夕飯
★★★
「宏太朗、そろそろ夕飯を食べよう」
父に起こされた時にはもう日が落ちていて、窓から見える景色は一様に真っ暗だった。
日本にいてもカナダにいても、夜になれば等しく真っ暗になるんだなと思うと、なんとなく安心感を覚えた。
その日の夕飯は、父がテイクアウトで購入してきたハンバーガーとフライドポテトのセットだった。
日本で見るハンバーガーよりも全体的に分厚く、手前に飛び出した大きなレタスも何だか大ぶりに見えた。
包みに少し溢れ出たケチャップソースは、パテの下に挟まっているトマトよりも克明な赤色をしていた。
私たちは、すっかり冷めきって気だるい食感になったハンバーガーを食べながら言葉を交わした。
学校の勉強の話だとか、仲の良い友達の話だとか、所謂とりとめのない会話だった。
フライドポテトを食べ終わる頃、すでに夜の十時を回っていることを聞かされて驚いた。
外国に来ると時間の感覚が狂う、という実感を得た最初の瞬間だった。
「日付が変わったら出るからな」
お腹を満たした私たちは外出の準備をしつつ、持ち運び用のチェスや将棋で遊びながら日付が変わるのを待った。
ホテルの部屋でのんびり過ごしていると、自分が今どこにいるのか、何をしているのか、自分は一体何者なのか、その境界線がすべて曖昧になっていくような気がした。
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