第501話
昔にラマーリャ山脈を探索していた冒険者パーティーがアイシクルドラゴンの卵や鱗などを回収し、カイントスの町に卵を持って帰って来たそうだ。
極秘裏に回収したそれらをその冒険者パーティーは冒険者ギルドに持って帰り、それを持ってSランク冒険者になろうとしていたが、自身の卵を奪われたアイシクルドラゴンが怒り狂って襲撃に来たという。
それが六十年前の出来事だそうで、原因を作った冒険者ギルド以外はその事を領主以外は知らない。
そんな話を部外者のハルトやナビィに話をしても良いのかと思ったが、カイントスの上位冒険者や冒険者ギルドに所属している職員は知っている公然の秘密らしい。
その為、ドラゴンの子供を連れて来たハルトに慌てて対処していたのが今回の事態の様だ。
「はぁ、事情は分かった。けど、ツララの親のアイシクルドラゴンはもう居ない。だから、カイントスにアイシクルドラゴンが攻めて来ることはないぞ。それは安心してくれ。」
「分かったぞい。それで、のう。アイシクルドラゴンの素材を納品してはくれないかのう?」
威圧スキルで怯えていたというのに、もうそんな現金なことをギルド長は言って来た。
「鱗の幾つかなら構わない。けど、それ以上は無理だ。」
「仕方ないのう。分かった、依頼として出すから納品を頼んだぞい。」
そして、ギルド長が依頼書の作成を行なう様に周りの受付嬢に指示を出していると、鑑定の魔道具を持った受付嬢と従魔証を持った受付嬢が戻ってきた。
鑑定の魔道具を持った受付嬢はギルド長と一緒にアイシクルドラゴンの牙の鑑定を行なっている間に、ハルトはツララの従魔として登録するための書類を記入していく。
そしてそれが終われば従魔の証をツララへと貼り付ける事になる。
「ツララ、動くなよ。」
「きゅうん!」
ぺたりとツララの鱗に従魔の証を貼り付けると、これでツララは正式にハルトの従魔になるのだった。
冒険者ギルドの用事のほぼ全てが終わったハルトだったが、冒険者ギルド側としてはハルトに他にも聞きたい事があるそうで、アイシクルドラゴンの素材の納品も含めて話し合いが行なわれた。
そうして冒険者ギルドでの話し合いが終わると、従魔も泊まることが可能な宿屋の場所を教えて貰うと、背中にツララをしがみ付かせたハルトはナビィを連れて冒険者ギルドを出る。
冒険者ギルドを出たハルトたちは冒険者ギルドに備え付けられた厩舎に向かい、待たせたヒスイたちを迎えに行く。
「みんな、お待たせ。用事は終わったから行くよ。」
『遅かった!』
『そうだよー!』
ピョンピョンとハルトの周りをヒスイとプルンは遅いと文句を付けながら跳ね回る。
そんな二匹を抱き抱えて謝りながら、ハルトはミルクの上に騎乗すると、ナビィに手を伸ばした。
「ありがとうございます。」
『出発するモー!』
ナビィの手を引いてミルクに騎乗すると、ハルトの後ろにナビィが乗ったのを確認したミルクが動き出した。
ハルトは逐一今回向かう従魔の泊まれる宿屋へと指示をミルクに出して向かわせる。
そしてたどり着いた宿屋はカイントスで最大の大きさの宿屋だった。一泊するのに銀貨十枚はする宿屋だったが、サービスや出された料理の数々は充分に満足するものだった。
宿屋で一泊した次の日、ハルトたちは午前中はカイントスの町の中を散策しながら様々なお店の確認を行ない、最後に冒険者ギルドへと向かった。
昨日納品したアイシクルドラゴンの素材の報酬を貰いに冒険者ギルドにたどり着いたハルトは、今回はハルトだけでも充分だからとナビィたちには厩舎で待ってもらう。
そうしてハルトだけで冒険者ギルドに入れば、昨日と同じ様に隣接している酒場で飲み会を行なっている冒険者もいたが、昨日とは違いハルトに野次を飛ばす者は誰も居なかった。
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