第500話
改めて受付嬢の女性にツララ用の従魔の証を用意して貰うように要求する。
「分かりました!すぐに用意して来ます!!」
バッ!と立ち上がった受付嬢が素早い身のこなしで受付裏へと駆け付けていく姿に、なんであんな俊敏な動きで従魔証を取りに向かったのか疑問に思うなか、受付カウンターの上に乗っかるツララを他の受付嬢たちが遠巻きに眺めており、その内の一人が話し掛けて来た。
「その子ってやっぱりドラゴンなんですか?」
「そうだけど?」
何を思ったのか分からないが、聞いた受付嬢や周りの受付嬢に冒険者ギルド職員、それに上位ランクの冒険者たちは顔を青ざめさせる。
どうやら何か問題があるみたいだ。門兵には止められたりする事がなかったので、冒険者ギルドに関係する者たちのみが知っている何かしらの情報なのかも知れない。
「なにか問題でもあるのか?」
「問題って!問題ありまくりですよ!!すぐにギルド長に知らせないと!!!誰か!ギルド長に伝えて来て!!!」
青ざめた表情の受付嬢が叫ぶ。
「もう来ておるぞ。それでそれが例のドラゴンの子供か?」
杖を付いた髭を生やしたお爺さんが受付カウンターの上のツララを眺める。
「アイシクルドラゴンの子供じゃな。それも生まれたてではないかの?」
「そうですね。生まれて二ヶ月も経ってないです。」
「そうか……それで親のアイシクルドラゴンが取り返しに来ないと思っているのかの?」
険しい表情でギルド長のお爺さんが睨み付けてくる。が、既にアイシクルドラゴンはハルトたちが倒したので問題はない。
ちなみに上位のドラゴン系モンスターは卵を雄でも雌でも単体で産むことが可能な生態をしている。
「それは無いですよ。」
「何故じゃ!!」
「きゅ!?」
杖を床に音を鳴らしてギルド長は威圧感を放ちながらハルトに言う。
そのあまりの迫力にツララは怯えて受付カウンターから飛び立ち、ハルトの背中に避難した。
「はぁ、怯えてるでしょ?止めてくださいよ。」
「ッ!?」
態々威圧しながら怒鳴るギルド長に苛ついたハルトは、ツララを怯えさせた罰だと言うようにギルド長が発した威圧を上回る空間が軋み上げるかの様な威圧を威圧スキルも使用して放つ。
そのあまりの威圧感にギルド長だけでなく、この場のほとんどの人たちは腰を抜かして怯え始める。
「ハルト、やり過ぎですよ。この者たちはレベル百以下の弱い者たちなのですから、その威圧では気絶する者が出てしまいます。」
「ん?そうか、分かった。これでも加減したつもりだったんだけどな。」
二百レベル以上も差があるとなると普段使い慣れていない威圧スキルをコントロール出来ていると自分では思ってもそうじゃなかった様だ。
ナビィに言われて使用していた威圧スキルの使用を止めると、あからさまに目の前のギルド長はホッとしていた。
「親のアイシクルドラゴンは来ませんよ。俺が倒したので。」
「ア、アイシクルドラゴンを倒した?」
「ええ、はい。これが証明です。」
ハルトはアイテムボックスからアイシクルドラゴンの牙を一つ取り出して見せた。
人の身の丈よりも大きなアイシクルドラゴンの牙が取り出されると、この場に息を呑む音が聞こえてくる。
「か、鑑定!鑑定の魔道具を持って来るのじゃ!!早く!!!」
「は、はい!持ってきます!!」
受付嬢の一人がギルド長の言葉に反応してバタバタと大きな音を立てて走り去る。
「そ、それは本物のアイシクルドラゴンの牙なのか?」
「それは鑑定してみれば分かるでしょ?それで何が問題なんですか?」
「昔の話じゃ。ある冒険者パーティーがラマーリャ山脈を探索して、魔境の奥にあったドラゴンの卵を取って来た事があったのじゃ……。」
それから聞かされたギルド長の話はこんな話だった。
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