第497話
五十センチとドラゴン系モンスターとしてはまだ小さい赤ちゃんのツララだが、この一週間の戦闘訓練でドラゴンとしての潜在能力を見せつけていた。
「おお!凄いぞ、ツララ。」
「きゅー!」
口を開いて冷気のブレスをツララは吐き出すと、的にしていた岩の表面が凍り付き始める。
「ラマーリャ山脈のモンスターは氷属性に耐性がありますから効きませんが、氷属性に耐性のないモンスターならそれなりのダメージを与えられそうですね。」
「生まれてまだそれほど経ってないのにこれなら、大きくなったらどれくらい凄いんだろうな。」
「きゅー!」
パタパタと飛んで来たツララを受け止めて撫でていると、それを見てヒスイやプルンも撫でて欲しいと寄って来る。
寄って来たヒスイやプルンも撫でると、仲間外れは駄目だと、ハルトは近くで見ていたコッコロとミルクを呼び出して二匹も撫でて上げる。
そうして早朝の訓練を終わらせたハルトたちは、朝食後すぐにラマーリャ山脈を抜ける為に山越えを行なう。
現れるモンスターを順番に倒して進んで行き、雪山を超えて、樹氷の森を超えて、また雪山を超えて、雪原を超えて、樹氷の森を超えると、ようやく最後の雪山を登り山頂にたどり着いた。
ここまでたどり着くのに時間が掛かってしまったが、四月に入る前にはラマーリャ山脈を抜ける事が出来そうだ。
「この寒い魔境ともあと少しだな。」
山頂の見晴らしの良い場所でここまで進んでいたラマーリャ山脈を眺めながらハルトは呟くと、ここまで広大な魔境は初めてだった為、ラマーリャ山脈であったこれまでの事を思い出してしまう。
「きゅ?」
「ん?ナビィ、ツララはヒスイたちと遊んでなかったか?」
ツララを抱き抱えたナビィがいつの間にか戻って来ていた。
「ヒスイとプルンがヒートアップしてましたから避難させました。あちらを見てください。」
ナビィに言われて指を刺している方向を見ると、そこには雪玉を豪速球で投擲しているヒスイとプルンの姿があった。
確かにあれほどの速度で投擲される雪玉にツララが当たれば重傷を負い、最悪だと即死してしまいそうな威力を出している。
「あっ、コッコロに当たった。」
激しい雪合戦をしていたヒスイとプルンが投げ合っていた雪玉の一つがコッコロの頭頂部に直撃する。
『ふっふふふ!!!よくもやってくれたわねぇ!!!!!』
スキル魔力腕で雪玉を凄い速さで作ると、コッコロは翼を器用に使って雪玉を自身に命中させたヒスイに向かって投擲した。
ヒスイやプルンよりも投擲スキルのレベルが高いコッコロの投擲は、スキルレベルの補正もあって威力・速さ共に凄い高く速い。
そんな雪玉がヒスイに向かって投擲されるが、ヒスイは回避行動を取って躱そうとする。
だが、コッコロの投擲した雪玉は回避したヒスイを追う様に軌道を変えてヒスイに直撃した。
雪玉が直撃して吹き飛ばされたヒスイが雪の上をゴロゴロと転がっていく姿を見てコッコロは溜飲を下げたが、コッコロも自分たちの遊びに参加するのだと思ったプルンがコッコロに雪玉を投擲した事で再びコッコロは雪玉を投擲する事になる。
復帰したヒスイもコッコロとプルンの雪玉の投げ合いに参加して、三匹が山頂付近を駆け回りながら雪玉を投げ合っていた。
「ミルクは参加しないのか?」
『僕はいいモー。姉さんたちの投げ合いに参加すると雪まみれにかれてしまうモー。』
「そうか。なら、結界を張るからもう少しこっちに来い。」
距離のあるミルクを呼ぶと、ハルトは自身を中心にして結界を張った。これでヒスイたちが外した雪玉がこちらに来ても問題ないだろう。
ヒスイたちが雪合戦をしている間、ハルトたちはヒスイたち三匹の投げ合いを観戦しながら身体を休めていくのだった。
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