第498話
魔境ラマーリャ山脈を抜ける為の最後の雪山で一泊したハルトたちは、今現在雪山を降りていた。
「ミルク、そっちに行ったぞ。」
『逃がさないモー!!』
雪の下の地面から土で作られた触手が逃げ出した最後の大雪猿を捕縛すると、そのまま触手は大雪猿の身体を締め上げる。
「ギィガッ、ギャアァアア!!!!!!」
距離が離れているここからでもバキボキバキと骨が折られ砕かれる音と断末魔の悲鳴が聞こえるなか、ハルトはツララを背負いながらミルクの戦いぶりを観戦していた。
魔力の源泉から距離もあって遭遇するモンスターの強さもそこまで強くはない。
だが、それでもまだ赤ちゃんのツララに取っては強敵だろうし、ハルトたちの中で一番弱いのは一目で分かる。
そのせいでツララが狙われる事もあるが、今のところ一度もツララに接近させる事はない為、今後もよっぽどの事がない限りは大丈夫だろうと思う。
そうして交代交代で遭遇するモンスターを倒しながら進み、三時間ほど掛けて標高の高い最後の雪山をハルトたちは下山した。
ここからハルトたちは雪の積もった森の中を進んで行く。
「コイツは初めてじゃないか?」
「そうですよ。名前は雪投げ栗鼠ですね。雪玉を投擲してくるモンスターです。雪玉の中に氷や石が入っている為、油断している冒険者はこの雪投げ栗鼠に殺される事もあるんですよ。」
「へぇー、ふん!!」
こちらへと飛んできた雪玉を世界樹の棒で弾くと、確かに雪玉の中に硬い何かが入っている感触がした。
「プルンの番だぞ。」
『うん!行って来るねー!!』
雪の積もる木々を枝を伝って器用に逃げ回りながら雪玉を投擲してくる雪投げ栗鼠に対して、プルンは木々の幹を使って跳躍しながら雪投げ栗鼠に追い付くと、アイテムボックスから取り出した一本の剣で突き刺した。
「ギュウッ!?」と言う甲高い断末魔の悲鳴を最後に、雪投げ栗鼠はぐったりと動かなくなると、プルンは雪投げ栗鼠を剣に突き刺したままで戻って来る。
『倒してーきたよー!』
「良くやったぞ、プルン。」
『えへへ!』
「きゅー!」
雪投げ栗鼠をアイテムボックスに収納すると、ハルトはプルンを撫でて褒める。
それを見て、背中のツララは自分もとハルトにすりすりして来ると、ハルトはツララの頭を優しく撫でた。
「さて、行くか。」
先頭を次に戦闘を行なうコッコロが歩きながら、ハルトたちは雪の積もった森の中を歩いて移動する。
そうして雪の森を二日間掛けて抜けると、次は雪が腰辺りまで積もっている雪原をハルトたちは進んで行く。
この雪原では積もった雪の中にモンスターが隠れ潜んでいる様で、ハルトたちの感知能力を抜けて襲って来ると言う事はなく、すぐに察知から殲滅を繰り返して行くが、このかなり雪が積もっている雪原の移動に時間が掛かる。
そうして雪原を移動して三日目でようやく広大な魔境のラマーリャ山脈をハルトたちは抜けるのだった。
ラマーリャ山脈を抜けてからは降り積もっている雪の量もかなり軽減しており、移動も凄く楽になっていた。
遭遇するモンスターもナビィの鑑定でレベル二十未満の雑魚しか居らず、サクサクと進んで行くと、魔境ラマーリャ山脈ブルフリング王国側の一番近い町カイトンスが見えて来る。
カイトンスの町が見えて来ると、チラホラと冒険者たちの姿も現れ始めた。
「ナビィ、こっち側もスタンピードは起こっていたのか?」
クロームの町で起こったスタンピードのことを考えると、こちら側でも起こっていても不思議じゃない。
「いえ、起こっていませんよ。原因は不明ですが、予想ではアイシクルドラゴンをクローム側のモンスターが怒らせた結果、あのスタンピードが起こった可能性があります。卵を産んで気が立っていたと思いますので。」
「なるほどね。」
世界樹の迷宮を攻略した事でモンスターが増え、その増えたモンスターがラマーリャ山脈の主だったアイシクルドラゴンを怒らしたからか、ナビィの予測を聞きながら歩いていると、かなり注目されながらハルトたちはカイトンスの門まで向かった。
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