにイメージトレーニングなんかしているわけもなくて。
こんな大変な事態になっているんだけど…。
自分で言っていて改めてダメだなぁと落ち込んでしまう。
すると「んー。そうなんですねぇ。」と考え込む寺舞さん。
さすがにこれで幻滅するかなと思っていたのだけど…。
「あ、そうだ!」と言うと寺舞さんが身体ごと私の方を向く。
どうしたのかなと考えていると「先輩!そんな時はわたしがこうしてあげますね!」と言うと私の頭へと腕を回し優しく抱きしめる。
「え、え!?な、なに!?」と最初は驚いたけど、こうしていると寺舞さんの良い匂いがして。
それに、なんだか安らいできて。
「どうですか?安心してくれてますか?」と尋ねる寺舞さんに「うん…。安心する…。」と返事をする。
「えへへ。よかったです。」と優しい声の寺舞さん。
こうして四つ目も失敗に終わった私はそのままの状態でどうしようかと考え込む。
だけど、安心しすぎて。
天気も良く、ポカポカしていて。
なにより昨日も夜更かししていた私はウトウトしてしまう。
「先輩…?もしかして眠いですか…?」と寺舞さんが小さく優しい声で尋ねてきて。
「ごめんね…。ちょっと眠いかも…。」と答えると寺舞さんは「ふふ。気にしないで寝ていいですよ?お昼休憩が終わる頃に起こしてあげますね。」と言い、そっと私の身体を支えながら動かす。
気づくと膝枕をしてもらう形になっていて。
さすがに悪いというか、なによりも恥ずかしかった私は起きあがろうとするのだけど。
優しく頭を撫でられて。
「おやすみなさい。」という寺舞さんの優しい声に抵抗出来ず。
「大好きですよ。先輩。」という声を最後に聞くと眠りに落ちていた。
それからしばらくして。
「…い。…んぱい。…せーんーぱーい。起きてくださーい。」と聞こえてくる。
その声で徐々に目が覚めてきて。
目を開けると寺舞さんがニコニコしているのが見えた。
あれ…?なんで寺舞さんがこんな近くに…。なんて考えて。
あー。そっか。私寺舞さんに膝枕してもらって…。って!膝枕!?と気づくと慌てて起き上がる。
「おはようございます!先輩!」と変わらずニコニコしている寺舞さん。
そんな寺舞さんに「ご、ごめんね!眠っちゃって…!そ、それに…。」膝枕してもらっちゃって。と言おうとしたけど恥ずかしくなって言えず。
だけど寺舞さんには伝わっていたのか「いいですよー!お望みでしたらまたいつでも!」と言われ。
「だ、大丈夫だから!」と慌てる私に「えー!ざーんねん!」なんてイタズラっぽく笑う寺舞さん。
それから教室に向かって歩き出す。
ただ本当に申し訳なくて「ほんとごめんね。」と謝ると「もー!いいですってー!それに先輩のかわいい寝顔見れましたからー!」とニコニコする寺舞さん。
もうすぐ分かれるところまで来ると「あ、でもでもー!先輩に謝らないといけないことが…。」と申し訳なさそうに言う寺舞さん。
「え…?な、なに?」と尋ねると「先輩の寝顔が可愛くてですね…。キスしちゃいました!」と嬉しそうに答える。
そんな爆弾発言に驚きを隠せない私だったのだけど。
「なーんて!嘘でーす!ほんとは先輩の顔をツンツンして遊んでましたー!ごめんなさーい!」と笑っている寺舞さん。
その言葉に安堵するのだけど…。
寺舞さんが私に近づき「初めてはもっと別の時にしたいですからね。」と耳元で言われ動揺してしまう私。
やがて分かれる場所まで来ると寺舞さんは「先輩!またあとでー!」と手を振り階段を上がっていく。
そんな寺舞さんに顔が赤くなりながら手を振ると自分のクラスへと。
さて、結局本当のことを伝えられなかった私は穂波に「どうしよー!穂波ー!」と泣きつく。
それで察した穂波は「あー。だめだったんだね。」と苦笑いする。
私が「うん…。」と机に突っ伏しながら答えると「お昼どんな感じだったの?」と聞かれたのでお昼にあったことを話す。
さすがに最後の方のことは隠したけど。
「んー。なるほどなるほど。」と穂波が言うと少し考え。
やがて「叶さぁ。言いたいことがあるんだけど。」と言われ「なに…。」と穂波の顔を見て返事をする。
すると「惚気話か!!!」と怒っている穂波。
続けて「深刻な話かと思ったらなんで惚気話聞かされてるの!?」と大声で叫ぶ穂波。
「え、え!?な、なんでそうなるの!?」と理解出来ず慌てる私。
「だってそうでしょ!?なに普通にお弁当食べてるの!?なに別の約束してるの!?なにイチャイチャしてるの!?」と熱くなっている穂波。
「だ、だってー。…っていうかイチャイチャしてなくない!?」と反論するも「うるさい!」と怒られた私はなにも言えず。
「っていうかあの子良い子すぎるでしょ!良い子すぎてあたしが付き合いたいくらいだわ!それなのにあんたわ!」とさらに熱くなる穂波。
「で、でも勘違いだし…。」と伝えると「それ!それなの!もうさ!いいじゃん!そんなこと気にせずこのまま付き合っていれば!」と驚きの発言をする穂波。
というか、そろそろみんな何事かと驚いて注目浴びてきてるからまずは穂波を宥める。
すると、それに気付いたのかコホンと咳払いをすると落ち着きを取り戻す。
「と、とにかく。そのまま付き合ってればいいじゃん。」と少し顔が赤い穂波。
「そ、そんなことできないよ…。」と答えると「なにが問題なの?」と首を傾げる穂波。
そんな穂波に「だって寺舞さんのこと好きなわけじゃないのに…。」と伝える。
そう。
これが本当に問題で。
仮に私が寺舞さんのこと好きだったら問題なかったのだけど…。
そう考えていると「なんだ。そんなことかぁ。」とため息を吐く穂波。
「そ、そんなことって。重要でしょ!?」と身を乗り出すと「まぁ重要といえば重要だけどさ。好きになっちゃえば問題なくない?」と言う穂波。
「す、好きになっちゃえばってそんな…。そんなこと言われても…。」と言う私に手で待ったをする穂波。
「お昼の時間楽しかった?」と質問する穂波に「楽しかった…。」と答える。
それに安心もした。
「その子のことかわいいと思った?」とさらにさらに質問する穂波に「かわいかった…。」と答える。
ころころ変わる表情とか。
「それなら好きになるのも時間の問題だね。」となぜか結論を出した穂波。
「わ、わかんないじゃん。好きになるかなんて…。」と言うと、穂波はため息を吐き「まぁこのまま付き合い続けてみな。そのほうが良いと思う。」と真剣な顔で言った。
普段はふざけたりする穂波だけど、この表情の時は本気で言っていて。
不安もあったけど、穂波の助言を受け入れることにした。
こうして、私は寺舞さんに本当のことを伝えるのをやめて。
好きになるかわからないけど、恋人関係を続けることにしたのだった。
勘違いから始まる恋人関係♀×♀ たるたるたーる @tarutaru_ta-ru
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