第495話

 ハルトはナビィの言う通り、このアイシクルドラゴンの卵が孵ったら、従魔にする為に契約する事を決める。


 「それで卵が孵るまでどうすればいいんだ?」


 「ドラゴン系モンスターの卵は孵るまで、周囲の環境の魔力を吸収して育ちます。ですから、このまま放置していても問題はありませんが、一応孵るまでの間守る為に私が付いて居ようと思います。」


 「そうか。じゃあ俺たちは確認と採取作業に戻るぞ。みんな、さっきの場所から確認して行くぞ!」


 ハルトたちはその場で解散すると、先ほどまで探索していた場所に戻って採取したり、氷結晶で覆われた壁の向こうに何があるのかを確かめたりしながら、アイシクルドラゴンの寝床を探索していく。


 それからハルトたちがアイシクルドラゴンの寝床全体を回って探索した結果、これまでのラマーリャ山脈で採取したことのない貴重な素材に、ドラゴン系モンスターが棲家にしていた事で生まれた素材を回収する事が出来た。


 どの素材も市場に出せばあり得ないくらいの高額でやり取りされる物ばかりだが、大抵はゴーレムを製造する為に使われるだろう。


 それからアイシクルドラゴンの卵が孵るまでの一週間の間、ハルトたちは卵の親のアイシクルドラゴンの解体や、アイシクルドラゴンの寝床や道中の巨大な通路にあった採掘ポイントで採掘したりしながら過ごしていた。


 「全員来てください!卵が孵りますよ!!」


 ナビィの声が聞こえると、ハルトたちはアイシクルドラゴンの卵がある場所に向かって集まる。


 「ヒビが入ってるな。」


 『ここから産まれるの?』


 『凄い凄ーい!』


 ひび割れたアイシクルドラゴンの卵を見て、ヒスイとプルンは興奮しているのかピョンピョンと卵の周りを飛び跳ねる。


 『これほど大きな卵爆弾だったなら凄い爆発が起こせそうですねぇ。』


 『駄目ですモー!コッコロ姉さん!』


 ひび割れていくところを見て、これが自身の卵爆弾だったのならと思ってうっとりした表情しているコッコロに、ミルクがツッコミを入れるなか、アイシクルドラゴンの卵のヒビはどんどん大きくなっていく。


 「おっ!割れた!!」


 アイシクルドラゴンの卵の殻の一部が割れて卵の中に落下していくと、ハルトはその空いた卵の殻の部分に顔を向けて中を見ていると、そこから青白い小さなドラゴンの頭がひょっこりと顔を出して来た。


 「きゅー!」


 「可愛いな。」


 大人のアイシクルドラゴンはあれほど勇ましい咆哮だったのに、赤ちゃんのアイシクルドラゴンは可愛い鳴き声を上げていた。


 鳴き声を上げながらアイシクルドラゴンの赤ちゃんは、卵の殻を次々と壊して行き、卵の中から五十センチくらいの小さなドラゴンが外に出て来た。


 「きゅー!きゅー!」


 とてとて、そんな音が立っているかの様な足取りでハルトの元までアイシクルドラゴンの赤ちゃんはやって来ると、ハルトは抱き上げる。


 「冷んやりしてるな。ナビィ、これからどうすれば良いんだ?」


 「ごはんが欲しいのでしょうね。氷属性魔力を指先に集めてください。そうすれば食べますよ。ドラゴンの赤ちゃんは魔力が主食ですからね。」


 「分かった。」


 ナビィに教えられた通りに指先に魔力を変換して生成した氷属性魔力を集めると、ハルトはアイシクルドラゴンの赤ちゃんの口元に持っていく。


 すると、アイシクルドラゴンの赤ちゃんはハルトの指先を口に咥えると、チュパチュパと氷属性魔力の舐めて食べ始める。


 そんなアイシクルドラゴンの赤ちゃんの姿を一目見ようと、ヒスイたちが寄って来る為、ハルトは全員に見える様にしながらアイシクルドラゴンの赤ちゃんを抱っこするのだった。


 それからアイシクルドラゴンの赤ちゃんの可愛い姿をみんなで見ていると、眠くなったのか、アイシクルドラゴンの赤ちゃんはスゥスゥと眠り始める。

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