戦果をあげよ。 第7期上官候補生アラン・ローテル

あんこ

第1話 小隊発足。

 ――学園長当時。

「第7期上官候補生諸君! 入学おめでとう! お前らは国の主力戦力である特殊戦力軍、通称特軍の未来有望なリーダーになるものだ! 検討を祈っている」


 俺は軍になんか入るつもりはなかった。いや、入れるとは思っていなかった。ましてや上官なんて。

 そもそも運動能力も高くないし、頭もそこまで良くない。


 軍に入れれば将来安泰。死ななければに限るが。

 どんなに戦果があがらずとも、真っ当に仕事をすれば引退まで固定給が与えられる。さらに、戦果によって特別賞与から、引退後の職の斡旋。有給さえ与えられる。


 普通に考えれば、ならないわけなくね?

 ってことだ。そんな職誰でもなれるのかというと、そんなわけはない。

 そう、これには厳しい試験を突破するか、特別推薦を受ける必要があるのだ。


 そして、うちに届く特別推薦状。


 上官候補生は30名。うち10名は推薦入学。

 一般軍人生は120名。うち24名は推薦入学。


 元々30、120名という枠が決まっていて、先に推薦枠が埋まる。残った枠を試験で決める。

 推薦は特別な事情が無い限り断ることはできない。


 俺は特に断る理由が無い。中の下くらいの田舎に住む一人っ子。

 親は泣いて喜んでいた。


 俺の内心は複雑だ。もちろん光栄なことだし、親孝行にもなると思うが、命を掛けれるほど俺に力があるとは思えない。

 そう、自身が無い。


 でも、言ってくれた。自信なんていらないと。

 推薦者のみ行われる個人面接で。


「私には自信がありません。ですが、断るための特別な事情もありません。どうしたらいいんでしょうか」


 普通面接では前向きに、目標や成し遂げた良い事を語るのがセオリーだ。

 なのに俺はそれをしなかった。いや、出来なかった。


「いいじゃないか。自信が無くても。自信満々でやる気十分ってやつこれまで何人もいたよ。そして、すぐに死んだ。逆に長生きするのは君のような人だ。それでいい、過信するな。出来ることをまずは精一杯やってみろ」


 自信が無くていいと言われた。その言葉が心の重荷をいくつも取っ払ってくれた。

 後で聞いた話だが、あの面接は真実をさらけ出させるトゥヘルという魔法を、こちらが気付かない間にかけられてから始まっていたらしい。


「それに特別推薦にはそれだけ理由がある。君には人の上に立つ力があると判断した理由が。君は見極める力、心眼の持ち主。願うことにより人の隠れた力が見える。それが心眼だ。他人のステータスを見ることのできる鑑定能力に加えて、さらにそれ以上のものが見える。らしい」


 そして、また新たな重荷が出来た。与えられてしまったからには、それを使って結果を出さなければいけない。というある種使命感のような重荷。


 心が休まんねぇ。


 あと、らしいってなんだよ。

 ――――


「本日のスケジュールを発表する。君達上官候補生は本日中に一般生数人を含めた、最大人数6人、最小人数2人の小隊を作ること。一般生はこの先の大講堂で既に説明を受け待機している。準備のできたものから行って構わない」


 説明を受け、俺達上官候補生はぞろぞろと入っていく。

 この小隊は今後も継続される、いわば運命共同体だ。

 テキトーには組めない。


 俺は、俺より強い人と組みたい。切実にな。

 どうしよう、どうすれば心眼っての使えるのか。

 あの面接でのあれは本当だったのかとさえ思える。


「き、きみ! ボクの小隊にはいらないかい?」

「いやいや、どう見ても俺だろ? この俺の肉体美! 人類最強とは俺の事」

「ぜひ私のところへ。君みたいな聡明な女性は私のところへ来るべきだ」


 大講堂の一角に人が群がっていた。特に男。

 その中心には、少しとがった耳に透き通った青い瞳。華奢な身体はつい守ってあげたくなるような気にさせる。みんな、あの子の見た目に惹かれたのだろう。

 俺も彼女に惹かれていくように、自然と足を運んでいた。

 どんな子なんだろう。


 **


 エレナ・アストレア(16)

 技術スキル

 短剣、弓術、攻撃魔法、支援魔法。


 特殊項目

 魔法の将来性大。

 エルフとのクォーター。

 推薦入学。

 **


「クォーター?」


 つい声を漏らしてしまった。これが心眼の能力なのか。

 急に目の前に現れた、俺以外に視認不可な相手の情報。

 こんなのプライバシーもあったものじゃないな。この能力のことは隠しておこう。


「ごめんね、この人と組むことになったから」


 気が付くと、俺は彼女に腕を掴まれていた。


「さ、行きましょ」


 彼女は腕を引っ張りずんずんと進んでいく。そして、大講堂をでて廊下につれていかれた。


「ねぇ、私を小隊に入れて欲しいの。あなた言ったわよね、クォーターって」

「あー、いやー、それは」

「いいの別に、何で知ってんのキモチワルイ、とかそういのじゃないから。私の村でのおつげで言われたの。私の混血を見破った人こそ、神眼の持ち主のアラン・ローテル。その人の小隊に入れってね。だからよろしく。神眼持ちさん」


 お告げ、怖! 名前すら知られてるんだけど。

 それに心眼ばれるの早すぎなんだが。


 俺の小隊に一人美少女が加わった。

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