第503話
魔力の源泉がある泉には、この魔境ゴブリン森林の主であるホワイトディアという白い鹿だったはずだ。
その姿が魔力の源泉である泉に姿がない。その代わりに居たのはゴブリンの群れだった。
「またゴブリンか。ヒスイ、プルン。好きに戦ってくれ。」
『任せて!』
『獲物がー、一杯だー!!』
ゴブリン程度の相手に魔法は必要ないからと、ヒスイとプルンは触手や剣を使用して泉の周りのゴブリンの群れを倒していく。
「それにしてもここまでゴブリンしか姿を見てないけど、これも何かしらの異変が起きているのか?」
「多分そうでしょうね。前回来た時の魔境ゴブリン森林の主だったホワイトディアの姿がありませんから。もしかしたら魔境の主がゴブリン種の何かに交代したのかも知れません。」
ハルトたちが魔力の源泉である泉を利用しても何もして来なかったホワイトディアの事を思い出している間に、ヒスイとプルンは泉の周りにいたゴブリンの群れを一掃していた。
ゴブリンから回収する事が出来る魔石だけを解体して取り出したハルトたちは、ゴブリンの死骸を一ヶ所にまとめると、骨も残らない火力の火魔法で燃やし尽くす。
そして、荒らされていた泉をナビィの指示を聞きながらハルトたちは様々な魔法で整えていると、二匹のモンスターが泉に近付いて来ているのを感じ取る。
「モンスターが近付いて来ているな。もしかしたらホワイトディアか?」
「どうでしょう。とりあえずゴブリンではないと思いますが警戒だけはしておきましょう、皆さん。」
何がこの泉に近付いて来ているのかと警戒していると、ガサゴソと茂みが揺れて現れたのは本来なら白い毛皮と角をしているはずが角はゴブリンの返り血だろうが、毛皮は攻撃されたのか深い傷口から出血しているホワイトディアの姿だった。
更にそんなホワイトディアの後ろから現れたのは、ホワイトディアよりも毛皮の色が白よりも銀に近い色をしているホワイトディアよりも小さな子供の鹿のモンスターが現れる。
ホワイトディアはハルトたちを一瞥するが何も行動は起こさずにジッと目を逸らさずに見つめている。
「何があったんだ?」
「分かりません。ですが、ゴブリンに襲われたのでしょう。それも子供が居ますから庇って戦ったのだと思います。子供に傷は一つもありませんから。」
ヨタヨタとした足取りでこちらに向かって来ているホワイトディアは子供を連れてハルトたちの前までやって来た。
そしてジッとハルトの目を見つめてくるホワイトディアにハルトが回復魔法を使おうかと思っていると、ホワイトディアは身体を地面に横たわせる。
そんなホワイトディアを心配してホワイトディアの子供やヒスイとプルンが横になっているホワイトディアに近付いた。
「ナビィ、ホワイトディアの回復をするのは問題があるか?」
「ありませんよ。それがハルトのしたい事なら構いません。ですが、ホワイトディアを治しても長くは生きられませんよ。」
「なんでだ?」
「寿命です。ハルトの健康魔法ならそれもどうにか出来ますが、流石にそれはホワイトディア自身が認めないと思います。」
その理由がなんでなのかは分からないが、とりあえず目の前のホワイトディアの毛皮癒すことを優先して回復魔法を発動した。
ホワイトディアの全身に出来た怪我は重傷軽傷問わず完全に癒して治した。
それでも傷一つないホワイトディアは横になっており、起き上がる様子は見せない。これがナビィの言っていた寿命の影響なのだろうか?
「ナビィ、健康魔法で寿命の問題を解消しちゃなんで駄目なんだ?」
「少しホワイトディアと念話を応用して会話したのですが、どうやらこのまま自身は死ぬことを納得している様です。ですから、ハルトの健康魔法で若返って寿命の問題を解決したくはないそうです。」
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