第499話

 カイントスの門まで近付くと、辺境の町で更に魔境ラマーリャ山脈へと向いている門だからか、この門を利用するのは冒険者くらいな為、並ぶことなく門を抜けられるが、ハルトは門兵に止められていた。


 「Aランク冒険者の方ですか。それで従魔ではないのは、そのドラゴンの子供だけなんですね。」


 「はい。」


 モンスターを連れながら向かうハルトの姿に警戒していた様子の門兵は、ハルトがギルドカードを見せれば安堵していた。


 「それにしても子供とはいえ、ドラゴンなんて初めて見ましたよ!」


 「きゅ!?」


 じっくりとツララを見ている門兵の姿に驚いたのか、ツララはハルトの背中に張り付いて隠れた。


 「あの、もう良いですか?」


 その姿を見てがっかりした表情をする門兵にハルトは早くカイントスに入りたいと急かす様に言う。


 「構いません、怖がらせてしまったすみませんでした。冒険者ギルドはこの通りを真っ直ぐ歩けばあります。」


 「そうですか、ありがとうございます。みんな、行くぞ。」


 そうしてようやくハルトたちはカイントスの町に入る事が出来た。町中を移動していると、この寒い季節なのにも関わらず外を出歩いている町の人たちは従魔であるヒスイたちや可愛い容姿をしているナビィに目を惹かれている様だった。


 そんな注目を受けているなか、ハルトたちは進んでいると、門兵に教えられた通り冒険者ギルドを発見した。


 「お前たちはここで待っていてくれよ。」


 『うん!』


 『お留守番するー!』


 『分かったわぁ。』


 『気を付けてくださいモー。』


 冒険者ギルドに備え付けられている従魔や馬などを置いておける場所で、ヒスイたちを待機させると、ハルトはナビィとツララを連れて冒険者ギルドへと向かった。


 「このギルドも上位ランクは二階に受付がある様ですよ。」


 Bランク冒険者、Aランク冒険者の受付を行なう場所が二階にあると、ナビィに言われて階段の上を見ると、そこには「Bランク、Aランクはこちらへ」という案内板があった。


 「気にせず行きましょう。」


 「そうだな。」


 こちらに向かう視線は冒険者ギルド内の冒険者がほとんどだが、ツララは背中に張り付いている為、十中八九ナビィの事を見ているのだろう。


 冒険者ギルドに隣接している酒場からハルトやナビィに向かって野次が飛んで来るが、そんな事は無視してハルトはナビィとツララと一緒に階段を上がって行く。


 「あんなに酔っ払って何かあった時に動けると思うか?」


 「まず動けないでしょうね。それにハルトの強さも分からない様でしたし。」


 「まあ、そうだよな。」


 ハルトたちご階段を上がる姿を見て、「そっちは上位ランクの冒険者専用だぞ」などとと野次が飛んでいたくらいだ。


 それに野次を飛ばしていた冒険者の多くがそれなりの年齢層だった。それを思えば何処かで強くなるのを妥協した冒険者たちなのだろう。


 そうして二階に上がったハルトたちはAランクの誰も並んでいなく暇そうにしている受付嬢のいる受付へと向かった。


 「本日はどの様なご用件でしょうか!」


 「この子の従魔証を作って欲しいんだ。」


 背中に張り付いているツララをナビィが剥がして受付カウンターへと乗せる。


 「ド、ドラゴン!?あぅ!?!」


 「きゅ?」


 すると、目の前に置かれたアイシクルドラゴンの赤ちゃんであるツララを見て、驚いた受付嬢は座っていた椅子を倒しながら、椅子ごと倒れてしまう。


 「あー、大丈夫ですか?」


 他の受付の受付嬢たちも椅子ごと転がった受付嬢を心配して集まり始める。


 「い、てて……はい!大丈夫です!皆さんも心配掛けました!!」


 頭を打ったのか、転がった受付嬢は頭を摩っていたが、受付嬢たちが集まり心配している様子からすぐに立ち上がって自身が無事な事をアピールし始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る